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物語を考える ―文学研究―

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ぼくの考えていること、考え方には、文学研究の理論がすごく影響を与えているなー、と思っていて。仕事を辞めて2年間通った大学院で得た知見。他のノートを書くときに、その話と絡めたいこと… もっと読む
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記事一覧

テクスト論に思うこと ~物語には、集合的無意識、人間の普遍的な性質が表れる~

テクスト論に思うこと ~物語には、集合的無意識、人間の普遍的な性質が表れる~

 このマガジン「文学研究」は、文学研究の主な三つの方法論について書いてから、全く更新していなかった。

 理由は、このマガジンは、読んだ人が「アカデミックな文学研究」のことを知ることができるようにしたかったから。言い換えると、「正しい」ことを書こうと思ったから。だから、大学や大学院で学んだ、確かなことしか書かなかった。

 でも、文学研究の方法論の一つ、テクスト論は、文学の読み方を、読者に開いた。

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象牙の塔の文学研究 ― 3. 物語と文化

象牙の塔の文学研究 ― 3. 物語と文化

 大学を一年間休学して、イギリスの小中学校で日本文化を教える真似ごとをしていたことがある。小さいころには、グアテマラとペルーに住んでいた。中南米にいたときには、一時帰国した日本の空気、イギリスに行った時には、イギリスの空気、そういう、自分が住んでいる場所とは違う、異国の空気にふれるのが好きだった。昔から、社会ごとに違う、その中で育まれた空気、雰囲気、つまり「文化」に惹かれていたみたい。

 今回は

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象牙の塔の文学研究 ― 2. 神を殺し、自由になる

象牙の塔の文学研究 ― 2. 神を殺し、自由になる

 そもそも、ぼくが文学=小説を研究することに興味を持ったいちばんはじめのきっかけは、文庫本の最後に載っている「解説」を読んだときだったと思う。そのときに読んだ物語の中から、自分には分からなかったたくさんの「物語に秘められた意味」みたいなものを掘り返していて、こんなに深いんだ、と戦慄した。

 文庫本の解説みたいな読み方は、たぶん、今回の旧記事で紹介している「テクスト論」に当てはまる。「テクスト論」

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象牙の塔の文学研究 ― 1. 作家を研究する

象牙の塔の文学研究 ― 1. 作家を研究する

 仕事を辞めて、今年の春まで通っていたのは、文学の大学院。お金に、仕事にならない趣味に走った2年間でしたが、これから生きていく時間を楽しくしてくれたことは間違いない。それは、文学研究の方法論が、大げさに言うと、ぼくのひとつの世界の見方となったから。

 もう一度言うと、お金に、仕事にならない、つまり外に向いていない文学研究(笑)は、それでも、価値が、意義があると思う。

 文学研究の意義を示すため

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物語を研究すること

物語を研究すること

 ブログの引っ越しを決めて、でも、これから書きたいことで、これまでに旧ブログで書いた記事と絡めたい話が多くある。じゃあ、せっかくだから、昔の記事もnoteに、と思い、少しずつこっちにも投稿してみます。まずは、ブログを始めた2016年の記事。まだ、仕事を辞めて行った大学院に通っていたとき。

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 仕事を辞めて大学院へ進学することを決めた時、後輩に、何を勉強するのかと聞

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