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CH.119 ゆっくり読みたい記事

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2021年4月の記事一覧

忘れられない言葉

忘れられない言葉

小春日和。
運動会の徒競走、わたしの苦手な種目だ。
順番が回ってきて、スタートラインに並ぶ。
観覧席からお兄ちゃんの「大丈夫!大丈夫!」「大丈夫だよ〜!」「大丈夫だって!」「大丈夫だから〜、心配するなって!」というエールが聞こえる。
わたしのたった一人の応援団。
この日のために買ってくれた運動靴に願いを込める。

運動会の数ヶ月前のこと。

お腹が空いてイライラしていたわたしは、お兄ちゃんに「運動

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【歌謡ノベルズ】『時の過ぎゆくままに』

【歌謡ノベルズ】『時の過ぎゆくままに』

あなたに言われて気がついた。こんなに長い時間が経っていたことさえ気が付かずにいたんだ。
あなたは泣いていた。
"生きてることさえ、イヤだ"って。
あなたはすっかり疲れてしまったんだね。
そんなあなたを部屋に残してきたまま、ひとり夜の町を彷徨い歩く。
ここは北国、町は真っ白。逃げてきたボクたちにはよく似合う。あんまり体が冷えるから、ちょっと一杯ひっかけようか。初めての町じゃよくわからない。どこでもい

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小説:セレナーデ【40088文字】

小説:セレナーデ【40088文字】

【小夜】

ゆるい日差しに、桜の淡い花びらが光る。まだ少し冷たい風が前髪を揺らして頬を撫でる。景色は何もかもが平和で、平凡で、平均的な春の日。ベンチに浅く腰掛けて、煙草を吸う。
爪の短い私の指に挟まる、長いメンソール。

煙草から直接立ち上る煙は青白く見えるのに、吐き出す煙はただの白に見えるのはなぜだろう。私の肺で、青色が濾過されたのだろうか。煙を深く吸い込みながら思う。私の肺に、置き去りにされ溜

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36歳がペヤングを初めて食べたのでレビューする

36歳がペヤングを初めて食べたのでレビューする

まじめに、地道に、清潔で美しくすこやかな毎日を目指して生きてきた36年間。
ペヤングを食べたことがない。

先日、初めてペヤングを食べた。その感想を書くnoteがこれである。
「それにしてはスクロールバー小さすぎないか」と思うかもしれないが、徹頭徹尾ペヤングの感想しか語っていないことをお断りしておく。

なぜ、食べたことがなかったのか「食べたことがない」に理由が必要かとも思うが、説明する。

私に

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