延藤 直也

珈琲/詩

延藤 直也

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    日常生活の中で見出した気づきと発見を書き記します。

記事一覧

詩 「坂道」

緩やかな坂道が 空と海を繋ぐ 架け橋の様に 淡々と粛々と 続く 規則正しい信号機 歩道沿いの欅並木 等間隔に立つ街灯 坂道の上から下まで 秩序は保たれている様で 混沌を…

延藤 直也
22時間前
2

詩 「氷」

満月の様に 綺麗な球体の氷が 滑っとした晩夏の 暖気の中で解けていく 融解の過程は見えない 氷が水へと変化した結果のみを 見て知覚する 無機的な雲 虚無的な街 厭世的…

延藤 直也
1日前
2

詩 「穴底」

魚が海を泳ぐ様に 砂地を歩く 砂色の身体は 砂地に溶けて 鳥の眼には映らない 石 影 虫 風 夢 視界に映る物事や事象 或いは自身の思考や行動 あらゆる事が 輪郭を油性ペ…

延藤 直也
2日前
2

詩 「存在」

闇の岸辺 温めの潮風 波の満ち引き 朧げな月明かり あらゆる物事や事象が 曖昧な夜の海岸を歩く 恐怖が足を震わせ 不安が歩幅を縮ませ 悲哀が鼓動を急かせる 人一人居な…

延藤 直也
3日前
4

詩 「瞬き」

灰色の昼 藍色の気 黒色の壁 タコ足配線の様に 過去の恐怖と 未来の不安と 現在の憂鬱が 壁際で複雑に絡み合う 壁の向こう側に 土の渇き 雲の動き 母の囁き それらに似た…

延藤 直也
4日前
3

詩 「煙草」

疲弊した鴉の鳴き声が 静寂した夏夕空に 妙に響き 殆ど焼け焦げた様な色の 古本を捲る手が止まる 夏陽の監視を逃れて 気怠そうな夜街を 無目的に 無意味に 無責任に 徘徊…

延藤 直也
5日前
10

詩 「自転車」

流れる水も無く 渇いた用水路に沿って ブレーキの効きづらい 自転車を気怠く 漕いでいると アスファルトの地面に 蝉の抜け殻が幾多も 転がっており タイヤで踏まない様に …

延藤 直也
6日前
4

詩 「底」

夜の浅瀬で遊んでいた 泳ぐ術を未だ持たない 少年は夜の深さを知り ただ一人暗い闇の中へ 潜る 見たことのない星や いつもより明るい月が 羅針盤となって 少年を深い方へ…

延藤 直也
7日前
5

詩 「後の景色」

真昼間というのに 空は黒く 否確かに青なのだが 濃すぎるが故に黒い 雲もまた濃い白で 油性ペンで縁取った様に 明確な輪郭 空気ではなく 白い塊 ひとつの個体として 空を…

延藤 直也
8日前
3

詩 「星」

街灯 信号機 月明かり 其々の光に 照らされて わたし本体を中心として わたしの影が三方向に 煙の様に伸びる わたしが歩く毎に 歩き続ける程に わたしの影は其々変形しな…

延藤 直也
9日前
1

詩 「夏風」

色鮮やかな夏の記憶の隙間を 月の明るさ 風の冷たさ 街の静けさ それらがほとんど同時に 雪崩れ込み 秋の音色を呼び起こす 何かが割れた音 何かが流れた音 何かが弾けた音…

延藤 直也
10日前
4

詩 「夢見」

時計の針音が 微睡む眼を擦り 妖艶な月明かりが 不眠の世界へと誘う 濃くて薄らぐ影 重くて軽やかな風 硬くて和らかな壁 あらゆる物事の境界が 曖昧に 物事それぞれの輪…

延藤 直也
11日前
2

詩 「海月」

温かい苦と 冷たい甘が まったり 混ざり合った 気が 風に溶けることなく 海月のように 夜を漂う 真っ暗闇 一等星から星屑まで あらゆる星々の光を 知る為に 見る為に 朝か…

延藤 直也
12日前
4

詩 「渇望」

両肩に背負った荷の 重さを両足裏の隅々で 支えトンネルの様に暗い 砂漠を前傾で歩く 歩き続ける 水の音が聞こえる 水を渇望する咽喉が震える その振動が顎や頬まで揺らす…

延藤 直也
13日前
2

詩 「靄が掛かる」

一歩踏み出すごとに 靄が濃さを増す山道 視界の殆どはぼやけ 足元さえも覚束無い 歩いて来た道を振り返るも 此方も靄が掛かり 何ひとつとして 正確に認知することはできな…

延藤 直也
2週間前
2

詩 「街」

燕の群れに紛れて 三日月の 月明かりが 夕空を颯爽と翔んで 曇った街に夜の訪れを 知らせる 人間の目には映らない 水の流れが 大きい小さいに関わらず あらゆる道を 流れ …

延藤 直也
2週間前
5

詩 「坂道」

緩やかな坂道が
空と海を繋ぐ
架け橋の様に
淡々と粛々と
続く

規則正しい信号機
歩道沿いの欅並木
等間隔に立つ街灯
坂道の上から下まで
秩序は保たれている様で
混沌を極めている

坂道を流れる

雨水
陽の光
そのどれもが
無味無臭で
全てを得た様に映る景色は
全ての色を失いモノクロでもない

詩 「氷」

満月の様に
綺麗な球体の氷が
滑っとした晩夏の
暖気の中で解けていく

融解の過程は見えない
氷が水へと変化した結果のみを
見て知覚する

無機的な雲
虚無的な街
厭世的な海
断片的な暮
刹那的な夏

氷が解けて全く水に変化するまで
永遠のような一瞬の間
全身の血流が止まる

呼吸音が静かな体内に響き
重たい足を引き摺って
時の流れに逆らい歩く

詩 「穴底」

魚が海を泳ぐ様に
砂地を歩く

砂色の身体は
砂地に溶けて
鳥の眼には映らない






視界に映る物事や事象
或いは自身の思考や行動
あらゆる事が
輪郭を油性ペンで縁取られて現る

ただひとつ
夢想や幻想の範疇をも超えた
穴を除いては

暗い穴
深い穴
狭い穴
冷たい穴
正しい穴
苦しい穴
言葉を奪う穴
感情を鎮む穴
希望を絶つ穴

穴底から望む一点の光が
少しずつ消えるのを
見つめ

もっとみる

詩 「存在」

闇の岸辺
温めの潮風
波の満ち引き
朧げな月明かり

あらゆる物事や事象が
曖昧な夜の海岸を歩く

恐怖が足を震わせ
不安が歩幅を縮ませ
悲哀が鼓動を急かせる

人一人居ない此処では
服を脱いで裸になる事も
深い落とし穴を掘る事も
静かな海の底へ沈む事も
何だって出来る

無益で無駄で無意味な行為の連続
ただの存在を自分自身のみ感じる

詩 「瞬き」

灰色の昼
藍色の気
黒色の壁

タコ足配線の様に
過去の恐怖と
未来の不安と
現在の憂鬱が
壁際で複雑に絡み合う

壁の向こう側に
土の渇き
雲の動き
母の囁き
それらに似た何かを感じる

動き続ける季節
止まったままの時間
ほんのただの瞬き

詩 「煙草」

疲弊した鴉の鳴き声が
静寂した夏夕空に
妙に響き
殆ど焼け焦げた様な色の
古本を捲る手が止まる

夏陽の監視を逃れて
気怠そうな夜街を
無目的に
無意味に
無責任に
徘徊する

頬に垂れた汗滴を
薄手の袖口で
軽く拭けば
仄かに煙草の匂いが香る

詩 「自転車」

流れる水も無く
渇いた用水路に沿って
ブレーキの効きづらい
自転車を気怠く
漕いでいると
アスファルトの地面に
蝉の抜け殻が幾多も
転がっており
タイヤで踏まない様に
ハンドルを器用に
動かしながら
夏陽を背に
秋の香の方へ
向かう

詩 「底」

夜の浅瀬で遊んでいた
泳ぐ術を未だ持たない
少年は夜の深さを知り
ただ一人暗い闇の中へ
潜る

見たことのない星や
いつもより明るい月が
羅針盤となって
少年を深い方へ導く

煌びやかで
艶やかな夜
呼吸することも
忘れて
無意識の中で
ただ瞳を開いたまま
底まで沈む

詩 「後の景色」

真昼間というのに
空は黒く
否確かに青なのだが
濃すぎるが故に黒い

雲もまた濃い白で
油性ペンで縁取った様に
明確な輪郭
空気ではなく
白い塊
ひとつの個体として
空を浮かぶ

温い風
青い落ち葉
痩せ細った木

ぼやけていた景色が
熱と光を吸って
気と色を吐いて
解像度を増して
鮮やかな景色へ変わる

詩 「星」

街灯
信号機
月明かり
其々の光に
照らされて
わたし本体を中心として
わたしの影が三方向に
煙の様に伸びる

わたしが歩く毎に
歩き続ける程に
わたしの影は其々変形しながら
時に手を繋いだり
時に抱き合ったり
時に接吻したり
あるいは無関係であるかの様に
隣を歩く

此処ではない
何処か遠くの
何処かは全く
見当も付かない場所で
空を見上げると
子どもが描いた絵の様に
遠近感が失われ全ての星々が

もっとみる

詩 「夏風」

色鮮やかな夏の記憶の隙間を
月の明るさ
風の冷たさ
街の静けさ
それらがほとんど同時に
雪崩れ込み
秋の音色を呼び起こす

何かが割れた音
何かが流れた音
何かが弾けた音
何かが燃えた音
何かが枯れた音

目を閉じて息を深く吸って
吸った分の息吐き切って目を開くと
進歩や発展あるい成長なるものを乗せて
温いモノクロの夏風が地を這いながら吹いた

詩 「夢見」

時計の針音が
微睡む眼を擦り
妖艶な月明かりが
不眠の世界へと誘う

濃くて薄らぐ影
重くて軽やかな風
硬くて和らかな壁

あらゆる物事の境界が
曖昧に
物事それぞれの輪郭が
鮮明に
夢見の様な現実に立つ

詩 「海月」

温かい苦と
冷たい甘が
まったり
混ざり合った
気が
風に溶けることなく
海月のように
夜を漂う
真っ暗闇
一等星から星屑まで
あらゆる星々の光を
知る為に
見る為に
朝から逃げるように
暗く孤独な夜を
永く歩き続ける

詩 「渇望」

両肩に背負った荷の
重さを両足裏の隅々で
支えトンネルの様に暗い
砂漠を前傾で歩く
歩き続ける

水の音が聞こえる
水を渇望する咽喉が震える
その振動が顎や頬まで揺らす
耳を澄ます
水の音の方へ歩き出す
歩むごとに水の音が遠退く

内臓や血管あるいは全細胞が
水を求めて皮膚の外側へ
這い出ようとするのを
皮膚が食い止め
黒い汗が滲む

咽喉が自身とは全く別の
独立した個体として
体内で
泣き叫び暴

もっとみる

詩 「靄が掛かる」

一歩踏み出すごとに
靄が濃さを増す山道
視界の殆どはぼやけ
足元さえも覚束無い
歩いて来た道を振り返るも
此方も靄が掛かり
何ひとつとして
正確に認知することはできない
改めて前を向くが
最早今向く方が前なのかも
分からない
身体と丁度同じ幅の穴に
すっぽり嵌った様に
一歩分踏み外せば崖のこの道で
身動きを取ることは出来ず
靄が消えるきっかけを
ただひたすら待つ

詩 「街」

燕の群れに紛れて
三日月の
月明かりが
夕空を颯爽と翔んで
曇った街に夜の訪れを
知らせる

人間の目には映らない
水の流れが
大きい小さいに関わらず
あらゆる道を
流れ
夕陽が沈んだ後の西空に
向かう

水が流れた後の道々に
朴訥とした樹木や
華麗な草花が
一瞬のみ咲いて
一瞬にして枯れて
何もなかった様に
街が呼吸する