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短歌

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◆短歌◆詩◆春がまた来るなんてやだね

◆短歌◆詩◆春がまた来るなんてやだね

抑えるのは右手、切るのは左手、やっとあなたの利き手がわかる

窓枠の厚いセロファン蝋梅の花びらだった山羊座のマイメロ

目張りされ完璧であるはずだった密室春の気配は満ちて

犬になるための機構を内蔵し踏み外す予感を楽しんでいる

地下街のトイレの寒い電灯が照らす伝線そのままで行く





春がまた来るなんてやだね。
芽吹く季節は肌が痛いし
脳が光を感知しやすくて
なにもかもが眩しくて
よくな

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◆短歌◆せいなる

◆短歌◆せいなる

ミシン目に沿って切り離されていく君の破片をスノードームに

アドベントカレンダーをすべて開け米粒を詰め川に流すの

夢みたいな夢だな少し不安だな鏡の中に後ろ姿が

優秀な秘書が作ったボルシチにまみれたシャツの星型の染み

パーティーで残ったピラフを片付ける人間だけが話せる言語



秘書くん再登場です。
有能、優秀な秘書ってつまり自分の中の良く機能してる(と錯覚できている)部分であったりね。

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◆短歌◆夜の暇・夜の傷

◆短歌◆夜の暇・夜の傷

僕たちは指先で話すみゅーたんと・爪を塗るのは韻を踏むため

「寂しい」と何度も言った君だけどバイバイのあとふりかえらない

ベランダで飼ってる鬼が寒そうだ「寄せ鍋食うか」「いらない」だって

はんぺんの横にあなたの腕がある眠い時間のコンビニおでん

本当のことはひとつも答えない女が作るしょっぱい炒飯

やり方もわからないままやってみる動物たちの交尾のように

うつくしいたまごサンドに挟まれて恍惚の

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◆短歌◆九月にも生活はある

◆短歌◆九月にも生活はある



「事件です」と言ってしまって気がついたこれは事件だ事件だ事件だ

「빨리 보고 싶어요(ぱるりぽごしぽよ)」iPhoneあと1パー、天使じゃないから走るしかない

窓際で冷凍ピラフを食べている「叙述トリック」言えない探偵

私物用透明バッグにきみを入れ「3番です」と桃源郷へ

理想家の君が住んでるチョコレート色の屋根したドールハウス

正解がわかりませんとロボットに申告をする水責めされる

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◆短歌◆小説◆ロリィタ幽霊

◆短歌◆小説◆ロリィタ幽霊



BABY, THE STARS SHINE BRIGHTと呟きピンクの煙になるの

『それいぬ』はお守りだから持っていく黄泉比良坂歩きにくいな

もし来世何になれるか選べたらエミキュのOPの柄になりたい

幽霊になった貴方は淡色で前よりずっとモワティエ似合う

藍白のトーションレースに絡まって呼吸は止まる願いが叶う

仄暗いメゾンに佇むあのひとを押し花にした栞をはさむ

今生は花になるための

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#葬式に呼んでください

#葬式に呼んでください

「白よりも黒が似合うよ絶対黒だ」お前と買ったTシャツを干す

喪服とは言っても下着は自由でしょう「いちばんえっちでかわいいやつを」

霊感があるって話は本当だけど信じないなら確かめに来て

「友だち」という役名を最期まで演じてやるからなんか奢れよ

さいごまで僕はあなたの脇役ですが、最終回は大ゴマキメる

適当に入った中華料理屋の650円の唐揚げ黒酢ランチがお前との最後の晩餐になるなんて思

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◆短歌◆六月はあかるい呪い

◆短歌◆六月はあかるい呪い

推し全員生クリーム漬けの刑まつげの上にアラザン散らして

「要するに」「必要じゃない」「切り分けて」「棄てられるよう」「まずは頭を」

「痛い」「嫌」「気持ちいい」「欲しい」何でもいいインターネットじゃない言葉なら

君んちの双頭の犬に吠えられて返し忘れるどうぶつの森

教育の範囲内の暴力ですくすく育ったリーガルリリー

ムーミンのマグ百個くらいある君の家には花瓶が一個もなくて

ワレワレハ星喰い

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◆短歌◆七月はおばけがでるぞ

◆短歌◆七月はおばけがでるぞ

アンリ・シャルパンティエ好きなだけ食べていいよと明滅している天使

微睡みの中に降り立つ収集車小野Dみたいな声の「オーライ」

やらなくちゃいけないことをやらなくちゃ……とその前にログボ取らなきゃ

ベランダでおまえが歌うJェチ~ッじo™ウ蚊が入って来る膝を吸われる

郵便局行かなきゃだけどくそ眠い肉体溶けろ思念を飛ばせ

天候は晴れ晴れ晴れ晴れ晴れのち曇り夜になるまで発光できない

滔々と流れる

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◆短歌◆Shut Up and Dance

◆短歌◆Shut Up and Dance



少しだけふたがあいてて乾いてく制汗シートに似た夏だった

夜道には気をつけなさい楽しくて歌って跳ねて踊れちゃうから

怪談のストックひとつ増やそうか眠れる君の隣に座る

きらきらと元気が出てくる希死念慮スパンコールで飾った死神

すこしまえまではたしかに生きていたあさりの味噌汁もういないひと

今日もまた海にはいけない脳内の岩場に上がるピンクのらっこ



Netflixの『ブラックミラー

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