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狂い昔話

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狂った昔話です
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記事一覧

さるかに合戦(ほんもの)

さるかに合戦(ほんもの)

 むかしむかしあるところに、カッパが500匹住んでいました。

 それとは別のところに、柿の親子がおりました。親子はとても仲が良く、ご近所では「あいつらデキてんじゃね?」と噂されるほどでした。

 そんなある日、子柿が散歩をしていると、反対車線から大きな桃が転がってきました。

「こんにちマ」

「こんにちモ」

 両者は挨拶を交わし、唾を吐き合ってすれ違いました。子柿の口の中には桃の味が、桃のお

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【狂い昔話】誕生日に悲惨な目に遭う毟束湯臭紫

【狂い昔話】誕生日に悲惨な目に遭う毟束湯臭紫

 むかしむかしあるところに、毟束 湯臭紫という男がいた。

 彼は今日60歳になった。誕生日などこの歳になると嬉しくもなんともないどころか、なんと今日は健康診断に行かなければならない。

 彼は玄関を突き破り、勢いよく三輪車に乗り重い足取りで保健所に向かった。

 保健所に到着すると、三輪車置き場に三輪車侍がいた。湯臭紫は三輪車侍に三輪車を託すと、侍の頭をナデナデしたあと保健所の門を叩いた。

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【狂い昔話】桃太郎「鬼を治療しに鬼ヶ島へ行ってきます」

【狂い昔話】桃太郎「鬼を治療しに鬼ヶ島へ行ってきます」

「おじいさん、おばあさん、鬼を治療しに鬼ヶ島へ行ってきます!」

 桃太郎は船にさっき鬼から奪った財宝、雉、猿、犬を積み込み、最後に自分も乗りました。

「気をつけて行ってくるんじゃぞ〜」

 おじいさんが手を振っています。

「お気張りやっしゃ〜」

 おばあさんはお尻を振っています。おばあさんのお尻から出た青い珊瑚礁がびちゃびちゃと音を立てて地面に降り注ぎます。

 海へ出た桃太郎は「船の上っ

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【狂い昔話】霊のいる街

【狂い昔話】霊のいる街

 むかしむかしの私のお話。肉薬を食パン1077枚に挟み、4回に分けて食べることから私の1日は始まる。残った1076枚はどうすればいいのだろうか、そんなことを思いつつも、いつも私は迷った挙句全て自転車に装飾してデコチャリにしてしまう。

 賞は3回取ったので、今日はゆっくり過ごしてみよう。あらら、右手の指が3本多い。酔っ払っているからだろうか。私は望んだことは喜ぶが、これは望んだことなので喜ぶ。でも

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【狂い昔話・常】ムキ坊はムキムキ歩いた

【狂い昔話・常】ムキ坊はムキムキ歩いた

 今回はあまり狂っていないので、日常の『常』を入れました。

 むかしむかしあるところに、ムキ坊という少年がおったそうな。ムキ坊はそれはそれはムキムキであった。

 ムキ坊はムキムキ歩いていた。隣には筋骨隆々のおばあちゃん。そう、ムキ坊はおばあちゃん子なのである。(おばあちゃん子というと「おばあちゃん子ちゃん」という女の子の名前みたいだが、そうではない。おばあちゃんのことが大好きでいつもくっついて

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【狂い昔話】もんもんたろう

【狂い昔話】もんもんたろう

 むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがおりました。
 おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。

 おばあさんがジジイのションベンみたいなちょろこい流れの川で、生命の絞りかすのような薄汚い垢の塊2つが今朝まで着ていたボロ切れをじゃぶじゃぶと洗浄していると、川上から〈どんぶらこ、どんぶらこ〉と全身刺青だらけの大男が流れてきました。

「まあ、大きな人!」

 驚いた

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【狂い昔話】跳びションの翁、大海を知らず

 むかしむかしあるところに、豪雨のごとく尿を放ち、山中を跳び回る1人のジジイがおりました。
 人々は彼を〈跳びションの翁〉と呼び、たいそう恐れていたといいます。

 1日にばら撒く尿の量は推定5000リットル。並の人間とは比べるまでもありません。

 そんな翁が今日、初めて敗北というものを知りました。

「ションベンしながら跳び回ってるくらいで満足してちゃいけねぇよ。俺ァこの海を作ったんだ。ゆくゆ

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【狂い昔話】ロケットロケット令嬢の休日

 ロケットロケット令嬢の朝はツボの蓋を取ることから始まる。

 ツボの中で変動している株価を、蓋を取って3人の家来に見せるのだ。
 すると3人は驚いたような顔で「うおー!」と叫ぶ。

 それを30分間行った後、株価を見せていた犬人間、猿人間、雉きじを連れて家を出る。大学へ行くのだ。

 4人が歯を磨きながら歩いていると、前方から三色団子のような男が歩いてきて言った。

「あの、すみません! あなた

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【狂い昔話】川上からでっかい脳みそが流れてきたぞ!

【狂い昔話】川上からでっかい脳みそが流れてきたぞ!

 むかしむかしあるところに、ジジイとおばあさんが住んでいました。ジジイは歩きスマホで隣町のハンバーグ屋さんへ、おばあさんは川へ尻を冷やしに行きました。

 おばあさんが川にお尻をつけて冷やしていると、川上からヌルゥァン、ヌルゥァン、と大きな脳みそが流れて来ました。それを見たおばあさんが呟きました。

「ぬ」

 おばあさんは川上から流れてくる脳みそを見ながら自分の好きな平仮名を呟くことで、日々のス

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