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延藤 直也
2024年11月4日 08:07
鞄の中で雨に濡れた手帳みたくもう元には戻すことはできないような倦怠感が踵から肩甲骨まで覆い遅い歩の足跡は昨日より濃い満月が瞬いたほんの一瞬影が夜闇に消えて無言の呼び声は風に流れる主体的で受動的な街灯の点滅がいつもと同じで全く異なる道を照らし浅い呼気が排水溝へと最短距離で向かっていく
2024年11月3日 07:16
壁の向こう側のことは何ひとつわからないわからないことについて幾つか想像してみる沈殿する雲停止する風縮小する海想像とは異なることについてまた想像してみる浮遊する道開放する夜拡大する闇想像と想像の間について想像してみる沈んだりういたり眠ったり覚めたり小さくなったり大きくなったりする壁
2024年11月2日 07:19
どこまでももはや永遠に天国あるいは地獄のその先までも続く灰色の道を疲れても休むことなく歩きました歩き続けていると野良猫に遭います喉渇きを覚えます金木犀を香ります落ち葉を踏みます五円玉を拾います豪雨に降られます水溜りに嵌ります三日月を眺めます流れ星に祈りますとても綺麗な満月の夜強く打ちつける雨に降られました寂しく哀しかったのですが雨の冷たさにいつかの海を思
2024年11月1日 07:24
足跡が夜が訪れても沈むことなく夜に似合わぬ足音を立てて道のど真ん中に居座っている道端の街灯や排水溝落ち葉たちは慣れた様子で足跡を完全に無視している足跡の意味や足音の主張は毛糸のような柔らかい細雨に流れ静かな夜星の流れが聞こえている
2024年10月31日 08:24
夜風に舞う金木犀の香秋雨に濡れたアスファルト街灯に照らされた薄い影そのどれもが冷たく感じられそれらの冷たさが冷えた身体を温める
2024年10月30日 08:13
微生物のような目に見えない小さな問題や宇宙のような目に見えない大きな問題など色形様々の問題が柔らかい箱の中で重なり合い交じり合う議論でも金銭でも時間でさえ解決できない問題が雑草のように生え続けるほとんど永久的にあらゆる問題が複雑に絡み合い過去から現在、未来を歪める眠りたいのに眠れない夜もあれば眠らずに居なければならないのに眠ってしまう夜もある
2024年10月29日 08:06
左右非対称の満月が澱んだ街を下から照らしている凛然と佇む涼しさ清閑と流れる静けさ颯爽と駆け抜ける渇き暗い夜は機嫌や調子に左右されることなく昨日と今日、今日と明日を淡々と繋ぐ夜の暗さ、本来の暗さをまだ知らない
2024年10月28日 09:14
幅員の狭い路端に壁のように真っ直ぐ佇む金木犀を何気なく眺めて横を通り過ぎる砂糖を入れた珈琲をスプーンで混ぜるように沈んだ金木犀香を柔らかい秋風が対流させる押入れに積み重なった衣類ケースからトレーナーをそっと引っ張り出すように枯葉色の記憶を静かに思い出す
2024年10月27日 07:11
天井と床と壁、不完全に仕切られた寝室はとても暗い本を読むことも水を飲むことも夢を見ることもできないほど暗いがただ眠りに、就くことはできる冷たい隙間風と温い呼気が部屋の中心で出会い別れる昨日と今日、明日の境界線がぼやけて今日が割れるその破片を記憶に接着剤でくっ付ける
2024年10月26日 07:31
スパイスカレーの匂いバラエティ番組の音声窓辺に飾られたぬいぐるみ気怠い歩みが立ち並ぶ民家の温度を計る街道と民家の境界線は太く厚く冷たい平面的な風がほとんど一定の速さで吹く緩やかな坂道が深い呼吸を呼び戻す静かな足跡が死に近づくごとに薄まる影の重みを支える
2024年10月25日 08:47
何を見ただろうと、問えば扇風機の羽の埃と、答える何を聞いただろうと、問えば洗濯機が途中で止まった音何を思っただろうと、問えば来月の生活費について改革の前夜はいつも静かであるのに対して不変の街はいつも騒がしく必要以上に明るくそして冷たい何者かになった一握りの人たちは昨日のことを忘れて十年後のことを考えて今日を過ごす何者にもなれなかった沢山の人たちは十年前
2024年10月24日 07:52
色や形、意味の無い雲から大小様々な問題が受動的なアスファルトに降り注ぎ道中、問題の水溜りに嵌ってはじめて道を形作るでこぼこに気づいた風は重心を低くして喧騒の街を踵を擦って歩きその大きくない足音だけが狭く暗い空に妙に響いた冷め切った風呂のぬるま湯みたいな獲得も損失もない昼は何度目かの瞬きとともに終わり明るく色鮮やかな夜がはじまる眠れるだろうか眠れないだろうかそれは布団
2024年10月23日 09:08
詩を書いていた昨夜も雪が降る予報の明朝も眠りに就こうとする今この瞬間も問いは増え続け答えは減り続ける無色の風は朧げな月明かりに照らされ無形の雨は柔らかいアスファルトに落ちて無音の雲が乾いた夜空に響き無機質の魂が凪の海上に浮遊している未来の輪郭は永遠にぼやけ過去と現在の境界線は滲みほんの一瞬の荒波に呑まれる
2024年10月22日 08:04
緩やかに曲がった背骨重力に抗えない二重瞼前進する後ろ向きな踵もったりした徒労感とぼてっとした疲労感が両肩甲骨に根を生やしため息を栄養にして根だけをただ深く伸ばす幹も枝も葉も花もない根のみの植物は硬く冷たいまた太く尖っているさらに生命力が大きく脆い時々生える芽を摘もうとも何も変わらない過去も現在も未来さえも味のしなくなったガムみたいな気を紛らすためだけの乾