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【目印を見つけるノート】1545. 時祷書とタロットカード

こちらの雨は上がりました。

今日は午前中にちょこっと外出して、午後は本が届いたので静かに過ごしています。
もっと歩きたいなあ。

さて、
きのうの美術館話がまだ続きます。
方向はちょっと変わります。
よろしければきのうの分もどうぞ。

イタリア・フェラーラのデステ家の話をちょこっと書きましたが、デステというのは(d'Este)と表記されます。「エステの」という意味になるのでしょうか。イタリア語は分からないので、それ以上のご質問はどうかご容赦ください🙍

突然ですが、
デステ家も含めて、
15世紀にイタリアの有名な三つの家が現在のタロットカードのようなものを、画家に描かせています。
・ミラノのヴィスコンティ=スフォルツァ家のカード
・フィレンツェのメディチ家のカード
・フェラーラのデステ家のカード

これらはそれぞれ欠落もあるものの、現在まで残っています。それぞれ、ヴィスコンティ版、ミンキアーテ版(イタリアでは別の名称)、エステンシーと呼ばれて、復刻なり元にしたタロットカードが販売されています。
『ゴールデンタロット・オブ・ルネサンス』というカードはデステ家のカードを元にしたものです。
こちらの解説が詳しいかな。

ヴィスコンティ版やミンキアーテも出ています。

これら現存する最古のカードは当時、タロットとは呼ばれていませんでした。トランプのようなゲーム用でもなかった。『トリオンフィ』というお守り的なカードでした。
トリオンフィの構成は現在のタロットとあまり大きくは変わりませんが、ミンキアーテは枚数がだいぶ多くなっています。メディチ家らしいなあとも思います。ロレンツォさん。

デステ家のカードを元にしたタロットカード(私物)

さて、エステンシーカードは昨日も登場いただいたボルソ・デステが作らせたといわれるのですが、トリオンフィって写本の絵に似ていませんか。
例えば、展示にあったフランスの時祷書の写本。

『時祷書零葉』(フランス、部分)、こちらは隠者のモチーフに似ています
『時祷書零葉』(フランス、部分)、こちらは審判の構図に少し似ています

もちろん、ディテイルは異なるのですが、どのトリオンフィもベースとなる意匠は通じるように思うのです。例えばデステ家で、トリオンフィも写本も同じ家にあるさまを思うともしかしたら、写本から派生したのがカードかな🤔という想像もできるわけです。

楽しいです😆

ある時代にどんな人がいて生きていたか、
それによって何が生まれたか。
それを考えるのが楽しいです。
目に見える美しさや造形はまず素晴らしいですが、
かかわった人の姿をその中に感じるのもアートの楽しみのひとつだと思います。

滅多にないのですが、
企画展だけでなく、常設展なども一通りダッシュで見てきました。が、一通りダッシュで見られるような、ヤワなボリュームではないことがよく分かりました。あれは、ゆっくり見たら1日余裕で使えます(断言)。

その膨大な展示品の中からまた2つ。

写真を撮っていませんでしたが、アンドレア・デル・サルトの『聖母子像』です。

そして、ジョルジョ・ヴァザーリの『ゲッセマネの祈り』です。

この二人はフィレンツェで師弟関係でした。他の画家にも付いていて、後にミケランジェロにも弟子入りもします。

サルトはフィレンツェが神聖ローマ帝国軍などに包囲され敗北した後亡くなり、ミケランジェロはローマに拠点を移します。
ヴァザーリは包囲されるフィレンツェの絵を描いていますが、おそらく実際に外側から見たか、いた人に事細かに尋ねたのでしょう。個人的にはその絵がいちばんいいと思っていますが、ヴァザーリ自身は包囲の中にはいなかったでしょう。

以後、
芸術の都「だった」フィレンツェに思うところがあったのでしょう。
ヴァザーリは『芸術家列伝』というフィレンツェの芸術家の評伝集を書き始めたのです(後で範囲を広げる)。そこにはサルトやミケランジェロはもちろん、ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ティントレット、ボッティチェリ、チマブーエ……さらにはヴァザーリ自身も取り上げています。

この著書第一弾を仕上げたヴァザーリはそれをフィレンツェの支配者となったコジモ・ディ・メディチに献じます。
以降がヴァザーリの出世街道です。メディチのお抱え画家になった彼は絵だけでなく建築物の設計も任され、著書の続編も書いたりして大忙しとなります。私は行ったことがありませんが、フィレンツェに行った方ならば『ヴァザーリの回廊』を見たでしょう。
ウフィツィ美術館もそうですが、ヴァザーリの名を後世に留める大きな仕事が次々とやってきました。

さて、サルトとヴァザーリの作品は少しだけ離れて展示されていますが、比較して光と影の描き方をみると、サルトの影響が感じられるように思いました。彼は聖画を多く描いていたからか、真っ黒い背景に人が光を受けて浮かぶような描きかたをよくしています。今回見た『ゲッセマネの祈り』はそれがさらに進んで、スポットライトをあてたような光と影を作っています。光と影の使い方についてはレンブラント、あるいはラトゥールの作品も思い浮かびますが、その少し前からいろいろ描かれていたというのが分かりました。

そのような見方もあるということです。
さきにも書きましたが、
ある時代にどんな人がいて生きていたか、
それによって何が生まれたか、
それに加えて、
誰と関わって繋がっていたか、ということにも思い至ると、さらに絵を深く見られるようにも思います。

それはひとつの方法で、絶対ではありません。
一目で心を持っていかれる、目が離せないーーそのような経験がもっとも大切でしょう。

とはいえ、ブーグローの『純潔』(部分)は思わず撮ってしまったのでした😅

それでは、今日の曲です。
Paris Paloma『Labour』

Live at TATEとあったのでテイト・ギャラリーでしょうか。間違いならごめんなさい。
行ってみたいな、よその国の美術館❤️
この方はFaroutがグラストンベリーおすすめアーティストとして挙げていたので、お出ししてみました。
フェスは今日もやっていますね♪

それでは、お読み下さってありがとうございます。

尾方佐羽

追伸 それで、本当のところをぜひ知りたいのです🤔

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