奥山 俊宏

ジャーナリスト(元朝日新聞記者)。著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメ…

奥山 俊宏

ジャーナリスト(元朝日新聞記者)。著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』で司馬遼太郎賞、日本記者クラブ賞を受賞。近刊に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』。上智大学文学部新聞学科で教授。

最近の記事

全国各地の自衛隊部隊を被災地にいかに迅速投入するか

 陸上自衛隊第31普通科連隊指揮所。作戦台の前に東京都中心部の地図が2枚並べられ、それぞれに被害状況、部隊の展開状況が記されている。  杉並区18人、中野区17人、新宿区25人、渋谷区20人、世田谷区23人、目黒区23人、大田区31人、品川区23人。  演習の上での設定ではあるが、阪神大震災級の地震が東京・渋谷の直下で発生してから7時間がたとうとする午後4時10分、これが、この時点の、8つの区での自衛隊の全勢力だ。 連隊指揮所で  あまりにもの少なさに「愕然とするでし

    • 阪神大震災の自衛隊の教訓「情報判明を待つことなく『拙速』対処を」

       阪神大震災が1995年1月17日に発生してから29年が過ぎて、この2024年1月17日、日本社会は「震災発生30年目」に入る。6434人の命を奪った阪神大震災で、防衛庁・自衛隊は創隊以来最大の規模で部隊を運用し、人命救助や被災者支援にその力を発揮した。一方で、その初動については「出遅れた」との批判を受けた。この派遣の部隊指揮にあたった陸上自衛隊中部方面総監部は「状況が不明な場合は、状況の判明をいたずらに待つことなく『拙速』で対処することが必要」との教訓を導きだしている。大災

      • 報道機関に求められる「公平・公正」は中立ではない ~Z世代と探るジャーナリズム(5)

         安倍晋三政権の官邸で首相補佐官を務める礒崎陽輔さんという参院議員がおかしなことを言っているなと私が初めて気づいたのは10年近く前、2013年11月8日のことだ。  実際には放送法に「中立義務」の規定など存在しない。にもかかわらず、その日の朝、礒崎さんは突如として「放送の中立性を侵せば、放送法違反です」と強弁するツイートを始めたのだ。  安倍政権から特定秘密保護法案が国会に提出され、衆院本会議で審議が始まったのがその前日だった。それに関するテレビ各局の報道ぶりに礒崎さんは

        • 原発事故12年目の福島県浜通りを学生と歩く~Z世代と探るジャーナリズム(4)

          福島第一原発の地元、大熊町で  青地に白い字で「GES学習館」、その上にやや小さく黄色っぽい字で「大熊校」と浮き上がるように記されたその看板は、出入りする人がいなくなって12年近くがたつというのに、鉄骨造り2階建ての2階に通じる階段の入り口に掲げられている。その看板の下には、草たちがコンクリートとアスファルトの境のわずかな隙間から立ち上がり、まるで人間の侵入を阻もうとする意思をもっているかのように、大人の胸ほどの高さまで伸びている。階段の壁沿いに何本ものつるが緑色の葉をとこ

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          内部告発者と記者の関係が社会を良く変える ~Z世代と探るジャーナリズム(3)

           組織内部の個人がその組織の不正を組織外部のジャーナリストや公的機関に明らかにして、その是正へとつながる道を切り開くのは、称賛されるべき倫理的な行動だ。しかし多くの場合、それは大変な困難と犠牲を伴う。  報道機関の記者や捜査機関の告発受理係にとっては、そうした内部の声を受け付けるのは、いわば日常業務だ。しかし、声を上げる当人にとっては、組織内部で往々にして人格攻撃を受け、孤立させられ、仕事を干され、左遷・免職・提訴の脅しで威嚇され、精神的に追い詰められ、金銭的にも音を上げざ

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          内部告発者と記者の関係が社会を良く変える ~Z世代と探…

          「ローマの休日」に見る記者と取材対象、密着の倫理 ~Z世代と探るジャーナリズム (2)

           王女と新聞記者の出会いと恋愛、別れをコミカルに描いたアメリカ映画「ローマの休日」は、1953年に公開されてから70年にもなるモノクロ作品だというのに、今もなお不朽の名作としてその人気を保っている。  若きオードリー・ヘプバーンの演ずるアン王女は、親善旅行で訪れたローマで、儀礼上の責任を一方的に課せられるばかりの不自由な身の上を嫌になって、夜間ひそかに宿を抜け出し、まちかどで偶然出会ったアメリカ人男性、ジョー・ブラッドレーのアパートに転がり込む。  翌日、王女は、まだあどけな

          「ローマの休日」に見る記者と取材対象、密着の倫理 ~Z世代と探るジャーナリズム (2)

          安倍元首相への献花の列に何を感じた? ~Z世代と探るジャーナリズム (1)

           花を手にした人たちの行列は、新宿通りに沿って下り方向と上り方向の二重にできている。  JR四ツ谷駅を麴町口から出てすぐの歩道にも、そして、駅前交差点を渡ってその反対側の上智大学北門前の歩道にも、その無言の列ははるか遠くへと続いている。  2022年9月27日の昼下がり、上智大学では秋学期の初日だったその日、久しぶりに登校した学生たち、あるいは、私を含む教員たちは、その行列を図らずも目にする。大学から2キロ離れた東京・北の丸公園の日本武道館で午後2時から安倍晋三元首相の国葬

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