マガジンのカバー画像

99
運営しているクリエイター

#星

【詩】偽物

本物の星は手に入らないから
星空の絵を描いた

本物の月は手に入らないから
紙を切り抜いて作った

それでも足りなかったから
庭の木に電球を吊るして
光らせてみたりした

本物の君にはもう会えないから
君が好きだった歌を聴いている

【詩】表面

遠く光るその美しい星の表面は
猛毒のガスで覆われているらしい
お湯を沸かす音だけがはっきりと聞こえる
それ以外のことはどうでもいいみたいに
記憶を消して一話から
読み返したら何か変わるのかな
好きな人ばかりが死んで
嫌いな奴ばかりが生き残っている気がするだろう
誰も見ていなかったとしたらあなたはここで何をしますか
どんな願いでも叶うとしたらあなたは何を願うでしょうか

【詩】青い星の夏

あせらずゆっくりいこうよと
赤く光る星が言う
僕らはもう どろどろと
指先から溶けはじめているのに

はやくあっちへいこうよと
白く光る星が言う
僕らはもう がらがらと
足元から崩れ出しているのに

赤い星の表面温度は三千度
白い星の表面温度は一万度
だってさ

この生ぬるい青い星にも
もうすぐ夏が来る