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学校から一斉授業を無くすと?(2022/9/28)

一斉授業の限界については
いろいろな形で述べられています。

私自身も教壇に立つ前から
一斉授業には限界があると思っていました。

その当時はその限界を
授業の工夫でもって乗り越えようとしていました。

でも難しいものでした。

授業を行う中で
次第に「一斉授業ってどうなんだろう?」
と思うようになりました。

そう思って約10年。
(長い・・・(笑))

国の方でも議論がなされるようになったようで
一斉授業の見直しが行われることに
少し期待を寄せています。


今回紹介する学校はこちらです。

アメリカ合衆国カリフォルニア州のリンジーという町にある
「Lindsay Unified School District」です。

School District(学区)という名前の通り
1つの学校ではなく
地域として教育改革に力を入れている町のようです。

この学区には8つの学校が含まれ
その学校それぞれで
伝統的な授業スタイルから抜け出した方法がとられています。

それがどのような方法なのかを見ていきましょう。

Several years ago, Lindsay Unified School District (LUSD) transformed its system into one that can and should become the model for K-12 education of the future. Lindsay focused on the needs of preparing an ever-increasing diverse population of students for future success in college and the 21st century workforce. They set to meet the challenge by shifting from a traditional time-based system, in which students are expected to conform to a one-size-fits-all pace, to a performance-based model, where learners progress only when they have demonstrated mastery. In order to better serve all students, they raised the bar and improved teaching and learning for all students, increasing equity and ensuring excellence.

https://media.carnegie.org/filer_public/a2/a1/a2a11fed-4353-4639-a496-4920e70f0ee6/inacol-whats_possible_with_personalized_learning.pdf

この記事によると
「増加の一途をたどる多様な生徒・児童たちに
 大学と21世紀の労働市場での将来的な成功のために
 準備をさせる必要性」
を感じて改革に踏み切ったようです。

生徒・児童を中心に置いて考えられているのは
素晴らしいと思います。

そして
「伝統的な(学期・学年などの)時間ベースのシステムから
 パフォーマンスベースの手法への転換」
を行いました。

ちなみに伝統的なシステムを
「児童・生徒たちが画一的なペースに従うことを求められるもの」

パフォーマンスベースの手法を
「学習者が(ある内容への)熟達を示した時にだけ
(次の段階へ)進むもの」

としています。

つまり
児童・生徒によって学習内容の習熟度に差があるにも関わらず
time-basedでは学年を上げなくてはならない

それでは
児童・生徒たちの「将来的な成功」に
教育が寄与していないことになる。

それならば
学年という伝統的なものを考え直し
習熟によって児童・生徒を育てていく
のはどうか。

このように考えた結果
Lindsay Unified School Districtは全ての授業を
パフォーマンスベースで行うとしたのです。


もう少し具体的になります。

In the LUSD, more than 1,000 students (called “Learners”) at Lindsay High School have a great deal of voice and choice in meeting their learning goals. Their days are split between self-directed learning time and teacher-led instruction (Lindsay teachers are called “Learning Facilitators”). During self-directed learning, Learners follow playlists that are custom created for them based on their learning needs. They are given multiple opportunities throughout the day and week to work on these and are able to choose what to work on from the learning activities aligned to each objective. Even during Facilitator-led instruction, Learners are often able to choose from a variety of assignments as the Facilitators spend most of their time on small group and individual instruction.

https://media.carnegie.org/filer_public/a2/a1/a2a11fed-4353-4639-a496-4920e70f0ee6/inacol-whats_possible_with_personalized_learning.pdf

まず興味深いのが
students(児童・生徒)をLearners(学習者)
teachers(先生)をLearning Facilitators(学習を促進する人)

と呼んでいることです。

これも伝統的なスタイルから
抜け出す1つのポイントなのでしょう。

そしてその学習者たちには
「それぞれの学習目標を達成するための考えや選択肢」
がたくさん用意されています。

時間割のようなものはなく
「自主学習の時間」と「Learning Facilitator主導の指導時間」
に分けられています。

学習者たちは
「それぞれの学習必要性に基づいて作られたプレイリスト」
というものを使いながら学習を進めます。

そのプレイリストに取り組む機会が複数与えられ
「それぞれの学習目標に沿った学習活動から何に取り組むかを選ぶ」
ことができます。

あれ、授業は(笑)?
といった感じですね。

さらに「Learning Facilitator主導の指導時間」では
Facilitatorは授業をするのではなく
「小グループと個人に指示することにほとんどの時間を割く」
とあります。

つまりアドバイスをするということですね。

そのアドバイスなどを基にして
学習者たちは課題を自分で選ぶことができるようです。


するとどうなるか。

The flexibility for the Learner that these choices provide creates a powerful learning experience. Learners who are behind are able to catch up, and those who are ready to move forward can. All Learners are more active participants in their learning, leading to greater ownership and engagement. Lindsay High’s Learners are not only able to attain mastery, but also gain life skills that will help them be successful beyond school.

https://media.carnegie.org/filer_public/a2/a1/a2a11fed-4353-4639-a496-4920e70f0ee6/inacol-whats_possible_with_personalized_learning.pdf

「強力な学習経験」
「学校を超えて成功に至る生き方のスキル」
享受することができます。

それはやはり
伝統的なtime-basedのスタイルを廃止して
performance-basedの手法を取り入れたことで
「遅れている学習者は追いつくことができ
 さらに学習を進められるものは進められる」

という環境ができているからだと思います。

つまり
全て自分のペースで進めることができるということです。

Learning Facilitators at LUSD are focused on building lifelong learners. Within academic content areas, Facilitators are constantly seeking to provide Learners choice and voice in self-directed learning. In addition to academic content areas, LUSD provides instruction for lifelong learning skills. Lindsay Facilitators also modify Learners’ learning so it can be mastery based, allowing Learners more choice over the pace of their learning.

https://media.carnegie.org/filer_public/a2/a1/a2a11fed-4353-4639-a496-4920e70f0ee6/inacol-whats_possible_with_personalized_learning.pdf

そしてLearning Facilitatorsが目指すのは
「生涯にわたって学習する学習者を作ること」
になります。

そのため
彼らが授業を行うのではなく
instructionを与えながら
生涯にわたる学習スキルを身につけさせ
必要があれば修正(modify)していきます。

そういったLearning Facilitatorsの態度が
「学習のペースに関して
 多くの選択を行うことを可能にしている」

ということです。


でもこれって大変そうですよね?

この教育スタイルを可能にしているのは
どんなものなのでしょうか?

Learner choice in content and pacing provides a unique challenge to LUSD Facilitators, as they have to cater to each individual Learner’s learning needs. Facilitators use an online system called Empower to analyze Learner data to make sure each student is caught up, and the system shows a map of each Learner’s personalized learning pathway. The system also provides resource choices to Learners in their academic content area. Facilitators help meet Learners’ needs by providing feedback, small groupings, one-on-one instruction, remediation, direct instruction, and other instructional practices.

https://media.carnegie.org/filer_public/a2/a1/a2a11fed-4353-4639-a496-4920e70f0ee6/inacol-whats_possible_with_personalized_learning.pdf

「Learning Facilitatorsは
 それぞれの生徒が学習に取り組んでいるかを確かめる
 学習者のデータを分析するために
 Empowerと呼ばれるオンラインシステムを使う」

とあります。

やはりテクノロジーを使う方が
教育システムの幅も拡がります。

このEmpowerのデータを基に
Learning Facilitatorsは学習者にフィードバックを与えたり
指導を行ったりするようです。

実際の運用の様子は
以下の動画で見ることができます。


今回はアメリカ合衆国・カリフォルニア州の
「Lindsay Unified School District」を紹介しました。

私が最も感心を覚えたことは
伝統的な学校に異議を唱え
新しい形の学校を模索する中で
あくまでもその変化の中心は
「児童・生徒」であったことです。

そしてその充実ぶりは
以下の数字を見ると分かると思います。

ひょっとするとこの学校が
伝統的な学校から新しい学校への
1つのプロトタイプになるのではと思います。

いや、なって欲しいです。

ねぎ

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