詩 「渇望」

両肩に背負った荷の
重さを両足裏の隅々で
支えトンネルの様に暗い
砂漠を前傾で歩く
歩き続ける

水の音が聞こえる
水を渇望する咽喉が震える
その振動が顎や頬まで揺らす
耳を澄ます
水の音の方へ歩き出す
歩むごとに水の音が遠退く

内臓や血管あるいは全細胞が
水を求めて皮膚の外側へ
這い出ようとするのを
皮膚が食い止め
黒い汗が滲む

咽喉が自身とは全く別の
独立した個体として
体内で
泣き叫び暴れ狂い
そして死んだ様に眠る

遂に座り込み
瞳を閉じると
水の香が匂う

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