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午前の朝ごはん

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思いつき短編のまとめ
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2022年4月の記事一覧

思いつき短編:一人称

僕は僕が嫌いだ、私は私が嫌いだ

他人と話すのが苦手で

表情が豊かでもなく

成績もそんなに良くなくて

これと言った特徴もなく

目立った個性もない

ただ、静かにそこに居るだけ

そんな僕に、私に、価値はない

まるで幽霊のような存在

その言葉がピッタリだ

居るのに居ない

そんな、そんな僕に、私に、価値はない

僕は僕が好きだよ?

私は私が好きだよ?

えっ?

だってその個性で、知

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思いつき短編:恵

私は今、落下している

太陽の熱で空へと上り、雲になる

私が大きくなったから重みで下に対う

今回落下する場所はどういった所なのだろう

私はたくさんの色んな場所に落ちた

ある時は、幼い子供の額の上

ある時は、乾いたアスファルト

ある時は、森の苔むした岩の上

ある時は、砂が広がる砂漠の大地

ある時は、大地を見下ろす山の峰

私は色んな場所に落ちては流れていき、母なる海へ帰るのである

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思いつき短編:土

ふわぁ〜あ、よく寝たー

今、どのくらいの年月経った?

うわッ、もう50年もたったの!?

俺いくつになるんだ?

え~と…………

80歳!?

うそだろぉ、おじいちゃんじゃん

ロケットに乗って機内の寝室でコールドスリープをしてからそんなに…

えー…、えぇ!?

なんかショック…

一気にモチベーションが下がったわぁ

見た目はこんなに若いのに地球に戻ったら一体、いくつになるんだ

ま、だ

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思いつき短編:でんしゃ

タタン、タタンタタン

タタンタタン、タタットトン

タタットトン、タタットトン

あ~、寝てしまった

今何時?

17時30分

あれ?

確か、17時30分発の電車に乗ったはず…

でも電車、動いてる…

腕時計壊れたかな?

タタン、タタンタタン

タタンタタン、タタットトン

タタットトン、タタットトン

ん~?なんだかこの電車、随分レトロな雰囲気だなぁ

木造だし電気も小さい、椅子のク

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思いつき短編:庭園

とあるところに、それはそれはきれいな庭園がありました。

その季節の様々な花がいつも咲き誇っていて
誰もが見惚れるほどでした。

その庭園は手入れが行き届き、無償で開放されていました。

訪れる人はこの花々を管理している人をいつも尊敬していましたが、誰一人と姿を見たことがありません。

名前も性別も身長も知りません。

それもそのはずです。

庭園の管理人は人々が寝静まった夜中に作業をしていました

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思いつき短編:輪廻

コンコンコンッーーーーーー

どうぞ入って下さい。

はい、今日はどうされました?

ふむふむ、足を怪我したと…

ちょっと見せて下さい。

あらぁ、これはひどい。

今、治しますね。

さ、これでいいでしょう、動かしてみてください。

大丈夫そうですね、良かった。

ん?何で触れただけなのに怪我が治ったかって?

私の手には魔法が掛かっているんです。

触れただけでどんな怪我も病気も治せちゃうん

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思いつき短編:カロリン

はじめまして、我々は変形型人工愛玩具

商品名をカロリンと申します

我々は、我々の主が望む姿に変形し、主の為に生涯幸せを届けるのが我々の生き甲斐であります。

そして、私はカロリンの変形型人工愛玩具(雌)のメデコです。

今日は製造されて初めての主の元へ来ました。

名前の由来は病気で亡くなられた方の愛する人からそのまま取ったそうです。

主の心を癒やすためにその方について色んなお話を聞きました

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思いつき短編:土から

今いるこの星は、以前は何もないところだったという

そこに地球という星から人間という神様がこの星に来て自身の肉体で私達のご先祖様を創造したとか

最初はカビの胞子や小さな植物の芽で、そこから大きく成長する過程で変化があった

神様の細胞を栄養と吸収しているうちに神様と同じ形になったという

だけど神様と違うのが自分たちは水と光と養分だけを食べている

あるモノは花を咲かせ、あるモノは大きく成長し葉

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思いつき短編:戻らない

美しい庭園を手に入れた元新聞記者がいました。

その記者は、まず入り口にチケット売り場を儲け広告を作り庭園はたちまち有名になりました。

元新聞記者は記者から庭園の支配人となりました。

でもそれは最初のうちだけで3ヶ月後には閑古鳥が鳴くくらい誰も来なくなってしまいました。

支配人の借金はしだいに増え、庭園は色のない場所へと変わってしまった。

支配人は土地の権利を撃ってどこかへと消えてしまいま

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思いつき短編:ミツルの話

俺は、最愛の女性を最先端医療でも治せない不治の病でなくしてしまった。

両親、お金、仕事、回りの評価、人望、申し訳ないほどに満ち足りていた。

その全てを捧げても良いくらいに愛していたのがメデコだ。

彼女とは会社の職場で出会った。

俺はまだその頃は普通の社員、彼女は会社の清掃員だった。

たまたま、男子トイレの清掃をしていた彼女とはち合わせて、顔を赤らめながらすみません!と言って立ち去る。

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思いつき短編:商品回収

株式会社未来創造グルーヴからのお知らせです。

いつもご愛顧頂き、ありがとうございます。

今回、自社製品であるカロリンが、ご購入されたお客様に反して暴力をふるってしまう事案が発生いたしました。

被害に遭われたお客様に対しては、本当に申し訳ございませんでした。

つきましては、全お客様の安全を考慮し、製造番号関係なしに、商品の回収をおこなわせていただくことといたしました。

ご購入の際に登録して

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思いつき短編:レストラン猫の刻

いらっしゃいませ。

お一人様ですか?

こちらヘどうぞ!

はい?

あぁ、席が1つしか無いんです。

このレストラン猫の刻は1日一組しか入れないんですよね。

なぜかって?

レストランのオーナーにして料理長のケンさんがそうしているんです。

大丈夫ですよ、料理のお値段はその人によって違うんです。

早速、料理のご案内をさせていただきます。

お客様には500〜1500円のコースをオススメした

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思いつき短編:時間バイヤー

そこの人ーー!!

ちょっと待ったぁぁぁあ!!

ーーーーーハァハァ、いやぁ、間に合った。

アンタ、飛び降りるのかい?

見りゃわかるだろって?

まぁ、確かにそうだな。

って言うことは、残りの時間が無駄になっちまうよな。

残りの時間っていうのは天寿を全うしなかった余りの時間のことだ。

でな、その残りの時間を買取らせてもらいたいんだ。

そんなの出来っこないだろって?

俺はできる。

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思いつき短編:誕生日

生命誕生の大きな声がする。

母のお腹から産道を通って産まれてきた赤子。

元気な男の子である。

外の世界に出て、泣き声と共に大きく息をする。

母は自分の人生の半分の体力を使い、外界へ送り出す。

対面する母の顔はなんと安堵した顔だろうか。

赤子はひとしきり泣いたあと、指をしゃぶって眠りについていた。

もうその時から、とても柔らかい髪が少し生えていた。

頭の左右からは5ミリ程の白い突起物

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