『喫茶バンデシネ 』 ―第13話―
「……どう? 出来そう?」
「やってみる」
一子は窓辺バンデシネのソファ席に座り、隣のさつきにサインペンを渡した。窓からのどかな日曜の日差しが差し込んでいた。さつきは渡されたサインペンの太い方を使って、原稿に小さくバツのうたれた部分を黒く塗っていった。
ベタ塗りと言われる、漫画原稿の黒い部分を塗る作業を一子はさつきに教えていた。
「少しぐらいムラになっても気にしないで。そうそう……」
一子はさつきに優しく言った。
「……でも本当に大丈夫? 私、美術だけは三だし。もうこれ