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詩・散文

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#日常の言葉で考える

詩・散文「二匹のどじょう」

詩・散文「二匹のどじょう」

二匹のどじょう

二匹のどじょうが二匹のどじょうが 
右にくねくね左にくねくね 
とびあがってぴょん
そして再び水の中 

二羽のちようちょが弐羽のちょうちょが
空にのぼらずひらひらふわふわ
地にもおりずにぴたり 
菜の花にとまって菜の花になった

二人の子どもは二人の子どもは  
くるくるくるくる追いかけっこ 
どっちが追いかけてるのかわからなくなってじゃぶじゃぶ 
河を渡って二度と戻って来なか

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詩・散文 「幽霊はいるの?(そしてその模範的な回答)」

詩・散文 「幽霊はいるの?(そしてその模範的な回答)」

幽霊はいるの?(そしてその模範的な回答)

♠♥幽霊って本当にいるの?

♥今日テレビでマジックショーをやってたよ。お金が、手を開く度に増えていくのは不思議ね。
♠テレビが映るのも不思議だね。自動車だって。一体どういう仕組みで走ってるんだろう?
♥ほら、飛行機!飛行機雲を出してるよ!飛行機が空を飛ぶのも不思議。飛行機雲も。一体どうしてできるの?

♠例えば・・・あの煙突から立ち昇る煙は雲になる事が

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雑考・日記・メモ「いただきますの嘘」

雑考・日記・メモ「いただきますの嘘」

いただきますの嘘

私に食われた者たちは決して私を赦してくれないだろう。

それは私が何れ死に、数多生き物の糧となる、そういう命の循環を説いてさえ赦してはくれないだろう、だとすれば、私が生きるために命を食らう事への感謝の念とか、それを言葉にして食事の毎いに命を「いただきます」等言う事は、自己欺瞞に過ぎない。本当に命を食らう事に咎を感じるのならば食わなければいいのだから、そんな文句を百万回唱え海より

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詩・散文「林檎を描く」

詩・散文「林檎を描く」

リンゴを描く

絵筆をとって何十年
林檎がそこに在るような林檎の絵を描きたかった
いや
林檎そのものが在ると言う事を描きたかった
今でもそうだ
しかし未だ描けてはいない

いくらかは林檎がそこに在るかのような絵は描けるようになったが
林檎そのものが在るというにはほど遠い
いったい林檎が在るとはどういう事か
そして何故私はその「問い」に「描く」事で答えようとするのだろうか

もう何十年も絵を描いてい

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詩・散文「Natural born killers」

詩・散文「Natural born killers」

Natural born killers

誰かとつながり生きている支え合って生きている
喜びを分かち合ったり悲しみを拭いあったりと
それはとても素敵なことなのだ
と同時に例えばそれは
一匹の蝶の羽ばたきがその地球の裏側で台風を引き起こす因子の一つでもあるように
例えば私の些細な振る舞いは
遠く何処かで知らない誰かを踏みにじり傷つけ殺しているに違いない
環境と共に在り関係の網の目の中に生きるとはそ

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雑文・日記・メモ「誰にも知られない花」

雑文・日記・メモ「誰にも知られない花」

誰にも知られない花

誰にも知られずに芽吹き花咲き萎れ枯れていく花は、果たして存在したのだろうか。
私はしなかったとおもいます。
もしこれが正しいならば、在るがままの自然と言われるものは嘘になる。
現象する自然は、必ず人為に依ってその様態が定まり顕在化されるのであろうから(→シュレーディンガーの猫)。

だから私は「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう(レヴィ=ストロース)」とは、私

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哲学・日記・メモ「故郷のこと」

哲学・日記・メモ「故郷のこと」

故郷のこと

上京して夢果たせず、何十年を経て故郷に帰ってきたが、そこは故郷ではなかった。

確かに地理的にはそれはそこにあったし、文化風習は暮らしの中に残っていたが、そんなものは私の故郷ではなかった。

その「土地・地域」に私の故郷はなく(だからと言って普遍的な「大地」を故郷と呼びたいわけでもない)、私にとってのそれは、

あの日遊んだ犬であり、あの日殺したコガネムシであり、夏の空に湧く入道雲で

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詩・散文「臍考」

詩・散文「臍考」

臍考

臍と言うのは不思議なものだ。何の役に立つでもない腹の窪み。無くとも良いが無ければきっと寂しいに違いない。何故だろうか、この、臍を失う寂しさとは何か。

私は臍ではないが臍は私の一部である。しかしじっと臍を見つめていると、ひょっとしたら臍は臍として、私ではない臍として、私の腹の真ん中で何か想う事があるような気がしてくる。
しかしやっぱり臍は私の一部なのだから、単に他人でもないのだろう。すると

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詩・散文 「鏡面の真っ平らな世界から始めよう。それは真っ平らな世界の破綻を問う事であり、真っ平らな世界の信望とは異なる」

詩・散文 「鏡面の真っ平らな世界から始めよう。それは真っ平らな世界の破綻を問う事であり、真っ平らな世界の信望とは異なる」

「鏡面の真っ平らな世界から始めよう。それは真っ平らな世界の破綻を問う事であり、真っ平らな世界の信望とは異なる」

真っ平な世界は、ただ一つの面が何処までも広がっている無言の世界なのか
真っ平らな世界は、無数の山頂が等しい高さに犇めいている多弁な世界なのか。

どちらにせよ、真っ平の世界に立った時、
私は私だけが起立している事を知るのであるが、だからと言って自分を真っ平らにしようとしてはならない。

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詩・散文「岩になり砂になり水になり空になり」

詩・散文「岩になり砂になり水になり空になり」

「岩になり砂になり水になり空になり」

真っ平らでダダ広い大地に 亀裂が入りひび割れると そこには無数のゴツゴツした岩岩がひしめいていた この岩を二つの拳が叩いて砕くと 岩岩は礫になり砂になって拡がって まるでそこは海のような砂原になった やがて風が吹いて砂の粒子を巻き上げると それは空一面に舞い散って 空のような宇宙になった そうしてそこには透明な粒子が遍いていた それはもう粒子と呼べるものでも

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