夏秋(なつあき)

新聞社の片隅で記者をしています。20代半ば。映画とラジオと読書と韓国ドラマが好き。

夏秋(なつあき)

新聞社の片隅で記者をしています。20代半ば。映画とラジオと読書と韓国ドラマが好き。

最近の記事

運命の人

27歳、独身、恋人なし、結婚願望はアリ。 SNSを開けば、高校や大学の同級生が次々に「結婚しました」「プロポーズされました」「新婚旅行最高だった」などと報告した投稿ばかり。うらやましいと思いつつ、いちいち傷ついたり落ち込んだりすることは、もうなくなった。でも、いつも思うのは、この友人はお相手を運命の人だと思ったのだろうか、という点だ。 女子たるもの、シンデレラや眠れる森の美女の童話で育ったので、心のどこかで白馬の王子様の登場を期待している。きっと運命的な出会いがあって、そ

    • ジムに集いしヨガの猛者たち

       たまにスポーツジムに行く。できれば真剣かつ定期的に通って健康的な生活を送りたいのだが、やれ二日酔いだのやれ風邪気味だの、自分でそれっぽい言い訳を作っては、なんとなく足が遠のかせてしまう。それでもなるべく…と何とか勇気とやる気を絞りに絞って、平均して週2回くらいは足を運ぶようにしている。まあでも運動した分だけ暴飲暴食するので、一向に痩せない。  ジムに行ったとて、苦しい筋トレや激しいランニングは苦手だ。そこで、「溶岩ヨガ」なるレッスンに参加している。ざっくり言うと、岩盤浴状

      • スーパー銭湯の漫画

         昔から漫画を読むのが好きだった。お小遣いを貯めては好きな漫画の単行本を買いあさっていた。  今も紙で漫画を読むことは好きだ。  でも仕事柄引っ越しが多く、実家に一切の私物を置くことを許されていないので、転勤の度に漫画数百冊を本棚から出して、段ボールに詰めて、引っ越し屋さんに申し訳ないと思いながら運んでもらって、また段ボールから出して、1冊1冊本棚に詰めて…を繰り返していると、だんだん新たな単行本を買う意欲が失せてきて、厳選するようになった。  長編で止め時がわからないもの

        • アルゴリズムの動画広告

           ユーチューブの広告は、アルゴリズムだかなんだかで、その人にぴったりだと思われるものを表示してくれるらしい。なんともありがた迷惑な話だ。  そもそもこの広告は、動画の前や最中に流れたり流れなかったり。5秒くらい見たら飛ばせたり飛ばせなかったり。ちょっと鬱陶しいと思う人がほとんどだろうが、無料でこの世にあふれているいろんな動画を観ることができるならありがたいと思い、有料プランには入らずに淡々と広告を見てから、本編を再生している。  一度、有料プランに入ろうかと検討したことがあ

          映画館でスマホを見る人は、なんなの

           ちょっとしたことが気になってしまう。  1度気になると、気になって気になって気になって、もう全然集中できなくなって、何も手に着かなくなってしまう。神経質と言われればそうなのだが、もう本当に、自分でも参ってしまう。  例えば、きょう、ちょっとノートに日記でも書こうと思って、駅の中にあるドトールに入った。スマホの充電が切れかけていたので、コンセントの使えるカウンター席に座って作業を始めたが、すぐに横並びの隣に、30代くらいの女性が座ってきた。他にもカウンター席はまばらに空いて

          映画館でスマホを見る人は、なんなの

          人ではない同居人

           社会人3年目の冬のボーナスで、ロボット掃除機を買った。  3万円くらいで、その界隈からしたらさほど性能が高いわけではない。  それでも私は、このロボット掃除機をえらく気に入って、一生を添い遂げる覚悟でいる。  某メーカーの黒い円形の「彼」の名前は、「ふっかちゃん」。埼玉県深谷市の深谷ねぎの形をしたゆるキャラと同じ名前だが、関係性は全くない。そのときにフカヒレを食べたい気分だったので、適当に名付けた。  ふっかちゃんは普段、コンセントがつながれた四角い小さな機械にぴったり

          人ではない同居人

          死に顔

           少し前だが、祖父が死んだ。  肉親を失うということが私にとっては初めての経験で、特に私は臨終に立ち会えなかったので、「祖父が死んだ」と聞かされても数日間は実感がわかずに、いまひとつよく分からなかった。もちろん悲しかったし1人で泣いたが、人が死んだ事実を受け入れるという事実自体が、よく分かっていなかったように思う。  5日後に通夜があった。葬儀場に行くと、祭壇の前に台があり、その上に白い布団が敷かれ、祖父が横たわっていた。その遺体を見て、やっと、祖父は死んだという事実が形

          自分で自分のご機嫌を取る

           生きていくことは、案外大変でつらい。  そう人に打ち明けると「深く考えすぎじゃない?」「もっと気楽に生きたら良いのに」とアドバイスされる。  別に私も、好きで考え込んだり悩んだりしているわけではない。つらいときは「頑張れわたし!」となるべく自分で自分を励ますし、状況が好転するように努力はする。でもそれはやっぱり苦しいし、自分の力だけではどうすることもできない理不尽な状況にも遭う。そんなときは他人をうらやましいと思ったり、私をこんな状況に突き落とした当の本人がのうのうと生き

          自分で自分のご機嫌を取る

          虎の威を借るおばさん

           社会人になりたての頃、縁もゆかりもない地方の中核市で働いていたことがある。  知っている人もいないし、土地勘は全くないし、おいしいご飯屋さんもわからない。仕事も初めてのこと尽くし。会う人は全員「初めまして」だし、毎日が新鮮と言えば聞こえはいいが、緊張と不安の毎日だった。  それでも私はその街を少しずつ好きになり、道を覚えて、好きなご飯屋さんが何軒かできて、安売りをやっているスーパーも覚えた。  仕事で会った人も、街中で飲んでいるときに会った人も、基本的には良い人ばかりで

          虎の威を借るおばさん

          コロナになったら集中力がなくなった

           正月早々に新型コロナウイルスに感染したので、とにかく暇だった。  最も、普段から暇で暇で暇を持て余し、基本的に家に引きこもっているから、10日間自宅から一歩も外出しないなど、余裕だ。  スポーツジムの大浴場に行けないことを除いては、自分の生活が大きく変わったわけでもない。  ただ困ったのが、著しく集中力が低下したため、何も頑張れなくなったことだ。  もともと、意味もないネットサーフィンやSNS巡回、ウェブ漫画の試し読みは大得意だ。  真面目な人には信じてもらえないと思

          コロナになったら集中力がなくなった

          イケメン後輩君のまさかの一言

           学生時代、あまり真面目に部活動やサークル活動をしてこなかったので、後輩を持ったことがなかった。  自分が後輩でいる分には、先輩の話をよく聞いて、適度に忠実でいて、頼り、甘え、先輩のアドバイスを実践すれば良かった。だが自分が先輩になったときに、何をどうしたらいいのかさっぱり分からず、お手上げだった。  私が初めて後輩を持ったのは、社会人2年目の終わりだった。  G君という1つ下の男子が私の部署にやって来た。G君はとんでもないイケメンだった。    初めて後輩を持った私は浮足

          イケメン後輩君のまさかの一言

          お正月に1人だっていいじゃない

           もう1月が終わる。年始以降、ありえない速度で過ぎ去っていった。  今年のお正月のことは、つい先日の出来事のように思い出す。  年越しは仕事だったため会社で過ごし、年始に実家に帰省しようとしたら実家の家族がコロナに感染したことが判明。正月と言えば、帰省のほかには箱根駅伝ととんねるずのスポーツを観るくらいしかないので、思い切って1人暮らしの家に引きこもることを決めた。  実家に帰らなかった上に、近所に住む友人もみんな帰省していたり家族で過ごしていたり、暇そうな人はいない。

          お正月に1人だっていいじゃない

          「映画好き」って言ってもいいですか?

           映画を観るのが好きだ。  休みの日は家でネットフリックスで観るのが楽しみだし、映画館に足を運ぶし、ニッチな作品を上映する単館にもお世話になることもある。  気に入った作品があればパンフレットを購入してじっくり眺めるし、観た映画はスマホアプリで記録をつけるし、日記に感想を書く。好きなセリフはメモする。インターネットの考察サイトを巡回したり、SNSで同じ映画を観た人の感想を覗くこともある。  でも、それだけなのだ。  「あの監督の撮り方は〇〇だ」「今作はあの脚本家は趣向を

          「映画好き」って言ってもいいですか?

          目標は立てたことすら忘れてしまう

           新年に立てた目標を達成できたことが、27年間で1度もない。  と言うより、新年に立てた目標など1月が終わるころにはすっかり存在を忘れて、大晦日に振り返るなんてこともできない。  でも日記をごそごそ漁ると、割と毎年目標を立てているのだ。  というか、月の変わり目にも目標を立てていることさえある。  でも未だかつて、ほとんど達成したことがない。紙に書いても忘れるし、家の壁に貼っても気付いたときにはなくなっているし(達成できていない自分に嫌気が差して、掃除のときに捨ててしまう

          目標は立てたことすら忘れてしまう

          あかの他人の一言がずっと心に引っ掛かる

           街中ですれ違った人、電車で前に立っていた人、喫茶店で隣に座った人。  たまたまそこにいた場所と時間が重なっただけのあかの他人が言ったひとこと。  それが忘れられなくて、ふとしたときに思い出すことがある。 「つくねに柚子の皮を入れるとおいしいんだよね」  これはある日、立ち飲み屋で1人で飲んでいたら、隣の隣の隣くらいにいた20代カップルのうち、カノジョの方がカレシに説明していた。彼らは焼酎お湯割りを飲みながら漬物を口に運んでいた。カレシは「へえ」と興味なさそうに相槌を打つと

          あかの他人の一言がずっと心に引っ掛かる

          善い別れ方と悪い別れ方

           この前、元カレと飲んだ。  彼とは新型コロナウイルスが流行り始めた頃に付き合い、1回目のワクチンを打つくらいに別れた。交際期間は約1年半で、私のこれまでの恋愛の中では長くも短くもない。  これまでにも数人と交際してきたが、別れてからもたまに連絡をとるのは彼だけだ。  彼とは良い別れ方をして、彼以外の人とはあまり良い別れ方ができなかった。  基本的には、人と人とは良い別れ方をしたい。  会社の人だったら仕事で一緒に働くかもしれないし、友達だったらほかの友達との兼ね合いもあ

          善い別れ方と悪い別れ方