思いつき短編:ベットの下を見る女

自分の命を捧げたいほど、好きな女性がいた。

その人は、艷やなサラサラした長い髪で肌は雪のように白かった。

身長は平均的な女性の身長よりもやや高め。

身体はスラッとしていて、いつも甘い花の香りがした。

彼女は散歩や図書館での読書、ヨガや料理が趣味で特に本が好きだ。

住んでいる家は意外にも古いアパートを借りていて近くには電車が通っている。


なぜ、そんなに詳しいのかって?


それは、俺がベットの下に潜んでいるからだ。

何とか彼女の鍵の型を取って合鍵を作ったのだ。

俺は彼女のことを何でも知っている。

どういうふうな寝相かも知っているし、どんな下着を持ってるかも把握済み。

何もかも俺にとって完璧な女性だ。


俺はいつもの様に、合鍵を使って彼女の自宅に入る。

そしてベットの下に隠れた息を潜める。

早く帰ってこないかと、まるで子供のように待っていた。

日頃からの疲れが溜まっていたのだろうか、俺は強烈な眠気に襲われた。

まずい、寝てしまうわけにはいかない、と思いつつも瞼はゆっくり閉じてしまった。



次に瞼を開いたとき、急いでスマホの時計を見た。

時刻は午後の5時ちょうど、まだ彼女は帰ってこない時間だ。

安心したのも束の間、俺は固まってしまった。

部屋にはいつの間にか明かりが付いていた。

それよりも何よりも今俺は、彼女と目が合っている。

ベットの上から下の隙間を覗き込むようにして怯える様子もなく、只々無表情で俺を見ている。

俺は、ベルトに挟んだナイフに手を伸ばす。

バレたからには、彼女と一緒に俺も死ぬ。

実行に移そうとしたときだ、彼女の自宅玄関の鍵を開ける音がする。

ただいま~。

俺の思考が停止する。

まてまて、え?俺が今も目と目が合っている彼女は?


いつもの様に、ベットの上に座るそれと同時にその頭は無くなっていた。

俺は何が何だか分からなくなる。

すると、ガタンッとどこかの扉を荒く開ける音がした。

怒鳴り声がする、男のようだ。

その男は何を言っているかわからない。

相当興奮しているようだ。

やめて、助けて!と彼女が男から何かされているらしい。

俺はいたたまれなくなって助けようと動こうとした時だ。

嫌な音がしたーーーーーーーーー。


ゴトンッとなにかが落ちた。

彼女の頭だった。

それは、俺が眠りから覚めたときにベットの下を覗き込んでいた彼女と全く同じ表情で、まるでベットの下を見ているようだった。



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