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東雲そら
2021年3月29日 23:23
文字に恋をしたあなたが綴る綺麗な文字に強く惹かれた言葉に恋をしたあなたが口にする柔らかなそれに癒された感性に恋をしたあなたが切り取る世界は新しさに富んでいたあなたに恋をしたあなたに話を聞いてもらってあなたの声を聴いていると不思議辛いことや涙を促す不安も忘却の彼方へ飛ぶみたい
2021年3月19日 18:31
想いを風と光に乗せ春の白昼に詩を綴る光は屈折するもの水が入ったグラスに着地した誤って器に入った水が袖に飛びかかった今は僅かな水滴のみ器に残って光は直線に進むもの矢のように前を突き抜ける渇きはどこへやら濡れた衣服は乾いた過去と決別するよう梢越しに陽を見つめて光は虹のようなもの星彩に青光りまで色彩豊か忘れかけていた七色の表情が反射したその美しさに改めて気付いて
2021年3月17日 18:44
「君らしくいてね」風光る午後あなたがくれた言葉ありふれたそれも君からだと意味を帯びる挫けそうなときつまづきそうなとき真夜中眠れないとき先が見えなくて不安が喉に詰まっても記憶の欠片を拾い上げてその言葉を馴染ませるたったそれだけで光芒が視界に映るように立ち上がる勇気が湧く気付けば四季は何度も巡る香りをゆらゆら移ろわせて今の世界に君は不在でも眼を閉じて耳
2021年3月14日 19:16
既定通り春は訪れて君が不在の世界でも柔らかな風がそよぐ髪と戯れて頬を掠める最後の言の葉変わらない面持ちと声の高さで君からの「ありがとう」刻々と針は動き2人の思い出はクリスタル色に染まる既定通り春は訪れて君が不在の世界でも木漏れ日は揺蕩うその円形の眩さに記憶の君を重ねる既定通り春が訪れるその前に君は世界から去っていったその事実がガラス色の心に響いて
2021年3月9日 21:21
「僕の心臓が止まったら、気球葬してちょうだい」従兄弟の君は普段と変わらない口そぶりで告げる。夕暮れ、陽は傾いて影は伸びる。「なんで気球なの?」「気球なら、物理的に星に近づくから。僕は死後、お星様になれるかもしれない。」血が繋がっているのに時折突拍子もないことを口にする、不思議な人。「大きな病を抱えていないのに、どうして死に耽るの?」「保険だよ。自分が死んだ後、空に還るのか、違う
2021年3月7日 21:41
窓から眺める桃色がひらひら踊った。病室のベッドで足を伸ばす私はそっと手を差し出して窓越しに春を掴む。窮屈な日々が色褪せないのは、一年に一度、君に会えるから。年々、恰幅の良い出で立ちで私を驚かせる。舞う桜との真反対ではドアを開ける音。君がこの小宇宙に入ってきた。今年もまた、一段と背丈が高くなったね。「だって育ち盛りだから。」と切り返す、淡々とした君の言葉選びは嫌いじゃない。「桜が綺麗。」