思いつき短編：ポスト

今日もポストへ投函された。

中を開けると、産まれたての赤ちゃんがいた。

優しい肌触りの布に包まれ、クッションが敷かれている籠のなかに入っていた。

くー、くー、と寝息をたてて熟睡中だ。

私は、優しく赤ちゃんを抱き上げ、ベビーベッドへ寝かせた。

ここは、孤児院だ。

身寄りのない子供達を成人するまで育て上げるのが仕事だ。

私はここの所長で２０人の子供たちと暮らしている。　

私の所長室にはポストがある。

と、言っても手紙を送る郵便ポストではない。

経済面や生活面、色んな事情で子供育てられない母親が赤ちゃんを投函する場所。

いろいろな意見が私達の周りで議論された。

もちろん、私は育児放棄をすることを肯定しているわけではない。

寧ろ、憤りを感じているほどだ。

だが、生まれた命を無下にするくらいなら、私のところで引き取りたい。

そのために作ったのだ。

ただでさえ子供が少なく、高齢化社会となっている。

大概は心無い人からの投函が殆だ。

それはゴミだったり、誹謗中傷の手紙、カミソリ等だ。

それでも私は毎日、ポストの中を見て、綺麗にし、いつでも新しい命を迎え入れられるように整えている。

大切な、大切な、命。

どんな宝物よりも価値があるのに、どうして子供が苦労する社会になったのだろう。

私はいつか、この国の種は、消滅するだろうと思っている。

それか、純粋な種がいなくなるだろう。

そのことに早く気づいてほしいものだ。

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