企業内の不祥事、特に経営者や経営幹部の不正行為を早期に発見するには、内部通報しかないと思っている。しかし、内部通報者はその後の報復を恐れて通報を躊躇するケースも多い。 それに対応するため、報復人事等の不利益処分に対して罰則が設けられることになった(11月5日日経)。不勉強ながら、これまで罰則が「なかったこと」を知らなかった。これでは通報者は通報を躊躇し、被通報者は躊躇なく不利益処分ができてしまう。制度の実効が上がらなかったのも無理はない。 鳥飼総合法律事務所 弁護士
実質賃金は8月9月と連続してマイナスになった。そんな中、経済同友会の新浪代表幹事は最低賃金1,500円を払えない企業は退出すべきと言っている(10月19日日経)。同意見である。 賃金を上げるには生産性を上げなければならない。そのためには企業を集約により大規模化して、IT投資に振り向けることができるキャッシュフローを生めるようにしなければならない。個々の中小企業を守るのは小善だが、産業の生産性を上げるのは大善である。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
大統領選はトランプ氏が勝った。大方の接戦予想に反して大勝した。平均的日本人はトランプ氏のような人が嫌いだ。だから、対岸の身でありながら選挙結果に対して嫌な感じがしている人が多いだろう。 しかし日米の株式市場は大幅高でトランプ氏を歓迎した。景気刺激的な政策を好感した一方、粗雑な政策は実行しない(できない)と踏んでいるのだろう。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
三井住友信託銀行は、社員の転勤可否を半年ごとに尋ねることにする(10月30日日経)。辞令一本で、否応なく日本はおろか世界中に飛んでいかなければならないサラリーマン像は、過去のものになりつつあるようだ。 同行は、採用場面でも他行に比べると熱心で、インターン等の取組も早くからスタートしている印象だ。三井住友FGと袂を分かって独自路線を進む覚悟が出ているような気がする。 政策保有株式の全廃もすでに数年前に打ち出しており売却を進めている。人生100年応援部なるものもある。
社外取締役の3社以上の兼職が24%に、女性に限れば34%になるそうだ(10月30日日経)。かくいう筆者も3社兼職している。単純にいえば社数が増えればその分1社あたりに割ける時間も減るということにはなる。しかし、時間的負担は会社によってまったく異なる。出席を要請される会議の数、事前説明や準備の負担、訪問を要請される内外の拠点の数などにもよる。 また、どれだけ自主的にコミットするのかによっても異なる。筆者などは、おせっかいにも、役職員への勉強会を企画しているからその分も負担
信託銀行が「有事導入型」と言われる買収防衛策の導入を支援している(10月29日日経)。従来の買収防衛策は役員の個人防衛だとされて、アクティビストだけでなく一般の機関投資家からも反対される。そのため次善の策として有事に備えるいわばステルス防衛策として導入を図る。もちろん違法ではない。 ただ、これらの弥縫策よりも大事なことは、会社の業績をあげることだ。これによりアクティビスト以外の個人株主や、年金基金に長期保有してもらうことだ。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
ふるさと納税で資金流出が顕著な23区からの怨嗟の声は、間欠泉のように新聞に載る。不合理な制度だから即刻止めろという直球から、寄付に上限を設けろという比較的穏やかな提案まである。しかし、今回の石破総理誕生の裏の立役者ともされる菅副総裁が総務大臣のころ、役人の総反対を押し切って導入した肝入り政策だ。簡単には止められないだろう。 23区に不合理な財政負担を強いて区民の東京外への移住を促し、東京一極集中を緩和しようという遠大な計画かもしれない。まさかね。 鳥飼総合法律事務所
オリンパスのカウフマン社長が、違法薬物所持の疑いで辞任させられた(10月29日日経)。みっともない理由での辞任(事実上の解職)は他企業でもある。違法薬物所持とは外人らしい理由だ。業務と関係のない個人的理由で辞任することをよく納得したと思う。 オリンパスは過去に今回と全く関係のない会計不正問題を起こしている。大きなニュースになった。両者はまったく関係がないが、当社には不祥事が起こる体質というものがあるのかもしれない。たしかに実際に繰り返し不祥事を起こす会社はある。 鳥飼
「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。」刑法240条(強盗致死傷) 最近頻繁に報道される、若年者が黒幕に指示されてやる「闇バイト」。アルバイトというにはとてつもなく重い刑である。指示されるまま家に押し入って暴力を振るい、金銭を取って人を殺せば一発で人生は終わる。殺さなくてもほぼ人生は終わる。 鳥飼総合法律事務所
石破総裁誕生のときは日経平均2,000円安で「歓迎」された。その後総選挙に入って与党過半数割れの予測も出ている。そのせいか「選挙は買い(選挙期間中株価は上昇)」の50年間の経験則は潰れるだろう。市場からは前途多難な政権と見られている。「前途」があればだが。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
ボーイングは組合のストに負けて、4年で35%(単純年8%超!)もの賃上げを提示した。他方、同社は航空機に不具合が見つかったり、納期が遅れたりして、業績としては9,400億円もの赤字を出した(10月24日日経)。それでも組合員は、防衛・航空という排他的な市場で支配的な地位を占めている同社が、潰れることはないと思っているのだろう。 親方日の丸なのに(だから?)ストをやった旧国鉄の「遵法スト」を思い出す。 鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉
金融庁に出向していた裁判官がインサイダー容疑をかけられている。今度は本丸東証の職員がインサイダー容疑をかけられている(10月23日日経)。 裁判官は世間知らずのおバカさんということか。東証職員はどうか。少し古い知識だが、東証で市場監視をする部署では「すべて」の取引をAIでスクリーニングしている。結果「すべて」の怪しい取引は精査の対象となっている。東証職員であれば、このような不正監視態勢のことは知っていただろう。よっぽど能天気なのか、あるいは監視の裏をかけると思っていたの
ヒット本の書名は長くなっているそうだ(10月20日日曜日日経)。ヒット本を読まないのでそんなものかという程度の感想だ。あえて言えば、何でもデータ化できるのだなというところだ。本でいえば、売上×作家、売上×ジャンル、売上×単価などのデータはもともとあるのだろう。書名の長さに注目してクロスデータを明らかにしたことが目新しいということか。 ちなみに、筆者は法律関係の本の執筆を打診されることがあるが断っている。能力がないので書けない×売れないので印税が入らない、の理由による。
決算説明会や新聞紙上で、CFOの存在とその発言が目立ってきた。ラピダスではソニー出身の女性CFOの誕生がニュースになった(10月12日日経)。 CFOの最狭義の定義は経理担当役員だろう。しかし期待役割はそれにとどまらず、財務戦略、投資戦略やIRの最高責任者であり、加えて、リスクマネジメントやコンプライアンスにもコミットが求められる。社長の片腕というより、社長と合わせて企業経営の両輪ともいえる。メーカーでいえば、開発、生産、販売は社長の管轄であり、それ以外はすべてCFOの
少し古い記事だがGPIFと経団連が議決権行使について話し合いを持った(9月15日、9月18日日経)。GPIFは公的運用機関の親玉である。投資顧問会社を通じて大量の株式を保有していて、議決権行使に大きな影響を及ぼす。 その行使の在り方が経団連すなわち企業側から見れば不満があるらしい。例えば取締役会の構成(人数、社外比、女性比)が基準に満たないと、機械的に会社提案反対の行使をしているといったことなのだろう。 大量の株式を保有しているから、いちいち個別企業の事情を判断する
大企業がスタートアップへの投資を活発化させているという記事がある(9月25日日経)。企業は全般に金余りである。そこをアクティビストに責められていいる。スタートアップに限らず、成長分野とりわけ自社事業とシナジーのある企業に投資したいと思っている企業は多いだろう。 しかし、筆者が関与している会社も例外ではなく、その投資候補探しに苦労している。そうすると、経営者個人のコネ、大株主や主要銀行から勧められる狭い母数だけを検討の対象にしてしまう。 何か、効率的で効果的な投資対象