マガジンのカバー画像

「ホテルエデン」連載中

11
愛猫の「楓」を亡くし、泣き暮らす千里は暗闇のなか目覚めた。そこには黒髪の少女アケルと仮面の総支配人ケルビムがいた。そこはホテルエデンの東館。なぜそこにいるかもわからぬまま、ケルビ…
運営しているクリエイター

#料理

「ホテルエデン」第一話

「ホテルエデン」第一話

プロローグ
 白い光に目が眩む。この光は外からやってくるものなのか、内からやってくるものなのか……。破裂するほどの痛みに発する声は他人のものようにぼんやりと響く。
「まだですよ! まだいきまないで!」
 助産婦の手に汗が光り、私の顔を布のようなもので拭いている。
 そうだここは処置室……。白い処置室……。
 何度も訪れる無意識の狭間に、意識を失いかけるほどの激痛が私を呼び覚ます。
 今、ひとつの新

もっとみる
「ホテルエデン」第七話

「ホテルエデン」第七話

美しい変化
(6)

 時間はあっという間に過ぎていった。私たちが目を奪われていると、両の手に料理を盛った皿をいくつも乗せて仮面の男が戻ってくる。
「さぁさ、お食事に致しましょう」
 仮面の男はいくつもの皿をひとつずつ器用にテーブルに降ろすと、料理の名前を読み上げながら、大きな花びらを散らすように皿を美しく並べていった。
「前菜は、新鮮なマグロのタルタル、空豆のピュレ添え。空豆は野生の緑の味わい深

もっとみる
「ホテルエデン」第八話

「ホテルエデン」第八話

美しい変化
(7)

 大広間の奥、大きな木の植えられた左手に厨房への開かれた入口がある。中へ入っていくと厨房の中もなかなかの広さだった。
「竹輪かー。冷蔵庫かな? どこかしら?」
 厨房というからには、きっと業務用の大きな冷蔵庫があるはず。だが見当たらない。おかしいな、と思いながらさらに奥まで進みかけると、後ろから「おねえちゃん!」とアケルが呼んだ。
「どうしたの?」
「あった!」
 アケルが指

もっとみる