見出し画像

The Beatles 全曲解説 Vol.164 〜Rocky Raccoon

『The Beatles (White Album)』13曲目(B面5曲目)。
ポールの作品で、リードボーカルもポールが務めます。

虚しい仇討ちの失敗の末に…土煙の吹く乾いた荒野の物語 “Rocky Raccoon”

カラッと乾いた荒野の空気がよく似合う、アコギが前面に出たフォーキーな質感の作品です。

“Ob-La-Di, Ob-La-Da” と同様に、サイケ期からポールが得意とし始めた物語調のナンバー。
今回登場するのは、恋人ナンシーをダニエルという男に寝取られた哀れな西部の男、ロッキー・ラックーンです。

「Raccoon」というのは「アライグマ」の意味。
語呂を優先して、確実に存在しない名前ということでポールが名付けています。

ダニエルに復讐を果たすために、銃をとって獲物の隣の部屋に陣取るロッキー。
ナンシーとお取り込み中のダニエルの部屋に突入し、「ダニーボーイ、勝負だ!」と高らかに宣言します。

ところがダニエルを見くびっていたロッキー。
すぐさま銃で吹き飛ばされ、返り討ちに。

部屋に戻って、酔っ払いのヤブ医者に治療を受けます。
残ったのはギデオン聖書だけ…。


…いや、この話は一体何を伝えたいのでしょうか(笑)。
救いのないバッドエンドという意味でも、 “Eleanor Rigby” なんかとは質感が違いますよね。
さしずめ西部の片隅の、どこにでもあったナンセンス・ショートストーリーといったところでしょうか。
型を持って型を崩すポールの表現力、こんな話でも一流のポップソングに仕立て上げてしまいます。

ざらついたアコースティックな音色が曲を引っ張る裏で、数々の聴きどころが散りばめられているのもこの曲の魅力です。

まずはリンゴのドラム。
イントロからしばらくはハイハットで遠慮がちにリズムを刻みますが、徐々にスネアを交えて曲を盛り上げます。
間奏前、ロッキーが撃たれるシーンでは、「バン!」と力強く銃声を再現。
曲の演劇性を更に引き立たせています。

そして、最後のバースには何やら女声コーラスが混じっていますが、これは一説によると、後にポールの妻となるリンダ・イーストマンが参加しているそうです。
“The Continuing Story Of Bungalow Bill” で、ジョンはヨーコに歌わせていますが、実はポールも似た所業に走ってたんですね…。

実はリンダ、ビートルズ解散後にポールの率いるバンドの一員として、素人ながらミュージシャンデビューしてしまうことになります。
ジョンにとってのヨーコと同様に、ポールにとってのリンダも徐々に重要なパートナーとなっていくんですねー。

最後に最も重要な聴きどころを。
実はこの曲、ジョンのハーモニカを楽しむことのできる最後のビートルズナンバーなんです。
初期はあれだけ前に出ていたハーモニカも、この曲では要所要所で軽く響く程度。
ビートルズがここまで辿ってきた道のりの長さと、バンドの音楽性や力関係の変化を感じさせます。

#音楽  #音楽コラム #音楽レビュー  #洋楽 #名曲 #ロック #バンド #名盤 #エッセイ #ビートルズ #ジョンレノン #ポールマッカートニー #ジョージハリスン #リンゴスター #映画 #おうち時間を工夫で楽しく #スキしてみて

この記事が参加している募集

#スキしてみて

528,184件

#おうち時間を工夫で楽しく

95,447件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?