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【短編】『どんでん返し』

どんでん返し


 私は今夜、友人と食事に行く約束をしており、ある場所で待ち合わせをしていた。時間になっても友人は現れないため仕方なく、先に予約した料亭の個室で脚を崩してうたた寝でもしながら待つことにした。少しばかりすると、戸が開いた音がしたと思いすぐに目を開けると、依然戸は閉まっておりどうやら隣の部屋を予約していた男二人組が入って来たところだった。私は、暇を持て余してしまい、なにかすることがないかとコースメニューの書かれた和紙に目を通していると、隣から男二人組の会話が聞こえてきた。そこで、私はその会話を聞いて暇をつぶそうと閃いた。

「なあ、なにかおもしろいどんでん返しの作り話はないか?」

「そうだな、これはどうだろう。あるところに悪徳な金貸しがいた。実はその金貸しは他の会社から安い利子で金を借り入れては別のところに高い利子で金を貸していたのだ。すると、金を貸していた会社が次々と法人破産しては、金貸しは債権回収に失敗し泣き寝入りせざるを得ない事態となった。んで実は金貸しに金を貸していた大元の会社が子会社を複数設立しては小口で金貸しから金を借りていたのだ。そして、子会社が金貸しから借りたお金を大元の会社に密かに移転してからしばらくして法人破産をしたというカラクリだ。大元の金を貸した会社は金貸しからの利子に加えてさらに利益が増えて大層儲かった。という話なんだが。」

「なるほど、悪い金貸しがいると思ったら、それよりもはるかに悪いことを企む連中がいて世間からしっぺ返しをくらったっつうことか。」

「そういうことだ。おもしろいだろ?」

「ああ、皮肉が効いていてなかなかおもしろい。」

 私は、彼らは映画関係者だと特にこれといった考察もなく、自分の中で結論づけた。もしかすると脚本家同士で日中もこうして物語を思いついてはお互い共有しあっているのだろうと。

「どうだお前もなにか思いついたか?」

「そうだな。じゃあこんなのはどうだろうか?とある警察官はパトカーで街を俳諧していた。すると、反対車線から大きなブレーキ音とともに猛スピードで車がやってくるのを確認してすぐにUターンしてその車の後を尾けた。車は信号を無視して猛スピードで前を走る車を抜いていく。すると、一台が追い抜いた際の車体後部に巻き込まれ、一瞬にして横転した。バックミラーには燃え上がった車体が映り、間も無く大きな爆発音が聞こえた。パトカーは依然逃走車を追った。車は高速に入ったかと思うと、走行しているのが建設中の道路であることに気づき、逃走車とパトカーの二台のみとなった。パトカーは建設中の道路の先に行き止まりがあり、その先は大きなドロップオフがあるのを肉眼で確認した。逃走車はドロップオフ直前で急ブレーキをかけ横に傾きながら停車した。すぐに警察官はパトカーを出てフリーズと車内めがけて銃を向けた。すると間も無く、カットー!という大きな声が聞こえたと同時に群衆が車二台に向かってに押し寄せてきた。実は、なんとハリウッドのカーアクションシーンの撮影に間違って本物のパトカーが乱入してしまい、撮影クルーも最後までそれに気づかなかったのだった。どうだ。おもしろいか。」

「なるほど、そういうどんでん返しの方法もあるのか。とても勉強になった。」

 私は先ほどただの思いつきで彼らを映画関係者呼ばわりしたが、二人目の会話の内容からして、まさか本当に映画関係の人たちだとは思わず驚嘆した。すると、二人組は続けた。

「さあ、そろそろ薬が効いて彼は永久に眠りにつく頃だ。最悪の事態に備えて仕掛け場所としてここを予約したが、その必要もなくなったわけだし、美味しい日本料理が食べられそうでなによりだ。隣には気の毒だが我々は先に食事を始めてしまおう。」


最後まで読んでいただきありがとうございます!

今後もおもしろいストーリーを投稿していきますので、スキ・コメント・フォローなどを頂けますと、もっと夜更かししていきます✍️🦉



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