〜生贄論15〜「原爆パイロット⑥」

イーザリーは、哲学者アンデルスとの書簡の中で、自らを裏切り者ユダに重ね合わせています。「僕の手に入れる金が、それ以外の目的のために支払われたものであるとすれば、その金は、キリストを売ったイスカリオテのユダが受け取った三〇枚の銀貨とおなじような意味しか持たないことになるだろう」と記しています。文中の"それ"とは、「僕がすべての人に対して負っている責任にふさわしい形で利用されること」を指します。つまり、少なくともこの書簡において彼は、自らが犯してしまった罪と向き合うことを自覚しています。確かに、ナチスのアイヒマンとの対照を彼に自覚させ、苦悩する良心として焚き付けた原因の一端が、アンデルスや、当時の世論の一部にあったのかも知れません。ただ、当時の世論で圧倒的であった、"勝利の貢献者"というコースから、いかなる理由からか彼は次第に外れていきます。それが、文面通り、彼自身の意志によるものだったのか、あるいはそれ以外の理由によるものだったのかは今は答えは出ません。

クロード•イーザリー(エザリー)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?