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「立場や属性が違っても、同じ経験をしていなくても、想像力があれば人は分かりあえる」

『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア著、大和書房2021年)を読んだ。感じたことを書きたい。

「ヘルジャパンに生きる女子は息してるだけで偉い。そんな女子がもっと生きやすくなってほしい。」
 男性社会に苦しむ全ての人々に力をくれる、痛快なメッセージ満載のエッセイだ。

 差別に関する教育が重要と感じた。社会や文化をもっと学びたいと強く思った。思いを言葉にすることで、より良い社会へつながると信じる。

セクハラ・パワハラのセパ両リーグが熱戦を繰り広げるヘルジャパン

 令和になっても、セクハラ・パワハラのセパ両リーグが熱戦を繰り広げるヘルジャパン。
『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア著、大和書房2021年)電子書籍289/421

 セクハラとパワハラがデフォルトの会社に務めている。典型的な日本企業である。もちろん男性社会である。セパ両リーグが年中開幕している。

 彼らは呼吸するようにハラスメントする。「今度の人はどっちかなあ。セクかなあ、それともパワのほうかなあ」人事異動の都度考える日々だ。

~前略~男尊女卑がしみついたおじさんって、男の話しかきかないから」という言葉に、「それな!!」と膝パーカッションしすぎて、俺の皿はもうボロボロだ。
 膝がいくつあっても足りないくらい、我らがヘルジャパンは男社会だ。だからこそ、男性も積極的に声を上げてほしい。「ストップ!イジリ」とみんなが声を上げれば、世の中を変えていける。(同362/421)

 男尊女卑思考を持つ男性は、男の話しか聞かない。女の話は遮り否定し、話す機会を与えない。役職者のシニア男性に顕著である。うんざりである。

 みんなが声を上げて、世の中が変わっていくことを切望している。

ヘルジャパンに生きる女子は息してるだけで偉い

 女というだけで入試で減点されて、女は子供を産むからと就職で差別され、産休育休を取ってもベビーカーで電車に乗っても迷惑がられる社会で、「じゃあ子供を産まない」と女が選択すると「けしからん、ワガママだ」と責められる。
 職場では、「女には期待しない」「がんばっても無駄だ」と頭を押さえつけられ、がんばらないと「やっぱり女は仕事ができない」とナメられる。そんな中、命がけで出産しても保育園に入れるのはむっさハード、保育園に入れても働きながら子育てするのはげっさハード、ワンオペ育児で死にそうDEATH!!みたいな地獄に生きる女子はみんな、息してるだけで偉いのだ。そんな女子が堂々と好きな生き方を選べる社会に変えていきたい。(同21/421)

 「結婚したくないんです。どうすればいいんですか」と先生を困らせる小学生だった私。「結婚したい!」という友人達が異星人に見えた。「結婚しろ」圧力が高まり、人生に絶望した。

 怒鳴り散らす父親と常に不機嫌な母親の元で育った。女性は結婚で不幸になる思っていた。

 社会人を続けて知った。家庭だけでなく、会社も不幸なのだ。男社会とは、女は出世できないとはこういうことか。身をもって知った。これほどまでとはと思った。

 単身で生きたからと言って、男社会から逃れることはできない。会社を始めとした政治経済は男性中心のシステムだからだ。家でも社会でも男に痛めつけられる。地獄だ。

「男の人は浮気する生き物なんだから、しかたがないのよ」

 ~前略~と私は思ったが、彼女が実の母親にその話をしたら「あんたが旦那に尽くさないから」と責められたそうだ。かつ「男の人は浮気する生き物なんだから、しかたがないのよ」と諭されたという。
 娘を何重にも傷つける母親の言葉は、どう考えてもひどい。けれども専業主婦だった母親はそう考えないと生きられなかったのかも……と思うと、母親をバチボコに責める気にもなれない。(同134~135/421)

 男社会で会社員をする私も「男は男の声しか聞かないからしょうがない」と考えている。「男はこうだからしょうがない」家庭でも会社でも女性はあきらめることで心のバランスを取っている。

 彼女らは「男にとって都合のいい女=いい女」と刷り込まれているのかもしれない。自分が傷ついていると認めたくなくて、平気なフリをしているのかもしれない。でもそんな”余裕のある妻仕草”を評価するのは、もうやめようじゃないか。(同136/421)

 私は間違いなく傷ついている。平気なフリを続けることはできない。同じ苦しみを感じているのは私だけでないと感じた。家庭でも会社でも女は傷つけられているのだ。

「妻は夫が支配できる所有物」「女は男に従ってケアする義務がある」というモラハラ男の認知の歪み

 モラ男の思考の根っこには、男尊女卑がある。「妻は夫が支配できる所有物」「女は男に従ってケアする義務がある」。このように認知が歪んでいるため、妻は自分の思い通りになって当然、自分はケアされて欲求を満たされて当然と信じている。よって妻が思い通りにならないとキレて、自分の権利を奪われたと被害者ぶる。(同231/421)

 深夜残業をしてタクシーで帰宅した。「どこの男と遊んできたんだ!」と怒鳴られて突き飛ばされた。「お願いだから寝かせて!」と叫んだ。会社でパワハラを、自宅でモラハラを受けた当時、床についても眠ることができなくなった。命の危険を感じた。

 モラハラの恐怖。男にかかわるとろくなことがない。知性に欠け自分勝手で暴力的。野蛮な動物にしか思えない。
 どうして私の周りにはこんな男しかいないんだ。我が人生ながらクソすぎて涙を禁じ得ない。

「私は結婚もせずにこのまま滅びるけれど、私のところで人間をやめにしてもいい?」

 祖父が83歳で亡くなったのは、1953(昭和28)年、りんが33歳のときである。明治生まれのこの祖父は、彼女が詩を書くことを喜んだ唯一の家族だった。
晩年の祖父に、りんは尋ねたことがあった。
「私は結婚もせずにこのまま滅びるけれど、私のところで人間をやめにしてもいい?」(この父ありて 詩人 石垣りん(5) 自己嫌悪もたらした血の絆 梯久美子 日経新聞電子版2021年6月19日 2:00)

 私にとって結婚は負の連鎖にしか感じられなかった。「私のところで人間をやめにしてもいい?」は、まさに私と同じ気持ちだ。

 怒鳴る父とヒステリーの母。つらかった。なぜ私を産んだと、ずっと疑問に感じていた。生まれることはかわいそうだと思った。愛する子供のために、産んではいけないと思った。「私は産まない」「出産が義務なら結婚しない」小学校時代に私の心は決まっていた。

 ~前略~病みおとろえて娘に養われても、男であることをやめない父への嫌悪。詩の中においては、りんはそれを隠さなかった。父をうたった一群の詩は、まるで私小説のようだ。
〈夫婦というものの/ああ、何と顔をそむけたくなるうとましさ/愛というものの/なんと、たとえようもない醜悪さ。〉(同上)

 昭和初期を生きた詩人の女性も男を軽蔑していた。人生に絶望する。過去より女性はそうだったのだと、この記事を読んで感じた。
 結婚に対する嫌悪が胸に迫る。詩の持つ言葉の力に圧倒される。

「同質的な集団には、イノベーションは生まれない」ー多様性の重要性ー

 そもそも、会議でわきまえるということはどういうことでしょうか。それは、上の人の発言に対して反対しないということであり、日本の男性中心社会の秩序を乱さないということを意味しているのではないでしょうか。
 女性の活躍を阻害する要因を除去し、男女平等社会を実現させる重要性は、価値観の多様性が尊重される社会が生み出されることにあります。同質的な集団には、イノベーション(革新的なアイデア)は生まれないのです。(女性活躍社会に必要なこと(9) 多様な価値観尊重の重要性 日本女子大学名誉教授 大沢真知子 日経新聞電子版2021年7月15日 2:00 やさしい経済学)

 同質的な集団には、イノベーション(革新的なアイデア)は生まれない。男性中心という同質性で秩序を保つ社会の問題点はここだ。
 貧困や高齢化など、多くの社会課題を抱える私たち。解決のためには、斬新な発想と実行力が必要だ。価値観の多様性が尊重される社会によって初めて、革新的なアイデアが生まれる。

 政治も、経済も、教育も、メディアも、男性が権限を握るままではこの世は変わらない。男性に都合よく、女性が犠牲になるままだ。そのためには、女性の地位を高め、男性と女性が真に同等の権利を持つことが必要だ。

「立場や属性が違っても、同じ経験をしていなくても、想像力があれば人は分かりあえる」ー教育の重要性ー

 一番前の席で後ろを振り返ったことのない人には、弱い立場の人やマイノリティの存在が見えない。だから「本人の努力だ足りない」「自己責任だ」と主張して、社会の構造を変えようとしない。
 たとえば、東大生の親の半数以上が年収950万以上だ。親の経済格差が教育格差につながって、努力したくてもできない環境にいる人、進学という選択肢すらない人もいる。塾や習い事をする余裕などなく、家計を支えるためにバイトする子供たちもいる。日本は7人に1人の子供が貧困状態にあり、先進国で最低レベルだ。『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア著、大和書房2021年)(電子書籍106~107/421)

 差別の解消には、差別の教育が不可欠だ。

 明治にあこがれ昭和を生きた古い世代には、特定の国籍や人種に偏見を持つ人も多い。差別という暴力の加害者にさせないためには、教育が大切だ。性別に係る差別でも同様だ。

”One child, one teacher, one pen and one book can change the world. Education is the only solution. Education First.”(一人の子供、一人の教師、一本のペン、一冊の本が世界を変えられる。教育が唯一の解決策だ。教育第一だ。)(パキスタン出身の人権活動家Malala Yousafzaiの言葉)
 立場や属性が違っても、同じ経験をしていなくても、想像力があれば人は分かりあえる。『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア著、大和書房2021年)(電子書籍167/421)

 人は年を重ねると思考の柔軟性を欠くと聞く。昭和どころか明治の価値観を理想とする世代が権力を握る。彼らの思考を現代・未来志向にすることは難しいかもしれない。
 だからこそ、我ら現役世代の教育が必要なのだ。

 未来の社会を生きる世代のため、現役世代への人権教育こそ世の中を変えられる唯一の手段だと考える。

終わりに

 壁にぶつかり、崖っぷちにいると感じることばかりである。生きる力をもらいたくて本書を手に取った。

 本書は、社会の問題点とその対処法を気楽に学べる娯楽本である。著者自身が一般女性に対して行ったインタビュー等を中心に記載される。根拠となるデータの提示は少ない。著者のギャグセンスで読ませる一冊になっている。

 社会や文化を語る言葉を持ちたいと強く思った。なぜ男尊女卑が起きるのか?日本だけなのか?島国だからか?ムラ社会だからか?文学や社会学を専門にしなかった私には謎だらけだ。

 英語と資格の勉強の合間に読書を進めて、学びたい。思いを言葉にすることが、より良い社会へつながると信じる。

 長文お読みくださりありがとうございました。



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