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#ラクロス
「鳥かごのハイディ」第一話
プロローグ
ハイディー、エレノア。
八月のグランダッド・ブラフから見る、ミシシッピ川の渓谷と、青々と生い茂る木々の緑。その境界線の向こうには、手を伸ばせば届きそうなほどの真っ白くて大きな雲と、透き通った青空が見えるわ。
青と緑の境界線を自由に飛び回る野生の鷲が、今のわたしには眩しく見える。このシーズンの、グランダッド・ブラフ・パークって、こんなにも観光客で賑わってたかしら?
たった一年
「鳥かごのハイディ」第十二話
Smoke
(3)
翌日の空は薄暗く、ずっと曇天模様で、小窓の先にある外の光りからは完全に遮断されていた。
どのみち、この狭い箱にある小さな窓からじゃ大した景色なんて見えないけれど、光りの差し込む量が違うだけで、この鳥かごは独房のように重苦しく感じる。
いつもの看護師チェックの後に、毎日気分の落差を感じさせないアガサが大きな声でこう言うの。
「ハイディー! チャーリー」
彼女はいつも元
「鳥かごのハイディ」第十六話
Border
(2)
「チェック!」
扉が開く音と共に、看護師長のクレアの声が聞こえた。目を覚ましたわたしは、いまだにこの狭い鳥かごの中にいることを知り、大きなため息をつく。
いつの間にか真っ暗になっているこの部屋と、窓の向こう。すぐ傍には椅子に腰掛けたままで眠るアガサの姿があった。
「クレア……、今は何時なの?」
ベッドから訊ねると、クレアは腕時計の文字盤をペンライトで照らし、「午前二
「鳥かごのハイディ」第二十話
String
(3)
チャーリーがそれを望まないこともわかっていた。それでもママのベッドで泣き暮らすチャーリーを見ていたら、このまま家族の想い出の詰まったラクロスにいたら、いつまでたっても哀しみは癒えることはないだろうと思わせた。
だからわたしは、喪失の痛みからチャーリーを遠ざけるためにミルウォーキーの高校へと追い出したんだ。将来のことを考えれば、たとえ恨まれることになったとしても、学校に通
「鳥かごのハイディ」第二十一話
Towing
朝日が街を照らし、そこに暮らす人たちが疎らに出歩き始める頃、後からレッカー車に乗ってやって来たパパの同僚が、パパと同じランディのピックアップトラックを工場へと運ぶ段取りをしている。
「なんか混みいってたみたいだな。邪魔しちまって悪かったよ」
「いえ、それより本当にごめんなさい。わたしのせいで車どころか、旅の予定まで台無しにしてしまって」
知らせを受けてお店を出た道路の脇で、レッ