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映画館でスマホを見る人は、なんなの

 ちょっとしたことが気になってしまう。
 1度気になると、気になって気になって気になって、もう全然集中できなくなって、何も手に着かなくなってしまう。神経質と言われればそうなのだが、もう本当に、自分でも参ってしまう。

 例えば、きょう、ちょっとノートに日記でも書こうと思って、駅の中にあるドトールに入った。スマホの充電が切れかけていたので、コンセントの使えるカウンター席に座って作業を始めたが、すぐに横並びの隣に、30代くらいの女性が座ってきた。他にもカウンター席はまばらに空いているのによりによっても、だ。
 そのとき私はその日観た映画の感想を箇条書きでぐしゃぐしゃ書いていた。勢いよくペンを走らせていたというのもあるが、彼女は私のノートをちらりと覗き込んできた。で、私はなんだか見られていることで気が散って、イライラしてしまい、そのあとは彼女から見えないようになるべく背を向けてこっそり書いた。さっき観た映画の内容を思い出しながら、余韻に浸って集中して書きたいのにと思いつつ、もやもやした。そのうち耐えられなくなって、コンセントのない別のカウンター席に移動した。

 さて、仕切り直しだ。次に選んだカウンター席では両隣も正面もいなかったので、他人の目線を気にすることなく、思う存分、考えていることをノートに記していた。そのときだった。
 「ガシャン!!!」。
 食器をぞんざいに扱った音がしたので、びくっとして顔を上げると、ななめ正面に座ったおじいさんが、エスプレッソのカップを雑に皿に置いたようだった。そんなに大きな音を立てて置かなくても…と思って見ていると、そのおじいさんはまたエスプレッソを口に運び、「ガシャン!!」と盛大に音を立ててカップを戻した。
 勘弁してほしい。そんな風に置いたらカップが痛がるじゃないの。
 近くに座っていた女子大生や、読書をしていた別のおじいさんも驚いて、目を丸くしてそちらを見ていた。
 おじいさんはタバコを吸いに行き、戻ってきたときも「ドスン!」と椅子に腰かけたり、大きなため息をついたりしていた。エスプレッソは量が少ないし、明らかにもう飲み終わってるんだから帰ってくれと思いつつ、私は自分の作業をしながら彼がいつ立ち去ってくれるのかが気になって仕方がなかった。

 そういえば、その前に行った単館の映画館でも気になることがあった。
 そこはいつもマイナーな作品や昔の作品を上映しており、金曜日のサービスデーにそこに行くのがひそかな楽しみだった。この日はホロコーストを題材にした、重めの作品を上映していた。
 約150人座れる規模に対し、平日の午後ということもあり、客は私を含めて10人もいなかった。
 で、集中して悠々と見ていた。
 ところが、これまたななめ前のスーツ姿のおじさんが、こそこそとスマートフォンを見ているのである。
 一応、下の方でいじってはいたが、後ろのこちらからは丸見えである。
 スクリーンに集中したいのに、余計な光が視界の左端でちらつく。
 1度気になりだすと、もうこれはどうしようもない。淡々とした映画なのでおじさんは飽きてしまったのかもしれないが、マナーとしてだめでしょと思いつつ、注意する勇気もなく、モヤモヤしたまま映画が終わった。おじさんはエンドロール中は堂々とスマホをいじり、結局エンドロールの途中で帰ってしまった。私はエンドロールも余韻を含めて楽しみたいので、本気で腹を立ててしまった。

 ほかにも、隣の部屋のテレビ音とか、会社の先輩の大げさなくしゃみとか、別に大して気にしなければ良いものが、本当に気になってしまい、集中できなくなる。
 どうしたら寛容になれるのだろう、私のこの偏屈で神経質な性格を直さなければと思いつつ、せめて私は他者の集中力を削ぐような行為だけは絶対にしないようにしようと思う、きょうこの頃だ。

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