(書評)本の読み方~スローリーディングの実践 平野啓一郎 PHP新書

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・本との出会い
・本の構成、内容
・お勧めのポイント
・しおり箇所

・本との出会い
NewsPicks マガジンVol2 の必読書特集で、コルクCEO佐渡島氏が文学分野を担当しており、そこで本の読み方に関して学べる本を複数あげており、スローリーディングという副題に惹かれ、手に取った。
複数の候補から選んだ理由として、また芥川賞作家が書いておりユニークな視点が得られると思ったから。
ちなみに本書の刊行は2006年と、平野氏の芥川賞受賞前ではある。

他に本の読み方として紹介されていた本は下記。
「読んでいない本について堂々と語る方法」ピエール・バイヤール 筑摩書房
「読書について 他二篇」ショウペンハウエル 岩波書店
「罪と罰を読まない」岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美 文藝春秋

・本の構成、内容
構成は3パートに分かれ、スローリーディング基礎編、テクニック編、実践編となっている。
内容は、スローリーディングの実践と副題にあるように前編通して読書スタイルの提案である。
基礎編は、スローリーディング派の作者が以前速読に憧れたこともあるが、速読とスローリーディングを対比しながら、スローリーディングがいかに大事かを力説している。
テクニック編は、少々ユニークで作家視点で小説がどのように構成され、細部にこだわりが含まれているか、具体例を織り混ぜながら紹介し、ゆっくり読むことの魅力を伝えようとしている。
実践編は、古今の小説からセンテンスを引用しながら、作者がスローリーディングすることでどのような読み方ができているかを紹介している。

引用されている古今の小説は下記。
「こころ」夏目漱石
「高瀬舟」森鴎外
「橋」カフカ
「金閣寺」三島由紀夫
「伊豆の踊子」川端康成
「蛇にピアス」金原ひとみ
「葬送」平野啓一郎
「性の歴史1 知への意思」フーコー

・お勧めのポイント
本書の一番な見所は、スローリーディング実践編であろう。
平野氏が古今の小説をどう読んで、解釈すればいいかの解説をしているのが参考になる。
例えば、夏目漱石の「こころ」で引用されているセンテンスで、その前後の文脈からして違和感のある箇所を取り上げ、唐突に出てくるイゴイスト(利己主義者)という言葉の意味合い、作者の意図を分析し、解説している。

また森鴎外の「高瀬舟」でも主題として文章にニュアンスが含まれる献身というキーワードを頭に入れておくと、読み進める上でどう理解を深めるのに役立つのかが説明されている。

他にもカフカの「橋」では痛みというテーマが意識されていて、随所にそのような文章表現があるので、知っていることで場面ごとの展開をよりはっきり意識できるようになる。
これら断片的に紹介してもピンと来ないかもしれないので、スローリーディングに興味があれば是非本書を手にとって欲しい。


尚、今回の書評も活かし、NPマガジン読書会を開催します。オフ会(先着5名限定) NewsPicks マガジン読書会@仙台
https://eventon.jp/14995/

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