かしこさラボ【導入】~一緒にかしこくなりませんか~
なお、「かしこさラボ」の「導入・分析編」の記事は、できればPCで腰を据えて読むことをオススメします。スマホで読むことを想定した加工は、少しずつ進めていますが、しっかり考えながら読む環境がベストです。
①なぜ今賢さの探究をするのか
賢く生きたいと思う人はかなり多いだろうし、私もそうだ。
その割に「賢さって何ですか」という問いに対して明確な答えを持っている人は少ない。「論理的な話し方ができる」などと、部分的な回答は出てくるのだが、体系的に説明している書物やサイトに出会うことはなかった。
そこで、賢さを体系化し、育むために必要なトレーニングを考案・実践してみたいという思いからこの記事を書き始めた。かなり壮大なプロジェクトに発展しかねないので、のんびりとお付き合いいただければ幸いだ。
【個人的な動機】
自己紹介をしておくと、私は教育産業で20年以上働き、大学入試や中学入試で、東大や京大、開成中などの難関校に合格させる業務を主に担ってきた。
ただ、合格させても、「天下国家を支える人材の育成」という自分のライフワークが果たせているという確信を全く持てないでいる。官僚や法曹の人材、一流企業で活躍する人材に結果的になったとしても、自らの貢献度はまだまだ低いと認識している。
そこで、今回「賢さとは何か」を掘り下げ、それを獲得するための教育のあり方を構築することで、新たな可能性を生み出したいというのが、この記事を書き始めた個人的な動機である。
【社会的な動機】
正直にいって、日本が極めてまずい状況にあるからである。その状況打破のために、少しでも「賢い日本人を増やさないといけない」という問題意識がある。ここは少し長くなるが、背景の把握のためにもがんばって読んでほしい。
まずは、「賢さがあまり必要ではない状況」を考えてみる。
例えば、大富豪の家に生まれ、経済的な不自由もなく、わがままを通すことができて、何の「問題」も生じていない場合、賢さはあまり必要とされないように思う。
かつての日本はどうか。中産階級の家庭に生まれ、型にはまった生活をしていれば、生命の危険にさらされることは稀であった。もちろん、交通事故や病気などのリスクはあるが、企業の中で生き残る術を考えることができる程度の賢さを持っていれば(それはそれで大変だが)、何とかやってこれた。
むしろ、飛びぬけて賢い日本人が出てきたとしても、「出る杭は打たれる」ような雇用環境や賃金体系が作り上げられて、優秀な人材が海外に流出した例は枚挙に暇がない。
ところが、昨今の日本の情勢は大きく変わってきている。
ITによる自動化で雇用が減少し、日本の工業を支えてきた技術の伝承もできずに消えていっている。更に、電気自動車包囲網の形成により、自動車産業の先行きに怪しい状況が生まれ、拡大してきたインバウンド収入も激減している。
同業他社が多く存在して、多くの無駄な生産をしていて許される状況は過ぎ去り、日本の英知を結集して国際競争力のある製品の生産を行っていくとなると、さらに雇用が減少していくことは容易に想像できる。
自動車産業以外にも国益の中心となる産業を生み出すことができるのか、GAFAMに対抗しうる環境を整備できるのかというレベルの課題克服がなされない限りは、日本経済は縮小の一途をたどることになる。
縮小自体は避けられないとしても、その中で、ソフトランディングをしていく方法を考えていかないと、多くの不幸が生み出されてしまう。
そこで、ベーシックインカムの議論が出てくる。一人当たり10万円を1億人に毎月支給するだけで、必要な財源は年間で120兆円を超える。
令和4年度の日本国の社会保障関係費は一般会計予算ベースで約36兆円、国家歳出の33.7%を占める。なお、地方自治体の負担が約16兆円、保険料が被保険者と事業主を合わせて約74兆円。足せば約126兆円で何とかなるように見えて、「年金・医療・福祉」の全ての給付を合わせた社会保障給付費が現在で約131兆円だ。「ベーシックインカム以外の保障が何もない」「保険料の収入はもちろん減少する」という状況を考えれば、その実現性の低さは容易に理解できる。
仕事を失った人々が、階層分化を受け入れて、小規模なコミュニティの中で、メタバース(バーチャルリアリティー)とドラッグとベーシックインカムで生きていくという安直な設計で解決するのか。
旧来の農村社会的なコミュニティを基盤にした受け皿を想定するならば、帰農という選択肢を現実的な手段として進めるべきだが、その道筋は全くといっていいほど立っていない。
個人的にグランドデザインを想定しつつ、部分最適となるモデルケースを作るべく構想と活動を進めている。まずは、地方創生の分野に踏み込んではみたが様々な障壁があって私が「すぐに」できることは少なそうだ。
楽観的にこの状況を眺めている日本人は多いが、日本脱出の環境を整えている知識人や富裕層は増えている。ただ、世界市民などというと聞こえはいいが、日本人というアイデンティティを維持できるものならば維持したいと思っている人は多いはずである。
しかし、日本の存続という大きな責務を担いうる意欲や能力にあふれた人材がどのくらいいるのか。少なくとも、有能な識者のアイデアを行き届かせることができるミドルマン(仲介者的な存在)を教育によって多く生み出す必要がある。
②人はなぜ賢さを求めるのか
さて、ここでは、なぜ人が賢さを求めるのかについて段階的に考えてみたい。個々人が、何のために賢くなろうとしているのかという目的意識を自覚することは大切だ。
【初期段階】褒められたい
特に小学生の学習モチベーションを見ると分かりやすいが、親や友達に褒められたいから賢さを求める。自己顕示欲の現れともいえる。大人になっても、これだけが賢さを求めるモチベーションの源泉というのはいただけない気がする。
【発展段階】ポジションの獲得
資本主義経済を前提としたステップアップの道筋として、「生活の安定/ステイタスの確保/経済的自由の獲得/目的意識の実現」という段階が考えられる。
これらを成し遂げるために、ポジションを獲得し、決定権を手に入れることを目的に賢さを求める。それは、単に命令する権利を手に入れるということではない。様々な選択肢を取り得る状況を獲得するということだ。
また、「時間は有限」という不可避な問題があって、常に効率化を求められるとともに、社会的な変化が加速度的に早くなっていることに対応するためにも、より賢さが必要となってきている。
だから、人は早くポジションが欲しい。ゆえに焦り、判断を誤ることも多い。賢さは一朝一夕に手に入るものではない。それを構成する要素をしっかり分析し、同時並行的にそれらを鍛え、ポジションを手に入れる力を養っていく必要がある。
③賢さとは何か『分析編』
それでは、具体的に賢さの構成要素の分析を行っていくが、ひとまず以下の8つの切り口を用意してみた。これらの構成要素が賢さの全てというわけではないだろうし、「追加や統合」を行いながら考察を深めていくことになるが、叩き台として各々深堀りしていくことにした。
【1】語彙力と論理性
【2】スピードと正確性
【3】情報収集能力
【4】コミュニケーション能力
【5】判断力 【6】行動力
【7】創造力 【8】シンかしこさ
【0】かしこさの再構築
これらの思考を通して得られた結論は、
「理性と感情に折り合いをつけながら」
「コミュニケーション能力を駆使」して
「論理的で計画的な実行と改善」を行い
「結果的に正確性・効率性・創造性が生み出されていること」
ということになった。ただ、どちらかといえばVUCA時代以前の資本主義社会に求められてきた資質にも感じられ、時代の変化に即した新たな賢さを加味していく必要はある。その鍵は特に「感情」「コミュニケーション」「創造性」にあると予感している。
なお、次の『実践編』では新しい教育の方法論をくみ上げるために、多方面から帰納的に必要な訓練を抽出していく。年内にこの作業を終えることが目標だ。
④賢さを育てる『実践編』
⑤雑記へのリンク
・ワーケーション2.0の未来を考える
・自己肯定感の呪縛から解放されようぜ
・SDGsの違和感を言語化する
・迷子の社会(時代についての考察)
・ファンを作るという知恵(生存戦略)
・人材と技術という資源(育成と模倣)
・シン・高等教育(学歴志向の打破)
今の興味:「ファイナンス」「公私」「ファクト」「リスキリング」「スキゾとリゾーム」「時間」「世代」「公私」「心」「動詞」など
⑥パラダイムシフト
(2022/7/29)
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