奈良正哉(鳥飼総合法律事務所弁護士)

元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みず…

奈良正哉(鳥飼総合法律事務所弁護士)

元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みずほ不動産販売(株)専務取締役。 現 日弁連信託センター委員、(株)タムロン社外監査役、理想科学工業(株)社外監査役、(株)熊谷組社外取締役。

記事一覧

女性役員比率

 12月決算の東証プライム上場企業の内、女性役員比率が2030年度政府目標の30%を上回っている企業は全体の9%にとどまる(5月2日日経)。  女性役員を短期間…

ゴールデンウィーク中の学校

 ゴールデンウィーク中の土曜日と平日も学校は営業?しているようだ。お客さんである子どもが来るから対面サービス業をする先生も出勤する。対して、祝日の間の平日は全て…

介入か?それでどうする?

 為替は160円まで買われて、154円まで急落した。為替介入がうわさされている。  ゴールデンウイーク明けに相場の景色が変わっていた、というのは相場関係者が多く…

資産運用教育

 みずほは社員の年金制度をDC(社員が運用責任を負う)に一本化する。同時に資産運用教育も充実させる(4月26日日経)。大手金融機関でさえ社員の資産運用の知識が不足…

EVは解なのか

 テスラは大苦戦している。EV全体も失速している。EVが順調にシェアを伸ばしていけば、テスラと中国BYDの2強になるだろうとの予測があった。どちらも外れ、EV界は中国BYD…

物言う社外取締役

 機関投資家からの要請で、社外取締役として面談・意見交換を行った。  これまで、社外取締役といえば、大所高所たる安全地帯にいて、ときたまご高説を垂れるという位置…

内部通報こそ切り札

 内部通報の活用があまり進んでおらず、通報者の30%程度が通報したことを後悔しているとの調査結果がある(4月20日日経)。  上級管理職が不正を働くと、その発見…

紅麹の影響はどこまで

 紅麹が問題となった小林製薬は、再発防止策を取締役会で定期に話し合うことにしたそうだ(4月16日日経)。よくある「・・・委員会」の設置と同類の「みそぎ」の一つだ…

地方金融機関の受難は続く

 相続を期に、地方に住む親から都会に住む子供世代に預金が移動している(4月14日日経参照)。金利が付き始めた最近の傾向ではなく、多死社会になり大相続時代になった…

廃業・倒産も悪いことばかりじゃない

 ゼロゼロ融資の麻酔も切れ始めて、2023年度、廃業・休業は5万件を数え、倒産も9千件を超えた。対して、M&Aの件数は8百件弱だ(3月31日、4月9日日経)。スム…

中国人の中国脱出

 中国からの脱出は外資だけではない。中国人も大挙して脱出している。メキシコ経由アメリカへの不法中国移民はかねてから報道されている。もちろん日本にも来ていて、在日…

ようこそマイクロソフト?

 TSMCに続いてマイクロソフトも日本に巨額投資をする。報道は総じて歓迎ムードだ。もちろん日本の技術者の能力、市場としての日本の魅力などを評価してのことだろう。  …

中途採用43%

 2024年度の採用計画では、中途採用は43%と5割に迫っている(4月8日日経)。中途入社はごく一般的な入社経路になりつつある。そのうち新卒採用割合を逆転するだ…

後継者選びの難しさ

 アクティビストを撃退したディズニーのボブ・アイガー氏は名経営者とされる。だからいったん引退した後にCEOに返り咲いた。ただ返り咲きの理由は、アイガー氏の指名した…

アクティビスト歓迎

 ディズニーがアクティビスト対策に5,000億円使った(4月5日日経)というからなんのことかと思った。記事を読むとアクティビスト攻撃広告等に使った金、つまり純粋な社…

岡口裁判官罷免

 仙台高裁の岡口裁判官が弾劾裁判で罷免された。SNSへの不適切な投稿が問題にされた。  岡口裁判官といっても法曹関係者以外はほとんど知らないだろう。岡口氏は裁判官…

女性役員比率

 12月決算の東証プライム上場企業の内、女性役員比率が2030年度政府目標の30%を上回っている企業は全体の9%にとどまる(5月2日日経)。

 女性役員を短期間で内部昇格により確保するのは困難だろう。特に「男の職場」とされていた企業では。とすれば社外役員に頼ることになる。周囲でも女性弁護士や女性会計士はひっぱりだこだ。

 米国では監査委員のうち一人には会計の知識が求められる。日本でも同様に監査

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ゴールデンウィーク中の学校

 ゴールデンウィーク中の土曜日と平日も学校は営業?しているようだ。お客さんである子どもが来るから対面サービス業をする先生も出勤する。対して、祝日の間の平日は全て休みにして、ゴールデンウィークどころかゴールデン2ウィークスに近い運用をしている会社も少なくない。

 先生の処遇改善が叫ばれて久しい。給与も残業も大事だが休暇も大事だろう。先生の処遇が良いことから先生の質が高く子供の教育レベルも高いフィン

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介入か?それでどうする?

 為替は160円まで買われて、154円まで急落した。為替介入がうわさされている。

 ゴールデンウイーク明けに相場の景色が変わっていた、というのは相場関係者が多く経験するところだ。世界中に輸出入、投資などに基づく莫大な量の為替需要があり、これらをすべて当局が介入によって吸収できるはずもない。介入に従うのか、逆らうのかはその時々の相場模様次第だ。短期的な値動きの本質はゲームであることに変わりはない。

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資産運用教育

 みずほは社員の年金制度をDC(社員が運用責任を負う)に一本化する。同時に資産運用教育も充実させる(4月26日日経)。大手金融機関でさえ社員の資産運用の知識が不足しているという認識だ。金融以外の業種ではなおさらだろう。

 ちなみに、筆者はコンプライアンスや不正防止などの法律セミナーなどやるが、資産運用とそのリスク管理の経験があるので、最後に短時間資産運用にかかわることを話すことがある。するとこち

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EVは解なのか

 テスラは大苦戦している。EV全体も失速している。EVが順調にシェアを伸ばしていけば、テスラと中国BYDの2強になるだろうとの予測があった。どちらも外れ、EV界は中国BYDに支配されそうだ。太陽光パネルの二の舞か。

 地球温暖化なのか。それを止めるのに人類は一致団結できるのか。その解としてEVなのか。それぞれの段階で疑問が解けない。トランプ氏ほど極端ではないにしろ、一部の活動家を除いて確信を持っ

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物言う社外取締役

 機関投資家からの要請で、社外取締役として面談・意見交換を行った。

 これまで、社外取締役といえば、大所高所たる安全地帯にいて、ときたまご高説を垂れるという位置づけであったように思う。しかしこれからはそうはいかないようだ。「戦う」社外取締役までは求められていないが、社内外に「物言う」社外取締役であることは求められつつある。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

内部通報こそ切り札

 内部通報の活用があまり進んでおらず、通報者の30%程度が通報したことを後悔しているとの調査結果がある(4月20日日経)。

 上級管理職が不正を働くと、その発見はほぼ内部通報による場合に限られる。特に、社長、支店長や現法長などによる犯罪行為はそうだ。「経営者による内部統制の無効化リスク」として内部管理の教科書にも定義されている。この内部通報を司るのはコンプライアンス部門や内部監査部門などだろう。

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紅麹の影響はどこまで

 紅麹が問題となった小林製薬は、再発防止策を取締役会で定期に話し合うことにしたそうだ(4月16日日経)。よくある「・・・委員会」の設置と同類の「みそぎ」の一つだろう。

 同記事によれば、小林製薬の紅麹関連以外のサプリでも売上が落ちている商品があるようだ。文字通りサプリメント(補助)であり必須食品でも薬でもないから、消費者は危険を感じれば購入を控えるだろう。他社のサプリにも影響は及ぶのだろうか。お

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地方金融機関の受難は続く

 相続を期に、地方に住む親から都会に住む子供世代に預金が移動している(4月14日日経参照)。金利が付き始めた最近の傾向ではなく、多死社会になり大相続時代になった近年の傾向だ。

 都会に主要な基盤を持つメガバンクは黙っていても預金は集まる。地方金融機関は真逆だ。地方から都会への大きな流れに逆らって預金をつなぎとめなくてはなりない。営業も必要だろう。高い金利をつけることも必要だろう。金利が上がり始め

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廃業・倒産も悪いことばかりじゃない

 ゼロゼロ融資の麻酔も切れ始めて、2023年度、廃業・休業は5万件を数え、倒産も9千件を超えた。対して、M&Aの件数は8百件弱だ(3月31日、4月9日日経)。スムースに雇用が引き継がれたのはごくわずかということだろう。しかし、失業率へのインパクトはほとんど語られない。そもそも件数の割に従業者数が少ない。また、未曾有の人手不足の中、いったん失業しても次の仕事がすぐ見つかることもある。経験的にも、廃業

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中国人の中国脱出

 中国からの脱出は外資だけではない。中国人も大挙して脱出している。メキシコ経由アメリカへの不法中国移民はかねてから報道されている。もちろん日本にも来ていて、在日中国人は、21年末の72万人から23年6月には79万人へと急増している。しかし中国人の移民相手国としてはアメリカは3位、日本は10位だ。1位はタイで、なんと6600万人の人口のうち930万人が中国人になったそうだ(今週号のニューズウィーク日

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ようこそマイクロソフト?

 TSMCに続いてマイクロソフトも日本に巨額投資をする。報道は総じて歓迎ムードだ。もちろん日本の技術者の能力、市場としての日本の魅力などを評価してのことだろう。

 ただ、裏には「安い日本」があるだろう。円安だし、物価も安いので投資額を抑えられる。なにより賃金が低い。お買い得感たっぷりと言える。かつての三菱地所によるロックフェラーセンター買収の逆ベクトルだ。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

中途採用43%

 2024年度の採用計画では、中途採用は43%と5割に迫っている(4月8日日経)。中途入社はごく一般的な入社経路になりつつある。そのうち新卒採用割合を逆転するだろう。

 マスコミも「中途採用」という文字通り「中途半端」感のあるネーミングではなく、市民権を得つつある「キャリア採用」や「即戦力採用」というネーミングに切り替えたらどうか。会社人事部も、むしろ中途入社を一般的なキャリアパスのスタートとし

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後継者選びの難しさ

 アクティビストを撃退したディズニーのボブ・アイガー氏は名経営者とされる。だからいったん引退した後にCEOに返り咲いた。ただ返り咲きの理由は、アイガー氏の指名した後継者の評判(おそらく実績も)が芳しくなかったからとされる。

 後継者選択は指名委員会の最重要ミッションとされる。それだけ難しいのだろう。日本にも誉れ高い名経営者でありながら後継者選びに選びに失敗したり、迷走したりするケースは多い。後継

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アクティビスト歓迎

 ディズニーがアクティビスト対策に5,000億円使った(4月5日日経)というからなんのことかと思った。記事を読むとアクティビスト攻撃広告等に使った金、つまり純粋な社外流出は60億円ほど。5,000億円の多くは配当と自社株買いに使われたようだ。

 これなら経営自体に興味のない個人投資家はアクティビスト歓迎だろう。実際日本市場でもアクティビスト登場で株価が上がるケースは稀ではない。

 会社側もアク

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岡口裁判官罷免

 仙台高裁の岡口裁判官が弾劾裁判で罷免された。SNSへの不適切な投稿が問題にされた。

 岡口裁判官といっても法曹関係者以外はほとんど知らないだろう。岡口氏は裁判官というよりも法曹向けの専門書の著者として有名だ。司法試験受験生や弁護士の間では、民事裁判手続きに関する著作はほぼ「教科書」として扱われてきた。

 半面SNSへの投稿を見てもやや「変な人」だったのだろう。弁護士だったら許されたかもしれな

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