〜生贄論18〜「原爆パイロット
一つは、三島由紀夫が、小説『美しい星』の中で描いた、広島への「原爆投下直後」説です。これは、イーザリーに纏わる流説の中で、最も一般的なものです。イーザリーは、原爆投下直後、「離脱する軍用機のコクピットの中から、立ち昇るキノコ雲を目撃した」というものです。三島は作品の中で、「あの原爆投下者の発狂の原因」は、「痒みほどの苦痛もなかったこと」だったと述べています。罰せられてしかるべき罪を犯したはずなのに、ただ飴玉を口の中で転がすだけの平穏な時間が、何食わぬ顔で流れ続ける。その絶対的