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【概念変革03】そのサービスは誰のため? -売り手の論理は通用しない

 最近、いろいろな業界の方と会食することが多くなってきました。

 コロナ明けも関係していますが、時代が昨年に比べて、10倍のスピードで動いてる感があります。

 時代の動き、世の中のトレンドを把握するには、さまざまな業界の人と、日々話をすることが、今の僕には大変役に立っています。

 しかし、会食中に、少し気になることがあります。



店にとっては「極上のおもてなし」でも

 それは、「ちょっとよろしいですか」と話を中断されて、料理の説明をされることです。

 会食ですので、あらかじめ、コースで予約することが大半です。そして席に着くと、テーブルの上に「本日のお献立」が置かれています。それを読めば、内容はだいたいわかります。

 それなのに、料理を運んできては、その都度、「お皿の左から、XX産のXX,YYで味付けしたYY…」などといわれる。

 これは、そのお店が食材にこだわり、シェフがどのような創意工夫を凝らしたかを説明する、お店にしてみれば「極上のサービス」、おもてなしだと思います。

 食に関心のある方、心地いい時間を過ごしたい方々であれば、こうした丁寧な説明は嬉しいでしょう。

 僕も、プライベートでゆっくり過ごすのなら、説明を聞き、ちょっと会話をするのも楽しいと思います。

 しかし、僕らが仕事で予約し、ときには込み入った話をするはずというのは、予約を入れた時点から、わかっているはずです。

 また、真剣に話している雰囲気も、見ればわかるでしょう。そのときに「ちょっとよろしいですか」と、何度も話を中断してまで説明することを、「おもてなし」と捉えているのなら、僕には違和感しかありません。


それは本当に「お客様のため?」

 丁寧な接客をしてお客様に喜んでもらおう、生産者の想いを伝えよう、料理の細かい説明をして、料理の価値を理解し満足してもらおう……。

 よくわかります。

 しかし、それって、お店側が「こうしたい」と思っているだけではないでしょうか? あるいは、「そういうものだ」という思い込みなのでは?

 僕なら、テーブル担当者が「料理の説明はいたしますか?」または、「ご接待とのことですので、料理説明については省く、でよろしいでしょうか」という声がけをする、あるいは予約時の目的で「接待」にチェックが付いているなら基本的には声をかけない、といった対応をすると思います。

 そう、現在は、予約は電話だけでなく、オンライン予約も増えました。その際には「目的」のチェックボックスがあることがあります。「接待」という項目はだいたいあるので、そこにチェックをする。

 でも対応を見るに、それは、お店の顧客情報の収集のためであって、顧客サービスには使われていないらしい、そこも残念なところです。

 いや、でも、僕が思いつくくらいですから、すでにそうした対応をしているお店も、あるかもしれないですね。

 ちょっと辛口なことを言いました 笑。



「売り手の論理」の押しつけは、もう通用しない 

 これは料理店の接客だけでなく、さまざまな現場で起きていることだと思います。

 つまり、売り手の論理=売り手のやりたいこと、や、売り手がお客様にとって価値があると思っていることと、買い手であるお客様の思いが違っている、「ズレ」がある

 例えば、広告。

 近年、広告の効果が思わしくないと言われています。テレビは見られず、新聞も読まれない。僕の自宅テレビはここ数年、YouTubeしか流れていません。

 また、Z世代を中心にして、「広告」を見ること自体が「うっとおしい」と思われるようになってきました。何故なら、広告には、売り手による「押しつけ感」満載に感じてしまうからです。

 僕は、YouTubeはプレミアム契約をして、広告が出ないようにしていますし、スマホのサイトでも広告が出てくると、ページを閉じてしまいます。

 そもそも、今の消費行動は、売り手がモノを作ったり、仕入れたりして、それを、「売れる」と思って販売する、という形で成り立っています。

 しかし、いまどきの買い手は、広告含めて、買い手のアピールを、かつてよりも受け入れようとはしていません。

 これは以前書いたように、買い手の中に信用経済が回っているため、買い手の立場にいる信用できる人のおすすめ、買い手中心にまわっているSNSで評判になってるモノが購入され、それ以外のモノは買われなくなってきているからです。



売り手の論理を持ち込まない

 もはや、メーカーや、僕のいる小売業は、お客様にモノを「売り手の論理」を押しつけて売る時代ではなくなってきています。

 そろそろ、買い手の論理を、消費者の購買行動に持ち込むことをやめてはどうでしょうか

 プロダクトアウトからマーケットイン(売り手の考えでなく、マーケット=買い手の要望を理解して、商品を製造、販売しましょう、の意)、と言われて久しいですが、買い手主導の購買行動ができるようなビジネスを、まだほとんど見ません


「売り手の論理」から「買い手の論理」という概念変革

 買い手が主人公になれる、そんな買い手が起点となるモノの買い方=買い手主導のCX(Customer Experience)を真剣に考える時代になっています。

 こうした、商品サービスを売る上で、売り手の論理(=売り手が売りたいこと)を持ち込まず、買い手の論理を重要視する、そうした「概念変革」が、この先、どんなビジネスにおいても大切になってくると思います。

この「概念変革」は、今後のあらゆるビジネスにおいて、非常に重要な要素になると、僕は真剣に考えています。

 (売り手が)何を売りたいのか、ではなく、
 (買い手が)何を求めているのか。

 その違いが、成功と失敗を分ける重要なキーになると確信しています。

 この先、メーカーや小売業者は、「売り手の論理」で物を売る時代から脱却し、「買い手の論理」でモノを売らないと立ちゆかなくなるでしょう。

 今こそ、買い手が主体となるCX(Customer Experience)を真剣に考える時代が到来している、そんな思いを馳せつつ、会食時の料理の説明を聞いています。




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