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ジムに集いしヨガの猛者たち


 たまにスポーツジムに行く。できれば真剣かつ定期的に通って健康的な生活を送りたいのだが、やれ二日酔いだのやれ風邪気味だの、自分でそれっぽい言い訳を作っては、なんとなく足が遠のかせてしまう。それでもなるべく…と何とか勇気とやる気を絞りに絞って、平均して週2回くらいは足を運ぶようにしている。まあでも運動した分だけ暴飲暴食するので、一向に痩せない。

 ジムに行ったとて、苦しい筋トレや激しいランニングは苦手だ。そこで、「溶岩ヨガ」なるレッスンに参加している。ざっくり言うと、岩盤浴状態の場所でヨガをする、ホットヨガだ。これもなかなかきついポーズを取るレッスンもあるが、なるべく負担が少なくて軽めのものを選んで参加している。ほぼ寝ころんだままの「リラクゼーションヨガ」とか、座ってマッサージをする「リンパヨガ」とか、そんな感じ。

 じんわり汗をかきながらゆっくり体を動かすと、確かに気持ちが良い。先生は「自分のペースで」「自分の呼吸に集中して」と、やさしい声で語りかけてくれる。

 でも私は、ある人たちのことが気になってしまう。そう、「猛者」の方々だ。

 猛者の方々は、基本的に毎日ヨガに来ていらっしゃる。それも、1日に2つも3つもレッスンをこなす。
 彼女たちは、体にお肉が全くついていませんよね?と思わず尋ねたくなるくらい、骨と皮だけでガリガリのガリガリ。頬はこけて、手と足は棒のように真っすぐで細く、脚と脚の隙間もがっつり隙間が空いている。タンクトップから出る肩は鋭く角ばっていて、体の厚みもペラペラに薄く、鎖骨はくっきりと浮き出て、腰骨の位置は高く、いつも背筋をぴんと張っている。
体幹も尋常じゃない。私や、他のダイエット目的で来たマダムとかが、ひいひい言いながらとっているポーズを1つの呼吸の乱れもなくこなし、私たちが「もう無理だ」と思って手を抜いていても、先生の指示に従って己を追い込み、どんどん負荷をかけるポーズをこなしていく。その姿はさながら修行僧で、脱落していく私たちに目をくれることもなく、教室の最前列中央で堂々と自分の世界に浸っている。

 たまに、彼女たちは何のためにここまで自分を追い込んでヨガを極めているのか、聞きたくなる。でも独自の世界観を持ち、真剣にヨガ道を極める彼女たちを見ると、生半可にゆるゆる来ている私など住む世界が違うと、恐れおののいてしまう。

 ヨガの先生は「自分のペースで」「自分の呼吸で」と言ってくれる。その度に私は自分のヨガに集中しようと思って、えっちらおっちらポーズを取るのだが、好奇心が勝ってしまい、気付くと猛者たちを尊敬のまなざしで見てしまう。あわよくば「いつから始めたんですか」「どうして毎日いらしてるんですか」「なんで極め始めたんですか」とか、聞いてみたい欲求に駆られる。

 でもやっぱり、猛者と私は住む世界が違う。もちろん怠惰な私は猛者になれることもなく、ゆるゆると足を運ぶ。己に厳しい猛者たちのことを、心から尊敬している。

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