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コロナになったら集中力がなくなった

 正月早々に新型コロナウイルスに感染したので、とにかく暇だった。

 最も、普段から暇で暇で暇を持て余し、基本的に家に引きこもっているから、10日間自宅から一歩も外出しないなど、余裕だ。
 スポーツジムの大浴場に行けないことを除いては、自分の生活が大きく変わったわけでもない。

 ただ困ったのが、著しく集中力が低下したため、何も頑張れなくなったことだ。

 もともと、意味もないネットサーフィンやSNS巡回、ウェブ漫画の試し読みは大得意だ。
 真面目な人には信じてもらえないと思うが、朝から晩まで布団にくるまってスマホをいじることだってできる。
 現に、そうして過ぎ去っていった休日の数は、これまでの人生で数えきれないほどある。
 ユーチューブは次から次へと関連動画を観られるし、これまでに何度も観た動画をまた繰り返し観ることも。まとめサイトのガールズチャンネルの半信半疑の情報に首を突っ込み、SNSで会ったこともないインフルエンサーの投稿を漁って「ほ~、キラキラした毎日だなあ」と感心するだけで、気付いたら日付が変わっている。
 「きょうも1日無駄にしてしまった」と思いながら、次の日もまた同じことを繰り返す。

 とは言え、映画や読書も好きなため、それにも時間を割く。面白い映画に出会うと興奮するし、気になる本には没頭する。

 新型コロナに感染して自宅療養が確定したときも、「熱が下がったら映画三昧しよう!」と意気込んでいた。幸いなことに熱は数日で下がり、のどの痛みと鼻水もマシにはなった。
 だが、とにかく集中力がないのだ。
 ネットサーフィンも映画も読書も、普段はいくらでも続けられることが、全く続かなくなってしまった。
 これを読んでいる人は私が何を言っているのか分からないと思うが、私だって分からなくて困惑した。

 ネットフリックスで公開されたばかりのミステリー映画「ナイブズ・アウト~グラス・オニオン~」も、ストーリーは巧妙だし、タイトルどおり玉ねぎの皮を慎重に剝がしながら真実に迫っていく展開で先が気になるのに、気付くと「すべらない話の、澤部の個室ビデオの話は何度聞いても面白いなあ」「あの上司のせいで人生台無しだ」などと、全く関係ないことを考えてしまっている。
 はっ!…気付いたときには話が進みすぎていて、訳が分からない。
 あれ、この人なんで死んだんだっけ?こんな伏線あったっけ?と、困惑する。
 仕方がないので巻き戻してまた観始めるも、集中力がないのですぐに余計なことを考えてしまう。
 話は面白くて続きが気になるのに、一気に見られないことに、私は落ち込んで苦しんだ。結局、この2時間20分の傑作を観るのに、3日間もかかってしまった。
 
 さらにショックだったのは、最強最高に面白くていつどんなときでも笑顔になれる大好きな「バックトゥーザフューチャー」(1作目)を観るのにも5日間もかかってしまったのだ。あり得ない。意味が分からない。
 計測の結果、どんなに頑張っても20分間しか連続して観ることができなかった。

 症状が治れば集中力は戻るだろう。集中力を持続させる薬があればぜひ飲みたい、のどから手が出るほどほしい。
 そう思いながら、なんと自宅療養をやり過ごした。

 幸いなことに、コロナから回復したら集中力は戻った。社会復帰初日に出社すると、同僚たちから「暇だからゲームいっぱいできたでしょ」「映画たくさん観た?」と話しかけられたが、そのどれにも曖昧に笑ってごまかすことしかできなかった。
 そもそも久しぶりに人と話したので、自然に会話するのに集中力を使い切ってしまって、うまいこと返せなかった。リハビリはまだ続く。

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