延藤 直也
日記的詩
詩的焙煎の記録
日常生活の中で見出した気づきと発見を書き記します。
満月が焚き火の様に ゆらゆら燃える 街と街 ビルとビル 空と地上の間を 冷たい風が吹き抜ける 風に吹かれて 消えそうな満月に向かって 薪を焚べる様に星々が流れ 満月は…
玄関の扉を開けることさえ精一杯になるほど 疲れたある日の夜 思考と感情と筋肉が同時に停止して 血液が血管を流れていることと 肺が膨らんでは縮むことだけが それだけが…
夜 来るか分からない明日を どうかあしたがきますように と祈り目を閉じる 朝 生きているのが奇跡のような今日を なにもないように と祈り空虚な天井を見上げる 夜 なに…
民家や公園 用水路や駐車場 線路やビル 街全体が細部まで 夜色に塗り潰される 街灯の明かりだけを頼りに ビル群を抜けて 川沿いを直走り 坂道を上り下りし 帰路を辿る 玄…
駅舎の屋根から滴る雨水が 小さな水たまりをつくる 水たまりの歪な円形が 少しずつ広がる 鮮やかな青色の長靴を履いた少女が 跳んで水たまりに着地する 水が無邪気に跳…
電車から見える 夜はいつもより暗く 街の明かりはいつもより明るい 風が吹いて さらに後を追って風が吹いて それから湿気を持った重い風が吹き抜ける 星が春の暖かさに融…
瞳を閉じてから開けるまでの 僅かな瞬間に 線で繋がっていた点と点が 解けて夜に沈む あらゆる生命体の 呼吸音が静かに響き合い 暖かい毛布に包まる 街と街 道と川 月と…
春の全部を吹き飛ばしてしまいそうな 強い風が街を揺らす レストランの看板や 捨てられた飲みかけのペットボトルや 道端に散った桜の花びらが 一斉に風に吹かれる 車道の…
砂が落ちる のを止めることはできず ただぼんやり と眺めるまま 砂が落ちた分だけ 夜の暗さは深く濃くなり 月明かりがより鮮明に 空に佇む 静かな夜に読んだ 表紙が色褪…
深夜コンビニ前の車道を 空車マークのタクシーが 数台続けて通り抜けて行く 後を追うように 夜風が吹き抜けて 駐車場脇の葉桜が揺れる 見えない月を探しに 曇った春の夜…
微睡みの谷間を 朧月みたいな淡い光が 灯す 山に棲む 鹿の親子や 杜鵑の夫婦や 孤独な狼が 光に誘われて 谷間に降りる そこに集う動物たちの呼吸が 交錯し分離しまた交錯…
陽がゆっくり歩くのと同じ早さで 風が隣を歩く 蜂の羽音が微かに聞こえるバルコニー 物干し竿に掛けられたシャツの皺が影に映る 朧げな陽光が 朝と小鳥とわたしを眠りへ…
花瓶に挿されたチューリップ 読みかけの文庫本 二つ仲良く並んだ湯呑み 食卓を雑多に彩るそれらの影が 窓から通り抜ける風にゆらゆら揺れる
草木の匂いがそよ風に抱かれて 開いた窓からふんわり薫る 春の陽光がカーテンに包まれて 窓の桟に落ち着く 小鳥が薔薇の木に降りて 狭い空を見渡す 桜の花びらが地面に…
「眠っている人の数だけ星は輝くの」 と亡き祖母に春の夢の中で教わってから 星になるために 誰かの道を助ける星になるために 夜になると同時に眠りに就く 目一杯に輝くた…
何もなかった日なんて一日たりともないのに ほとんど日々が何もなかった日として過ぎていく 散り終わりの桜の木を眺めた日や 曇り空の下で汚れた靴を洗った日や 昼間の空…
2024年4月27日 00:14
満月が焚き火の様にゆらゆら燃える街と街ビルとビル空と地上の間を冷たい風が吹き抜ける風に吹かれて消えそうな満月に向かって薪を焚べる様に星々が流れ満月は再び燃える
2024年4月26日 08:19
玄関の扉を開けることさえ精一杯になるほど疲れたある日の夜思考と感情と筋肉が同時に停止して血液が血管を流れていることと肺が膨らんでは縮むことだけがそれだけが明確に分かる何度読んでも分からない読めば読むほどに分からなくなる小説に栞を挟んで閉じるようにゆっくり目を閉じる記憶や知識あるいは経験が身体から離れていく手を伸ばして引き留めようとしても掴めないどんどん離れて
2024年4月25日 07:35
夜来るか分からない明日をどうかあしたがきますようにと祈り目を閉じる朝生きているのが奇跡のような今日をなにもないようにと祈り空虚な天井を見上げる夜なにもなかった今日を喜びなにもないあしたがまたきますようにと祈り目を閉じる
2024年4月24日 08:50
民家や公園用水路や駐車場線路やビル街全体が細部まで夜色に塗り潰される街灯の明かりだけを頼りにビル群を抜けて川沿いを直走り坂道を上り下りし帰路を辿る玄関の重たい扉を開けて外とは明らかに違う家の空気を肺一杯に吸い込んでゆっくり吐きながら真っ暗な洗面台の鏡に映る自分の顔を見つめる
2024年4月23日 08:22
駅舎の屋根から滴る雨水が小さな水たまりをつくる水たまりの歪な円形が少しずつ広がる鮮やかな青色の長靴を履いた少女が跳んで水たまりに着地する水が無邪気に跳ねて水玉模様のシャツが踊る春色の光に照らされた街が水たまりに映える
2024年4月22日 08:16
電車から見える夜はいつもより暗く街の明かりはいつもより明るい風が吹いてさらに後を追って風が吹いてそれから湿気を持った重い風が吹き抜ける星が春の暖かさに融けて雨となり地上に降り注ぐ頭に浮かんだ一編の詩は雨に打たれ一語一語に砕け排水溝に流れる
2024年4月21日 08:02
瞳を閉じてから開けるまでの僅かな瞬間に線で繋がっていた点と点が解けて夜に沈むあらゆる生命体の呼吸音が静かに響き合い暖かい毛布に包まる街と街道と川月と雲夜と朝春と夏それらの間をまるい形の柔らかい風が吹き抜ける
2024年4月20日 08:04
春の全部を吹き飛ばしてしまいそうな強い風が街を揺らすレストランの看板や捨てられた飲みかけのペットボトルや道端に散った桜の花びらが一斉に風に吹かれる車道の信号が赤になり横断歩道の信号が青になるのを風の強さとは無関係に一定のリズムで繰り返す能力の優劣や物事の善悪あるいは自然の興亡とは世界を異にして機械として街の流れをつくる
2024年4月19日 07:46
砂が落ちるのを止めることはできずただぼんやりと眺めるまま砂が落ちた分だけ夜の暗さは深く濃くなり月明かりがより鮮明に空に佇む静かな夜に読んだ表紙が色褪せ幾つかのページの端は折れ鉛筆でメモが書き残された古い小説はとても苦かった
2024年4月18日 08:58
深夜コンビニ前の車道を空車マークのタクシーが数台続けて通り抜けて行く後を追うように夜風が吹き抜けて駐車場脇の葉桜が揺れる見えない月を探しに曇った春の夜空を駆け巡る
2024年4月17日 09:59
微睡みの谷間を朧月みたいな淡い光が灯す山に棲む鹿の親子や杜鵑の夫婦や孤独な狼が光に誘われて谷間に降りるそこに集う動物たちの呼吸が交錯し分離しまた交錯する永遠のような一瞬が過ぎて動物たちは元の住処へ帰る淡い光に照らされた大きな杉の木の影が佇む
2024年4月16日 09:30
陽がゆっくり歩くのと同じ早さで風が隣を歩く蜂の羽音が微かに聞こえるバルコニー物干し竿に掛けられたシャツの皺が影に映る朧げな陽光が朝と小鳥とわたしを眠りへと誘う
2024年4月15日 11:35
花瓶に挿されたチューリップ読みかけの文庫本二つ仲良く並んだ湯呑み食卓を雑多に彩るそれらの影が窓から通り抜ける風にゆらゆら揺れる
2024年4月14日 13:23
草木の匂いがそよ風に抱かれて開いた窓からふんわり薫る春の陽光がカーテンに包まれて窓の桟に落ち着く小鳥が薔薇の木に降りて狭い空を見渡す桜の花びらが地面に落ちてアスファルトが春色に塗れる日常の節々が温度を持って生命が芽吹く
2024年4月13日 15:07
「眠っている人の数だけ星は輝くの」と亡き祖母に春の夢の中で教わってから星になるために誰かの道を助ける星になるために夜になると同時に眠りに就く目一杯に輝くために部屋を真っ暗にして
2024年4月12日 10:58
何もなかった日なんて一日たりともないのにほとんど日々が何もなかった日として過ぎていく散り終わりの桜の木を眺めた日や曇り空の下で汚れた靴を洗った日や昼間の空いた電車内で詩を読んだ日が記憶と記憶の狭間にゆっくり融けるなんでもない一日が終わりなんでもない一日が始まる