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『面白さ』の構造理解で創造力を高める【かしこさラボ:実践編1】

◎面白さの種類

今回は、「面白さ」の構造を理解して、創造力を育成するために必要なポイントをあぶりだしていきたい。

これまで、「面白さ」の構造分析をした人はそれなりにいる。よく使われるのが「funny」「interesting」の2段階で区分し、それぞれを細分化して共通点や相違点を見つけるという手法だ。

今回はそれに「sensational (shocking)」という段階を加えて考察を加えてみたい。

①”funny”

いわゆる「笑える」「ウケる」というレベルの面白さだ。

京都大学 WPI-iCeMS・化学研究所の上杉志成教授が、"interesting"も含めて、「面白さ」を解説してくれている。

https://www.chemistry.or.jp/opinion/ronsetsu1608-2.pdf


・桂枝雀的「サゲ」の笑い

桂枝雀師匠ほど、圧倒的な経験をもとに笑いを科学した人はいないのかもしれない。上杉志成教授の解説にも出てくる「緊張と緩和(緊緩の法則)」とは、「緊張」は価値観の高いもので「緩和」は低いものと考える。緊張から緩和への「サゲ」の快感で笑いを作り出すという手法だ。

さらに、「サゲ」のパターンを、「ドンデン」「謎解き」「へん」「合わせ」の4つの類型に分けて、上方落語の噺をこの4つに分類しきってしまっている。帰納的に法則を導き出し、演繹的に新たな噺を作り出す。まさに天賦の才とはこのことか。

詳しくは、ちくま文庫『落語 DE 枝雀』をぜひ読んでいただきたい。

自分でも、一本書いてみた。


・あるある的共感

最近多い”funny”のパターンとして、この種類は増えている。枝雀的に言うと「合わせ」の手法ということになるが、ホワイト化が進むなかで下品な笑いを避ける必要は出てくるので、「謎解き」や「合わせ」の類が多くなる。


他には、『ゴールデンカムイ』というマンガにたまに出てくる下品な笑いがある。小学校高学年のときに男子が騒いでいるタイプのやつだ。「いたいたこういう奴」っていう笑いがそこにはあるが、きわどいラインだ。

・シュールという世界

枝雀的にいうならば「へん」の世界だ。その組み合わせはオカシイだろ、というやつだ。個人的にはこの世界が大好きだ。比較的作りやすいし、お金もあまりかからない。コスパ的には今後もなくならないだろうし、創造力を鍛える訓練にはもってこいかもしれない。


②"interesting"

自分の常識を論理的に少し覆されて、知的好奇心を刺激された場合と言える。知的な「くすぐり」という感じだろうか。

神戸大学大学院経営学研究科の服部泰宏准教授が、デイヴィス・マレー氏の論じた「Interesting」の12のパターンを解説してくれている。簡単に言えば、どのような論理に出会うと人は「面白い(interesting)」と感じるのかを類型に分けたものだ。

ちなみに12のパターンとは

(1)普遍性 Generalization(2)組織性 Organization(3)因果 Causation
(4)反対性 Opposition(5)共変動 Co-variation(6)共存性 Co-existence
(7)相関関係 Co-relation(8)機能性 Function(9)抽象 Abstraction
(10)複合 Composition(11)評価 Evaluation(12)安定性 Stabilization

だそうだ。これだけではさっぱり分からない。気になる方は上の記事を読んでみてもらうとよいだろう。私も読んでみたが、"interesting"の構造分析自体は、実践を伴わないと"interesting"ではないという感想を持った。私の「賢さ」の探求も、同様の罠に陥らないように気をつけていきたい。

③”sensational (shocking)"

もはや「感情を揺さぶられる」「衝撃を受ける」といったレベルの存在だ。「人類の能力の極限」を垣間見るようなエンターテインメント性の高さがそこにはある。いわゆる「ヤバい」というやつだ。”unique”という区分で扱う人もいるが、ユニークという言葉のニュアンスとは多少のズレがある。

巨大な建造物。例えば、明石海峡大橋だ。デジタル加工された写真で見ると、「わーきれい」くらいだが、実際に渡ってみてほしい。橋の下を通るミジンコのような船、風圧、異世界に突入する感覚。「なんだこれ、ヤバ」と思う。

明石海峡大橋


次は、モノを生きているように見せかけるアニメーション技術だ。すごく手の込んだ作品で、「費用対効果は大丈夫か」と見ているこちらが心配してしまう。しかし、突破力を持ったコンテンツを世に出していかないと、注目を浴びることすら叶わないとなると、これはまた大変だ。


それを再現性高くなしとげることができ、収益性の観点からもこの時代に適しているのが「デジタルアート」であると位置づけると、昨今の知識人の多くが肩入れするのも理解できる。


他には、大リーグの大谷翔平選手の二刀流などがその例として挙げられる。マンガの世界を「実際に人がやってのけている」という事態は、人間の限界を超越した存在として脅威すら感じる。逆に、3打席連続三振とかしたときにホッとする人がいるのは、まさに「緊張と緩和」といえる。

◎まとめ

"funny"と"interesting"は段階的な違いというよりは、性質の違いであると感じた。しかし、"shocking"には段階的な差を感じる。身近な共感やくすぐりから、未知との遭遇に変わりつつあるということだ。創意工夫レベルの「Mini‐C」から、0から1を生み出す「Big‐C」への転換だ。

しかし、面白さを創造するとして、他の人にとっての未知は、自分にとっても未知であることが多い。自分の世界がニッチな場合はその紹介で済むかもしれないが、知れ渡ると風化する。論理的に創造力を鍛えたとして、未知の世界を見つけることはたやすくない。まして「世界初」「世界最高」に挑むには、リソースと才能が不可欠だ。

そこで、ASMRが広がりを見せているように感性に訴えかける仕組みが必要と考えられ、メタバースに期待が集まるという構図がそこにはある。

超一流の世界を積極的に見る
論理と感性の両面を鍛える
 人が快と感じる論理や場面について
・人為と天然の両面からアプローチ

トライ&エラーに耐えるメンタリティ
・シュールや謎解きレベルのMini‐Cで訓練

圧倒的な表現スキルを手に入れる
・体験型の面白さを追求する


今回得た材料はこのあたりというところになる。

世界は広い。そして「面白い」。 

追記:とんでもない事態になりました。もはや画像や映像の世界がAIに乗っ取られることは自明というレベルです。アミューズメントの突破口が、体験型一択になるくらいの衝撃です。↓ 是非読んでみてください。


(2022/8/23・改)


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