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『くちぬい』 坂東眞砂子 著

簡単なあらすじ

夫の定年退職を機に、東京から高知の白縫集落に移り住んだ夫婦。
美術教師だった夫の竣亮は趣味の陶芸に没頭したい、妻の麻由子は放射能汚染の不安のある東京から逃れたいと思っていた。

老人ばかりの村で、若く見られた二人は歓迎されるが、「くちぬいさま」と呼ばれる神を祀る神社に続く道の上に、竣亮が陶芸の窯を作ったことから、村人たちとの関係に亀裂が生じ、陰湿な苛めが始まる……

山村に根付く因習に酔いしれた、「普通の人」の業を描き出した作品

感想とおススメポイント

本作の舞台は、古くから因習が残る閉鎖的な山村地帯で、集落独自のルールであったり、人間関係であったり、価値観であったりが共有されています。

そこに移住してきた夫婦が、ささいなことで集落の”きまりごと”に反し、住民たちの琴線に触れたとき、異変が生じはじめます。
やがてそれは、「くちぬいさま」の怒りへと。。。

穏やかなセカンドライフを夢見て、地方の集落に移住するという話は、もはや他人事ではありません。
しかしそこには、その集落独自のルールが、未だに深く根付いているということも、どんなに時代が進んでも理解しないといけません。

結局、どこに住んでいても人は人であり、憎みあいや妬みあいの先には、何も生まれないということを、深く感じる作品でした。

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