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【前編】地球環境や食糧問題を考えるきっかけに「食育プロジェクト」

安全で豊かな放課後を日本全国で実現するために活動する放課後NPOアフタースクールは、企業・団体と協働して、子どもたちの体験機会の創出や、放課後の居場所における人材育成・研修実施に取り組んでいます。
企業と私たちの“想い”と“強み”を活かして、全国の放課後を豊かにすることで、子どもたちのウェルビーイング実現につながることを目指します。

「企業×放課後NPO」マガジンの本シリーズでは、協働する企業の担当者の方へのインタビューや、プログラムを子どもたちに届けた際の様子などをまとめて発信します。

初回は、食品素材メーカーの不二製油株式会社との協働プロジェクト「食育プロジェクト」です。

不二製油株式会社
植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の4つの事業領域において、私たちはお客様とともにさまざまな「食」を社会に提供してまいりました。「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します」をビジョンに挑戦を続けています。http://www.fujioil.co.jp/

本記事は、前編・後編の2本立てでお届けします
前編:「食育プロジェクト」の概要と企業担当者の方へのインタビュー
後編:子どもたちにプログラムを届けた際の様子と社員先生として参加された方々の声


■プロジェクト概要|持続可能な世界について“食”から考える

食育プロジェクトとは?

「人と地球の健康を考える」をテーマに、子どもたちが世界の食糧問題や食の大切さを学ぶ体験プログラムを、小学校や放課後の時間に届けています。
2024年度で10周年を迎えた「食育プロジェクト」は、2015年~2023年で137校、218回実施し、5,979人の子どもたちが参加しています。

プログラムは、大豆・油脂・カカオの3つのテーマから選べる オリジナルの内容で、不二製油の従業員が“社員先生”として参加をし、子どもたちと一緒に「食」を通して持続可能な世界を考えていきます。

大豆のチカラで人と地球を元気に|大豆プログラム

大豆は、幅広い地域で栽培でき、栄養価が高くエネルギー効率がいいことから、世界の食糧危機を救うといわれています。大豆プログラムでは、世界の食糧問題や大豆のチカラについて学びながら、「身近な食」の大切さを考えます。

身近な食から未来の地球を考える|油脂プログラム

世界で最も使用されているパーム油(植物油)を通して、身近な食べ物と食を取り巻く環境について学びます。さらに、子どもたちの未来に向けて持続可能な食の在り方について考えます。

チョコから考える私たちのアクション|カカオプログラム

身近に食べられているチョコレートが将来食べられなくなるかも!?カカオの生産地で起きている様々な課題や、立ち向かっている人々の取り組みについてクイズや動画を通して学びます。

いずれのプログラムも、ワークショップやクイズなどを通して、「世界」と「自分の食」の繋がりを感じながら、食の第一線で活躍するプロから直接学ぶことができます。


■インタビュー|社員×子どもたちで サステナブルな食の未来を共創

不二製油株式会社で本プロジェクトをご担当いただいている吉野由里子さんに、プロジェクトのテーマへの想いや子どもたちへの願い、企業としての役割や社内での反応などをお聞きしました。 

「人と地球の健康を考える」をテーマに食育プロジェクトを実施していますが、そのテーマに対する想いと子どもたちへの願いを教えてください。 

吉野さん:
不二製油グループはビジョンとして「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します」と掲げており、食育も大事な取り組みです。

不二製油では食品素材を扱うことが多いのですが、子どもたちも含めて一般的に、食べる状態でしかその実物を見たことがなかったり、食べている物がどういう過程でつくられるのかなども知らなかったりします。

食べているものと世界との繋がりを感じ、環境なども影響し合っているということを、少しでも知ってもらえたらいいなと思っています。そして、例えばスーパーで買い物をするときに、その知識も踏まえて食材を選択してくれるような、そんな消費者になってくれたら嬉しいなという想いもありますね。

食育プロジェクトが今年度で10周年を迎えますが、企業としてサステナビリティの活動を続けていく意義には、どのようなものがあると考えていますか? 

吉野さん:
食育に限らずですが、不二製油グループ自体が「サステナビリティ」に注力して様々な活動に取り組んでいます。そのような活動をしていかないと、会社自体が成り立っていかないという意識を持っています。原料を世界中から調達しながら事業をしているため、環境への配慮なども含めて「持続可能性」が根幹にあり、重視しています。

一方で、事業の一つとして予算や工数をかけて、プロジェクトを継続してくださっているかと思います。社内ではどのように合意をとられ、推進をしているのでしょうか? 

吉野さん:
 地道なコミュニケーションを積み重ねながら、社内での理解・共感を得てきました。例えば、社内報で、社員先生をしてくれた人やその様子を紹介したり、“食育の日”をフックに発信をするなどして、関心を持ってくれる機会をつくりました。また、新入社員向け研修の時に食育プロジェクトのお話をすると「私やってみたいです」と声をかけてくれたりしますね。

プロジェクトを開始・継続されてきた中で、苦労されたことや大変だったことなどがあれば教えてください。 

吉野さん:
そうですね、コロナの時には、対面でやってきたプログラムですので、「これからどうしよう」と思ったのですが、放課後NPOさんからオンライン開催というのを提案していただきました。

また最初のころは、社内で社員先生を探すことにも苦労しました。当初は全然プロジェクトが認知されていないし、どうやって募ろうかというところは悩みの種でした。年代や部署に関わらず様々な社員が参加してくれることが一つの意義だと思っていたので、知っている人とかやってくれそうな人にどんどん声をかけて、先生を頼むということをしていました。

今では、リピーターで来てくれる人に出番を回せるかなとか、逆にそちらの心配をすることもあります。(笑)初めての人にやってもらいたいなと思うと、そういうのも悩ましいですね…

食育プロジェクトでは、社員先生として社員の皆様にご参加いただき、実際に子どもたちの前でプログラムを実施いただいています。どのような狙いと効果があると考えていますか?

社員先生としてプログラムを実施する吉野さん

吉野さん:
食品素材会社である不二製油の社員であっても、所属する部門によっては食品そのものに触れる機会が少なく、自社で取り扱っている原料のことをあまりよく知らない社員もいます。そういった社員にとっても、小学生に分かりやすく教えるという経験を通して自社原料を学ぶ機会になっていると思います。

また、BtoBの会社なので、実際の消費者に会うことは少ないのですが、子どもたちは、未来の消費者になっていきますから、そういう子たちの反応を見られることも、開発や営業に携わる社員にとっては、いい機会になるかなと思っています。

普段忙しく仕事をする中でも、年代や部署に関係なくいろんな方が手を挙げて参加してくれるんです。普段の業務から離れて子どもたちと触れ合うことで、純粋に喜びや楽しさを感じてもらえるのがいいのかなと思いますね。

 最後に、子どもたちにプログラムを届けてこられた中で、印象に残っているエピソードがありましたら教えてください。 

吉野さん:
だいぶ前になるんですが、過去に実施していた大豆のおやつ作りプログラムで、豆乳プリンをつくったときに、ある男の子が「お兄ちゃんはいろいろアレルギーをもっているけど、大豆のアレルギーはないから、作ってあげたい」と言ってくれたことがとても印象に残っています。

また、私自身の子どもが通う学校へ訪問してプログラムを届けた時もあったのですが、自分の仕事について知ってもらえる機会になりましたね。「手を挙げて答えてください」という場面で、娘が全く手をあげなかったんですが、あとで「なんで挙げてくれないのか」と聞いたら、「もし間違えていて、お母さんに恥かかせたらいけないから」と。ある意味で印象に残っていますね。楽しかったです。


プロジェクト開始から10年を迎えた「食育プロジェクト」。吉野さんをはじめとする、関わってくださった皆さんの想いと、参加してくれた子どもたちのおかげで、ここまで継続することができました。
これから先も共に子どもたちへ「気づき」や「発見」を届けられることが、とても嬉しく楽しみです。

後編へと続きます
後編:子どもたちにプログラムを届けた際の様子と社員先生として参加された方々の声