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善い別れ方と悪い別れ方

 この前、元カレと飲んだ。
 彼とは新型コロナウイルスが流行り始めた頃に付き合い、1回目のワクチンを打つくらいに別れた。交際期間は約1年半で、私のこれまでの恋愛の中では長くも短くもない。

 これまでにも数人と交際してきたが、別れてからもたまに連絡をとるのは彼だけだ。
 彼とは良い別れ方をして、彼以外の人とはあまり良い別れ方ができなかった。

 基本的には、人と人とは良い別れ方をしたい。
 会社の人だったら仕事で一緒に働くかもしれないし、友達だったらほかの友達との兼ね合いもある。
 今から書くことはあくまで一般論で、相手がDVをするタイプだったりとんでもないクズだったら話は別だ。

 悪い別れ方から思い出す。
 価値観が違うから、生理的に無理だから、他に好きな人ができたから、喧嘩が絶えなかったから。
 別れの理由はいくつかあるが、別れることがほぼ決まった最終的な話し合いの際に、相手の嫌いなところや無理だと思ったことを互いに言い合ったり、相手のことを罵ったり声を上げたり、怒りの方面に感情を爆発させたりすると、大体その後は音信不通になる。
 「最後だから言いたいことを言い合おう。未来への参考にするために」と今まで言えなかった思いをぶつけあうと、仮にそれまでに楽しい思い出の蓄積があったとしても、後から思い出すのは負の印象ばかりになってしまう。

 自分が相手に言ったこと。
 「浮気した」「喋り方がかっこつけすぎ」「自分のことしか考えてない」「都合が悪くなるとすぐに拗ねる」「男性として見られない」「いつも私のことばかり優先する」「イライラすると物を投げてくる」「優柔不断」「金にだらしない」。

 自分が相手に言われたこと。「ブスだから整形しろ」「だらしないから友達に会わせたくない」「化粧や洋服に興味を持て」「何かあるとすぐ拗ねてへそを曲げる」。

 これらの言葉は、本当に今後に生かせるだろうか。
 相手から言われた都合の悪いことは、事実であり的を得ている場合が多い。
 呪縛のように脳内にこびりついて、人生がうまくいっているときでもそうでないときでも、ふとした瞬間に思い出して、どんよりした気持ちになる。
 その人と付き合っていたときのことを思い出しても「でも最後にあんな嫌なこと言われたから、やっぱり嫌な奴だ」と思ってしまう。

 少なからず良いところがあるから付き合ったのに、良いところを全く思い出せない。

 人間は、自分の短所というものは、意外と人に言われなくても自分で知っているものだと思う。それに目を向けることは大切だが、他人からの指摘でそれと向き合うよりも、自分に素直になって、自分の意志で向き合わなければ、克服することはできない。

 良い別れ方とは。
 別れの理由はあるにせよ、最後は今までの楽しかった思い出を話し、本や家電やペットなど2人の共有物があれば話し合って公平に分配し、感謝を告げる。
 大事なのは、相手を決して罵らないこと。「きれいごとでまとめてるだけ」と思うかもしれないが、後から思い返したときに、その方が人生をより豊かにしてくれる。

 その人を思い出したときに、悪いところより先に良いところが思い浮かぶなら、その別れ方はまずまずな別れ方なのだと思う。
 お別れはさみしいと思えるような別れ方をしたい。

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