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2020年7月の記事一覧

特許法128条 訂正審判 審決確定の効果

特許法128条 訂正審判 審決確定の効果

 訂正審決の確定時は、審決謄本の送達時です。

 訂正の効果は、遡及的に生じます。このため、ダブルパテントの場合は、片方を訂正することで、両方が適法に共存します。

・特許法128条

第百二十八条 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすべき旨の審決が確定したときは、その訂正後における明細書、特許請求の範囲又は図面により特許出願、出願公開、特許をすべき旨の査定又は審決及び特許権の設

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特許法127条 訂正審判の前提となる実施権者の承諾

 訂正審判による訂正が確定すると、基本的には、特許権の範囲は狭くなります。特許権の範囲が狭くなると、他人に市場を荒らされる可能性が上がります。このため、ライセンス料を支払っている専用実施権者等は、特許権の範囲が狭くなるのは嬉しくないはずです。このため、訂正審判の請求には、特許権の範囲が狭くなると困る実施権者の承諾を必要としています。具体的には、質権者、専用実施権者、職務発明による通常実施権者、特許

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不正競争防止法2条1項20号 品質等誤認惹起行為

 不正競争防止法は、競業秩序を維持するための法律です。この競業秩序は、不正競争防止法1条では、事業者間の公正な競争という文言で規定されています。

 競業秩序を維持するためには、会社間、事業者間で、各会社等が、商品等について正しい表示を行うことが必要です。逆に、商品の表示において誤認させる行為は、正しい表示をして取引を行う会社等から不当に顧客を奪い、公正な競争秩序を乱すことになります。

 具体例

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特許法126条 訂正審判

特許法126条 訂正審判

 訂正審判は、特許権(特許発明)の一部に無効理由がある場合、無効理由を自発的に取り除くことで、特許無効審判請求を防止するものです。このため、特許無効審判により特許権が「完全に」遡及消滅した後は、訂正審判の請求はできません。ただし、請求項1個でも特許権が残っている場合は、訂正審判を請求できます。

 訂正審判への参加はできない点、専用実施権者は訂正審判を請求できない点は押さえておきましょう。

 訂

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特許法125条の2,125条の3 延長登録無効審判

特許法125条の2,125条の3 延長登録無効審判

 延長登録無効審判は、特許権の延長登録された部分について「のみ」請求できます。つまり、延長登録無効審判の無効審決が確定しても、特許権が初めから無かったものと擬制されることはありません。

 延長登録無効審判の請求は、請求項ごとではなく、延長登録ごとに行います。複数の延長登録がなされている場合、審判請求された延長登録のみが対象となります。

 また、延長登録無効審判は、延長登録があると困る人(利害関

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特許法125条 特許無効審決確定の効果

特許法125条 特許無効審決確定の効果

 特許無効審判の無効審決が確定した場合には、特許権は無かったものと擬制されます。例外として、後発的無効理由によって無効審決が確定した場合は、後発的無効理由が生じたときまでさかのぼって無かったものと擬制されます。

・後発的無効理由が発生した場合とは、123条1項7号に規定された、「特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許

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特許法123条 特許無効審判

特許法123条 特許無効審判

1.概要

 特許無効審判は、特許権が間違って設定登録された後における、特許権を無効化するための制度です。同じような、特許権の見直しや、無効化の制度として特許異議申立(特許法113条)があります。

2.利害関係人

 特許無効審判を請求するには、利害関係人であることが必要です(123条2項)。ただし、冒認出願と共同出願違反を理由とする場合は、利害関係人のうち、特許を受ける権利を有する者に限って請

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商標法 信用ありと勘違いさせる 〇〇大学

商標法 信用ありと勘違いさせる 〇〇大学

 たまに「〇〇大学」という名前を目にします。

 早い話、情報商材の販売時に権威付けとして付される文字「〇〇大学」です。

 権威付けとして使われていますので、良い意味での信用は少ないと考えられます。
 しかし、グーグルで「〇〇大学 詐欺」で検索すると多数の情報が出てくると思いますので、悪い意味での信用はありそうです。

商標法 商標法の保護対象は「信用」

商標法 商標法の保護対象は「信用」

 別記事(商標法 商標としての使用)でも説明しましたが、商標法の保護対象は、目に見えない「業務上の信用」です。

 分かりにくいと思いますので、具体例を使って説明します。

 たまに「川崎」という苗字の方の自宅に、表札として、バイクの「Kawasaki」で使われているエンブレムが取り付けられているケースが有るようです。
バイク好きな人がこれを見ると、バイクのエンブレムを、自宅の表札として使っている

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特許法 発明の名称についての補正

特許法 発明の名称についての補正

 拒絶理由通知への対応で、審査官が拒絶の理由を発見できなかった許可請求項「だけ」で特許権を取得するケースも有るかと思います。

 例えば、明細書の発明の名称の記載が

【発明の名称】A装置、及び、A方法

 という内容だとします。ここで、A方法だけが許可請求項である場合、許可請求項「だけ」で特許権を取得すると、特許請求の範囲に記載されている発明の名称と、発明の名称に記載されている発明の名称が変わっ

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特許法121条 拒絶査定不服審判

特許法121条 拒絶査定不服審判

 さて、拒絶査定不服審判からは、短答式試験にもよく出題される分野であり、実務でも結構使う規定になります。

 出願人は、拒絶査定を受けた場合、①拒絶査定を受け入れるか、②拒絶査定を受け入れずに権利化を目指すかを選択することになります。

 拒絶査定不服審判(特許法121条)は、②拒絶査定を受け入れずに権利化を目指す場合の選択肢の一つです。拒絶査定不服審判を請求できる期間は、拒絶査定謄本送達日から3

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特許法120条の7、120条の8 決定の確定範囲等

特許法120条の7、120条の8 決定の確定範囲等

1.概要

 特許異議申立についての決定は、基本的に、特許異議申立ごとに確定します。
 ただし、請求項ごとに特許異議申立がなされた場合には、請求項ごとに確定します。このケースの例外は、一群の請求項ごとに訂正請求を行った場合です。この場合、一群の請求項ごとに確定します。
 特に一群の請求項ごとに訂正請求が行われた場合、請求項ごとに確定させると、請求項の間で、内容の不整合が起こる可能性があります。この

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特許法120条の6 決定の方式

特許法120条の6 決定の方式

 特許異議申立についての決定(維持決定、取消決定)は、文書をもって行われます。

 また、決定謄本が、特許権者と、特許異議申立人と、参加人と、参加申請が拒否された人とに送達されます。参加申請が拒否された人は、決定謄本の内容を確認して、どうするか検討してほしいという形です。
 決定謄本の「送付」ではなく、「送達」である点に注意してください。

・特許法120条の6

(決定の方式)
第百二十条の六 

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特許法120条の5 取消理由通知に対する訂正請求

特許法120条の5 取消理由通知に対する訂正請求

1.条文解説

 取消理由通知がなされた場合、特許権者は、所定の期間内に意見書提出、訂正請求ができます(特許法120条の5第2項)。何もできないと特許権者に不利すぎますし、別の見方をすると保護されるべき発明が保護されないという解釈になります。

 訂正請求では、最後の拒絶理由通知に対応する補正(特17条の2第5項2号)とは異なり、特許請求の範囲の減縮ができます(特17条の2第5項2号の限定的減縮で

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