詩 「氷」

満月の様に
綺麗な球体の氷が
滑っとした晩夏の
暖気の中で解けていく

融解の過程は見えない
氷が水へと変化した結果のみを
見て知覚する

無機的な雲
虚無的な街
厭世的な海
断片的な暮
刹那的な夏

氷が解けて全く水に変化するまで
永遠のような一瞬の間
全身の血流が止まる

呼吸音が静かな体内に響き
重たい足を引き摺って
時の流れに逆らい歩く

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