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原発事故12年目の福島県浜通りを学生と歩く~Z世代と探るジャーナリズム(4)
福島第一原発の地元、大熊町で
青地に白い字で「GES学習館」、その上にやや小さく黄色っぽい字で「大熊校」と浮き上がるように記されたその看板は、出入りする人がいなくなって12年近くがたつというのに、鉄骨造り2階建ての2階に通じる階段の入り口に掲げられている。その看板の下には、草たちがコンクリートとアスファルトの境のわずかな隙間から立ち上がり、まるで人間の侵入を阻もうとする意思をもっているかのよう
内部告発者と記者の関係が社会を良く変える ~Z世代と探るジャーナリズム(3)
組織内部の個人がその組織の不正を組織外部のジャーナリストや公的機関に明らかにして、その是正へとつながる道を切り開くのは、称賛されるべき倫理的な行動だ。しかし多くの場合、それは大変な困難と犠牲を伴う。
報道機関の記者や捜査機関の告発受理係にとっては、そうした内部の声を受け付けるのは、いわば日常業務だ。しかし、声を上げる当人にとっては、組織内部で往々にして人格攻撃を受け、孤立させられ、仕事を干さ
「ローマの休日」に見る記者と取材対象、密着の倫理 ~Z世代と探るジャーナリズム (2)
王女と新聞記者の出会いと恋愛、別れをコミカルに描いたアメリカ映画「ローマの休日」は、1953年に公開されてから70年にもなるモノクロ作品だというのに、今もなお不朽の名作としてその人気を保っている。
若きオードリー・ヘプバーンの演ずるアン王女は、親善旅行で訪れたローマで、儀礼上の責任を一方的に課せられるばかりの不自由な身の上を嫌になって、夜間ひそかに宿を抜け出し、まちかどで偶然出会ったアメリカ人
安倍元首相への献花の列に何を感じた? ~Z世代と探るジャーナリズム (1)
花を手にした人たちの行列は、新宿通りに沿って下り方向と上り方向の二重にできている。
JR四ツ谷駅を麴町口から出てすぐの歩道にも、そして、駅前交差点を渡ってその反対側の上智大学北門前の歩道にも、その無言の列ははるか遠くへと続いている。
2022年9月27日の昼下がり、上智大学では秋学期の初日だったその日、久しぶりに登校した学生たち、あるいは、私を含む教員たちは、その行列を図らずも目にする。大