賢い女
「え?ハジメさん、毎晩ご飯作ってるんですか?というか、朝も作ってません?」
私は思わず聞き返した。
すかさず、ヨメが答える。
「だってぇ。。。私が作るより、ハジメさんが作った方が美味しいんだものぉ〜。ね?ハジメさん。」
「いやいや、まぁゴハン作るのは好きだしね。」
褒められたハジメは、照れ臭そうにしながらも嬉しそうだ。
このヨメは、自称『天然ボケ』である。
そして自称『ドジ』である。
しかし、本当は違う。
相手を油断させるのがうまいし、人に尽くさせるのがうまい。現に、褒めて甘えて、夫を使いまくっている。天然ボケでも無くドジでも無い、したたかで賢い女なのだ。
賢い女は結局のところ、誰にもイヤな思いをさせることなく、自分の周りの人間を上手に使っている。
私はおそれいった。
この『自称・天然ボケ』のヨメを見て、思いだした。ある番組でロケに行った時、女医さんが同じようなことを言っていたのだ。
現場での待ち時間、女子トークで盛り上がっていると、女医がふいに
「うちはね、朝ごはんは毎日主人が作るの。」
と話すのを聞いて驚いた。
「え?ご主人が朝ごはん作るのですか?しかも、毎日?」
「そうよ。」
女医はニンマリとして答えた。
「六車さんもね、結婚したら、褒めて旦那さんを育てるのよ。
例えばね。茶碗洗いをやってほしいとき、
『私だって働いてるんだから、茶碗くらい洗ってよ!』って言っちゃダメ。
『俺だって疲れてるんだよ!』になるでしょ?
そうじゃなくて、甘えるのよ。
『今日は仕事で疲れちゃったから、茶碗洗ってもらえるかな。』って。
ウチの場合はね、最初、朝ごはんをお願いしたの。初めて作るわけだから、当然ヘタよ。魚は焦げてるし、味噌汁は薄いし、お米だってベチャベチャ。ハッキリ言って、自分でやった方が早いし美味しい。でもね、そこでグッとガマン。
『わぁ!ありがとう!美味しいわぁ。』と、喜ぶのよ。そしたら次もまた作ってくれるから。そうしてドンドン作るうちに、料理の腕も上達してくるの。」
「す、すごいです!なるほど!」
「男は、褒めて育てなきゃ。ウチなんて今や、毎日主人が朝ごはんを作って、洗濯物もたたんでくれるわよ。」
「洗濯物もですか?」
「そうよ。それだって、最初はヘタよ。私がたたんだ方が早いしキレイ。でもね、絶対口出ししないの。多少グチャグチャでも、『わあ!助かっちゃったー!ありがとう!』って喜ぶのよ。そしたらドンドンたたむようになるし、たたんでいるうちに上手くなるから。
男はね、褒めて使うのよ。そして、やってもらった後は、思い切り喜んで感謝するのよ。そしたら後は勝手にやってくれるから。」
はぁぁぁぁぁ。
すごい。。。
よし!良いことを教えていただいた。
私もいつか結婚することができたならば、必ずや実践しよう!賢い妻になろう!
そう誓ったハズなのに、、、。
いかん!スッカリ忘れていた。
現実は、家事育児はもちろん、自分の仕事に加え夫の仕事まで手伝って、毎日馬車馬のように働いている私がいるではないか。
あっかーん!
これでは一生、賢い妻になれん!
『だって、私がやった方が早いんだものーっ!!!』
なんて思ってはいけないのである。
よし。今日から変わるぞ。
「えっとぉ〜。今日はナナ、疲れちゃったからぁ〜、お茶碗洗ってくれると、マンモスうれピーなぁぁぁ。」
目指すは、賢い女。
甘え上手な私よ!カッモ〜〜〜ン!