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大木野なずな
2021年8月24日 09:11
わたしは、ご飯が大好きだ。 作るのも、食べるのも、大好きだ。 書店でレシピ本を眺めてる時の気持ちはふわふわで、スーパーで買い物をしている時はわくわくで、台所で包丁を握っている際にはどきどきする。 味付けの瞬間は、ちちんぷいぷいの時間だ。 魔法の杖を振って、自分の脳味噌を取り出す作業を夢中にやる。 塩、こしょう、醤油、みりん、酒、めんつゆ……。 濃い目の味付け、薄目の味付け。
2021年8月21日 17:20
*この短編は、わたしの実体験を元に書きました。 登場人物の名前はわたしを含め仮名を使っていますが、書かれているエピソード自体はノンフィクションです。「へえ、そんなこともあるんだ」くらいのノリで読んでいただけたら幸いです。… … … 忘れられない、友達がいます。 ……いえ、「友達」と呼ぶのはおかしいのかもしれません。 わたしたちは、そういう関係をちゃんと築けていなかったのかもしれま
2021年8月5日 11:34
「もちろん、まるごと理解しろだなんて言わないけれど、この気持ちが分かんないってあなたの感性相当変だと思うよ」 男は困惑した。というより、……目の前で何が起こっているのか、理解できていなかった。 男の視線の先には、黒い絹糸がふわりと舞っている。「本当に、信じられない!」 その絹糸の束は、ひとりの女のものだった。 肩まで丁寧に伸ばされたその絹糸たち……もとい黒髪たちが、女の声音に合わ
2021年8月5日 08:27
わたしがたばこを吸い始めたのは、小学校六年生の頃だった。 全てのきっかけは、――おばあちゃんが儚くなったこと。 儚くなったおばあちゃんは、わたしたちの住むアパートからいなくなってしまった。 その寂しさを紛らわす為に、わたしはたばこを吸うようになった。 いつも吸っているたばこの銘柄は、これ。 「花たばこ」。 淡いピンクの星型の花弁の筒状花。 吸い方は簡単。 茎の長い所をこう