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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 5月24日~5月29日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。
この週は本当にプレッシャーと体力との戦いでした。それでも、たくさんのご縁とたくさんの仲間とまた会えたのでよしとします。
仕事日記+読書記録となります。お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

5月24日

昨日ラウンジにて集中して明日までの作業を終えたため、土曜日のスラム、日曜日の文学フリマに備えてオフをとっていました。
朝に学生時代の友人二人と話をしたり、メッセージしたりしていました。ありがたい。
午後は趣味の作り置きに精を出すなど。オフの日は家族との食事をゆっくりと手間をどう省くかを焦点に手がけ(自分が美味しいものを食べたいがためです、笑)るようにしています。ずぼらめしですが、手を抜くことも大事だったりする。美味しければOKなのです。
リーディングリハの前に衣装選び、とっても楽しかった! ワンピースより甘辛コーデがいいかなと思い、緑のかわいらしいものを。小物屋さんでお弁当バッグやヘアターバンなども買ってきてしまいました。

・小山健『生理ちゃん』KADOKAWA

今週はいわゆる「小説・詩集・エッセイ」に限らず、色々な「読書」を楽しもうと思います。
この一冊は多分初めて取り上げますかね、漫画です。
女性が抱えている身体的・なおかつとてもプライベートなこととして、「生理」というものはあります。また、同じように男性も身体的な悩みがあること。生理、という一つの事象に対して、時代も人それぞれも、悩みは様々です。しかし、毎月のつらさ、というものは変わらない。
「男っていいよね、毎月元気でがんばれるし」と、わたしもつらい時によく思ったりしますが、それと同じくらい、男性も男性で悩んでいることだってあって。高校生の男女を一週間交換した話数が忘れられません。
今はだいぶ女性も男性も身体的な悩みを打ち明けられるようになったかなと思うのですが、まだまだ開拓していかなければいけないこともあったり、「男女」という性別ばかりではなく、もっと多数の「性」というものは存在するので、ひとくくりにはできません。
ただ、多数の女性が、毎月悩んでいるという事実だけは知っておいてほしいなと思います。生理、月経という事象を擬人化したキャラクターが面白いなと思いました。確かにここまでしないと、つらさというものは「目には見えない」。そして、女性同士でもつらさは「わかりあえない」ものだったり。
作者本人や過去の作品とは切り離して読みました。この作品はこの作品として、わたしは味わおうと思います。

・AYUMI HANAMATSU『CLOSE』

花松あゆみさんは、わたしの恩師のほしおさなえ先生のつながりで知ったイラストレーターさんです。一人東京めぐりをした際に立ち寄ったアンジェ・ラヴィサント神田店さん・昔伺ったこともある懐かしの雑貨店FALLさんなどで、花松さんの個展を鑑賞していました。この画集は彼女の版画集になっています。
タイトルの通り、閉められる間際の扉を描いた作品が多いのですが、これを「いずれ開かれるもの」として、「扉」というものを描いていることがいいなと思いました。今の時代の暗喩的なものさえ感じます。
インクの色はミッドナイトブルーに近く、夜空に近い気がします。
扉を閉めた時、部屋のなかでは何が起こっているのかは誰にもわかりませんし、その扉を開けた時も未知数の世界がひろがっています。
先日舞台『メリー・ポピンズ』を鑑賞しましたが、その中でも子供部屋の人形たちが歌う「テンパー・テンパー」という曲が、怖くもありそして彼らの世界が「部屋」であることも思い出しました。そういうこともひっくるめて、プラネタリウムの版画の白鳥座の目は、この画集を閉じた後も忘れられない。すごく考えさせられます。

・谷川俊太郎『谷川俊太郎詩選集 1』集英社文庫

谷川俊太郎さんは今ももちろん活動されている詩人さんで、詩人のなかでも彼を目指している、あるいは、彼の詩に触れて書き始めた、という詩人も多いような気がします。教科書に載っているからという理由でも、たくさんの人に愛されてきた詩群です。
わたしはもちろんどの年代の谷川さんの詩集も好きですが、やっぱり詩人の第一詩集・第二詩集とその詩人の原点のようなものを知りたくて、なぜか全巻を買わずに、この一冊だけを何度も何度も読んでいました。
10代の頃のことばとの向き合い方の軽やかさは、それが「知識を得て書いたものではない」という所にも目を見開きます。
書かなくちゃ生きていけないから書いた、「さみしさ」という寄る辺なさを書かずにはいられなかった。
どうやらわたしは、最近そういうものを求めているような気さえ、するのです。

・青木風香『ぎゃるお』七月堂

またもインカレポエトリから新しい才能が……! と驚くと同時に、なぜだか中毒性を持つことばたち。
それは同時に、語り手と同じような大学生活がわたしにもかつてあって、そして「女性」というものを常に考えていたような気がする。
でも、いつしか笑い飛ばせる日が来ると、信じながらみんな生きていく。
適齢期、なんてことばは古臭いのですが、それでも染みついてしまっている文化、というものは確かにあります。嫌な意味で「空気」というか。
だからわたしたちは、軽やかに男たちを、女たちを「お前」と呼びたい。それは、わたしたちが持つ世の中への挑戦状だと思うのです。
ちょっと息抜きに、今までの悩みを笑い飛ばしたいときに読む、お守りのような詩集です。

・ヘミングウェイ 福田恆存訳『老人と海』新潮文庫

勇気の物語です。かっこいいと思う。
みなさん一度は課題図書などで読んでみたり買ってみたりした本だと思うのだけど、やっぱり何度も読んでいると最後の一文が身にしみますね……。
どこまで自分と戦い抜けるかが勇気だと思っていて、それができないから人はいつまでも孤独なのだと思います。
その「自分との戦い」というものこそ孤独であるとも思うのだけど、それを乗り越えられた瞬間に、何かわかるものもあるような気がします。

・タケイ・リエ 『The inland sea』archaeopteryx

両親からある日メッセージが届き、しまなみ海道を電動アシスト付き自転車で走破してきたよ! とのこと。いいなあと思いつつ、両親がにこやかで安心したことも。
瀬戸内海にはいつか行きたいという思い入れがあります。
この詩編は、瀬戸内芸術祭で島々を訪れながら書いた詩集。その島ごとに書かれている詩編が違います。
語り手は多分に書き手なのだけど、どこかに第三者の目というか、冷静に事実としてアートを鑑賞している姿が浮かび、そこに「ことば」は介入するけれど、感情とはまた別なのかなと思ったりしました。
タケイさんとも、この詩集に携わった詩誌Aaのみなさまも、榎本さんもカニエさんも、もう何年あっていないのでしょうか。お会いしたいです。

5月25日

今日は定期検診ののち、バスと電車を乗り継いで実家に遊びに行っていました。実家の母も水泳より戻り、愛犬と過ごしていました。愛犬はわたしのペットセラピーのため迎えていましたが、両親も活動的ですし、もう寿命かしら……なんてちょっぴり心配していました。もうおじいちゃんだけど、元気そうでよかったです。コーヒーを飲みながら、小学校の同窓会があることや、積もり積もった仕事の話をしました。両親はわたしが詩人として活動してくれてうれしがっているみたいです。

久しぶりに訪れたふるさとだったので、散策して定期検診でいただいたお薬をウェブで予約したりなど。もう十代からかかっていることだから、とわたし自身は慣れています。
先生に今の生活習慣をほめられてうれしい気分でした。

もうそろそろ文学フリマシーズンとスラムシーズン、また来週のポエトリーブックジャム、前橋ポエフェスとなかなかせわしないのですが、昨日のように、今の家族と共にリモートで仕事をしながら過ごす日も貴重なものでした。
スラムでもパフォーマンスしますし、文学フリマでは文芸創作ほしのたね『文芸創作ほしのたね21号』lotto140『はまぐりの夢4』、稀人舎『ハルハトラム4号』双子のライオン堂出版『しししし4』のブースの本に詩やブックレビュー、エッセイが掲載されています。
前橋ポエフェスでは友人と旅行のように行くため、オープンマイクで参加させていただきます。
スラム・ポエフェスともに「カード」のようなテキストは揃えました(一応第三詩集と第四詩集におさめるつもりです)ので、新作書下ろしです。お楽しみに。
今日は実家から帰ってきて、夕ご飯をはやめに食べて寝ました。深夜から早朝にかけてのポエトリースラムワールドカップが楽しみ!

変わっていく街並みも、変わらない人のあたたかさも、全部大好きだった。

5月26日

深夜から早朝にかけて、ポエトリースラムワールドカップを視聴していました。コオリさん、無事セミファイナル出場おめでとうございます!

わたしもがんばるぞ、と意気込み、ラウンジに出勤前に新作13編。そういえばもうそろそろ第七詩集くらいの草稿の量はできあがったはずですが、こういうものは一か月くらい時間をかけるのが理想です。一応一つにまとめ、少し手放すことに。

昨日はたくさん歩きました。ふるさとも半年ぶりだったので、とても楽しかったです。

アウトプットとして今週・来週とある予定のタイムテーブルや持ち物・集合場所や心配なことをすべて紙のノート(作っておいて重宝しました)に書き出しました。わりあいちっぽけな悩みだったように思います。ラウンジにいると誰かしらフリーランサーがいるので落ち着きます。

今日のランチです。お土産のタコ飯、ありがとう~!
ここはインスタなどで発信もOKなシェアオフィスなので、ゆっくりできます。

今日は無理をせず、軽作業でしまいにしました。第五詩集や第六詩集の推敲をするなど。第七詩集の草稿として固まったものはもう少し考えます。
わたしはいつだって詩集やことばのことしか考えていないので……体力と気力は使い果たしてしまいますが、それだけ食べているし、筋肉もつけているので大丈夫です。友人とまた連句を巻くことになり、うれしい思いです。

夕方、第一詩集に携わっていただいた詩人の先生の朗読を視聴しました。テキストをゆっくりとかみしめながら読まれており、「ことば」というものに対して、先生の姿勢がうかがえる朗読でした。少しそれを聞いて、わたしの中でやはり「穏やかに凪ぐ」ということ、「しがらみから解放される」ということが非常に重要になってくると確信を持ちました。
スラムとは詩人の自分自身との戦い、とはこういうことを言うのか、と思いました。ゆっくりとテキストを読む夜でした。

・ナカムラケンタ『生きるように働く』ミシマ社

ずーっと、悩んでた時期、ありました。なんでわたし、こんなことしてるんだろう、どうやったら文章のプロになれるんだろう、「書くこと」を生きることに、働くことにできるんだろう、って。
いちばんそのことを多くの方に教えてもらったのは、幸運にも大学生の時でした。その大学に行くことをすすめてくれたのは高校の先生たちだったし、わたしはそこに行って、初めて「世間の常識」と「表現者の生き方」というものに触れていました。あの時ってみんな何者でもなかったのだけど、限りない可能性だけは無限大にあったんですよね。今も彼女たちとは、表現者の方もそうなりたいと今もずっと走り続けている子も、色々なやり方でゆるくつながっています。面白い子たちでした。親鳥みたいな子だっていました。
でもわたし、そういうところから今、独り立ちできているんだなあって。
何かを一つ、職業として「個人で持つ」って、ある意味会社に勤めているよりつらいこともあります。それでも、比較的自由な具合は高い。でも、その自分の「種」をどう水やりさせていくか、干からびたり根腐れしたりしないかが非常に重要だったりしていると思っています。
わたしの名前も植物です。「早苗」は植物のようにのびのびと、たおやかに育っていけ、そうやって植物を育てるのがうまい父から命名されました。
この著書の方も「仕事」というものをそういうふうに考えているらしくて、時折煮詰まったときに読みたくなる本です。

5月27日

今日は朝から雨。ダボついていたコーヒー豆を初めて挽いてみました。今日から仲間とゆっくりと半歌仙を巻きます。連衆は顔見知りなので、とても心が安らかです。

大雨になってきたので、バスでラウンジに行くことはあきらめました。お弁当も作ったのですが、今日は静かに、静かに、自分の心や体に向き合い、リーディングの最終リハをすることにしました。

・ほしおさなえ『三ノ池植物園標本室 上 眠る草原 下 睡蓮の椅子』ちくま文庫

何かに追われ、時折自分の「一番大切にしているもの」がなんだったかを見失ってしまう。そういう時って、少し苦しくもありますよね。
わたしはこの四月後半からの日々で、せわしなさと楽しさ、どちらも感じ取っていましたが、急によい環境や習慣の変化ができて、何かに、誰かに似ている、と思ったらこの本の主人公、大島風里さんでした。
過労と勤務に疲れ、会社をやめて刺繍を少しずつ生業にしていこうとする風里。そんな彼女は、新たな「植物園でのバイト」というもので、色々な人々と出会い、心の穴を埋めていきます。
その物語と同時に並行するようにして、書家のお父さまを持つ少女、葉とその周辺の出来事が、風里の物語と重なり合っていく、連なっていく。
この本は『恩寵』という小説に加筆されたものですが、『恩寵』はラッキーなことに以前読むことができました。でも、ほしお先生のなかではとても重要にしたかった一冊ではなかったのかな、とも思います。

5月28日

昨日、朗読のサークルのグループラインに思い切ってメッセージを流してみたり、実家のみんなに知らせたりしました。あたたかいメッセージ、本当にありがたかったです。
昨日は朝から雨でとても憂鬱でしたが、今日は遠足、と考えて、スラムに初挑戦してきました。東京大会は渋谷ヴィオレッタというバーが会場です。わくわくしながら、体力が自分の出場まで残るように気をつけていました。

当日は渋谷ヴィオレッタにて、たくさんのご縁ができました!
憧れ続けたそにっくなーすさんとは一緒にカレーを頼んで腹ごしらえしましたし、YouTubeで見てハマった猫道さんの司会も素晴らしかったし。
DJ.K.T.Rさんは今度の上野のポエトリーブックジャムでも活躍されるみたい。Zoomでしか知り合っていなかったさやかさん、奈美さん、多嘉喜さん、遥多さん。
このご縁を結んでくれた、遠藤ヒツジさん。(実はわたしの初めてのオープンマイク、ワタリウムでご一緒していたそうです!)
初めてお会いしたよ~かんさん、神保茂さん、伊藤竣泰さん、iidabiさん、踊る美容師さん(藤尾さん)、渋谷のポエラジリスナーのひろせじゅんさん、そして三年ぶりのポエケット以来の三木悠莉さん!
名古屋会場とも中継のため、長丁場にはなりましたがよい経験でした。
優勝した多嘉喜さんにはぜひパリに行ってほしいと思いますし、そこまでの熱戦をわたしも体感できてとてもうれしかったです。
決勝戦はみんな魂がこもっていて、圧巻でした。なんと三人とも東京大会という……。
こういう場所に来ると、「詩で分かり合う」ということが本当に起きるんだなと思います。足を運んでくださったお客さまも、ありがとうございました!
わたしの両親や友人たちがリアルタイムで応援してくれたため、わたしはわたしらしく、のびのびと読めてよい経験でした。
名古屋会場のみなさまもお疲れさまでした! 色々と自由な「パフォーマンス」として魅せる詩というものに非常に勉強になりました。

わたしはいつか、リーディング詩人とテキスト詩人の垣根を越えて、どちらも活躍できる場所を作っていきたい。これは30代の夢かな(笑)
今はポエトリーリーディングの時代が来ていると思っていて、その中で分かれていた詩人の境界線を越えるものを作っていきたいと思いました。

東京Cグループ、熱戦でした……とても学ばせていただいた。
目印。この地下に会場がありました。
控え室にて。渋谷は暑かったので、ペットボトルが重宝しました!
ヴィオレッタさんのクランベリージュースを飲みながら、本番まで色々な人と語りました。
さっぱりとした解放感と、また新たに始まるぞ、と見上げた渋谷はきらきらしていました。

5月29日

今日は文学フリマ東京!
正直、体力と気力が戻っていなかったので行けるか心配だったのだけど、なんとか午後に行ってたどり着けました。
ほしのたねもよく売れていたみたい。よかった。売り子をしてくれた後輩の横井けいさん、みけのたまこさん、お疲れさまでした! ラムネ、仕事中にも食べられるようにセレクトしたのだけど、気に入ってくれたかな……。

他にも双子のライオン堂さんで竹田信弥さんにお会いしたり(ライオン撮ったり)稀人舎さんでyuuさんにハルハトラムの売れ行きを聞いたり、3年ぶりに広瀬大志さんや平川綾真智さん、清水らくはさんに会えたり、カニエ・ナハさんや宮尾節子さんから詩集や寄稿した雑誌の感想をその場でいただいたりしました。小縞山いうさんとははじめましてでした!
中家菜津子さんや犬尾春陽さん、崩れる本棚で以前ご一緒させていたウサギノヴィッチさん。
学生時代からの友人の長月凜さん、恩師のほしおさなえ先生(長月さんともほしお先生とも長い付き合いですが、わたしの痩せすぎはなおしたいので食べます!)、lotto140のナヲコさん、星々事務局長の江口穣さん。

本当にみんな、元気でよかった。
文学フリマ東京の戦利品は、後日【詩人の読書記録日記】特別版として、書影と共にまとめられたらと思います。わたしは帰って夕ご飯を食べた後、ぐっすりと眠ってしまいました。。起きたのは日付が変わった深夜というね。。
今日はみなさんお疲れさまでした!

ライオン堂さんのマスコット君。竹田さんもお疲れさまでした!
わお、絶景! これが見たいから来ちゃうんだよな。
モノレールにて。


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