『喫茶バンデシネ 』 ―第12話―
一子はテーブルに漫画用の原稿用紙を置いて、Bluetoothイヤフォンを両耳に差した。キャンパスノートに作ったネームを傍に置きながら、一子はシャープペンシルで、枠線のアタリをつけ、下描きをしていった。イヤフォンから、御代川のように音漏れをさせる事もなく、一子は淡々と作業を進めた。
「……そうだよね。うん。ごめんね。大丈夫大丈。急にごめんね」
合間に一子は喫煙所で電話をした。喫煙所には疲労感を漂わせ、ベンチ、もしくは地べたにまで座り込んで煙草を吸う者がいた。しかし、次子は煙