2030年のビジネス -買い手と売り手の壁を取り払う-
先日、買い手の中に醸成される「信用経済」のお話をしました。
買い手の「信用経済」とは、買い手の中で、発生する「信用」をベースにしたモノを買うこと。
「この人の言うことや買ったものを参考にして、買い物をする」という買い手の行動が今後の主流になる、というお話しでした。
不信が炎上を招く
では、この買い手の「信用経済」の中で、メーカーや小売業者といった「売り手」は、どのようにモノを売ればいいのでしょうか?
僕が洗車のワックスを作ったときの話です。
洗車コミュニティには、洗車する側のユーザーが主に書き込みをしていました。しかし時々、「売り手」である洗車メーカーや、洗車用品の代理店の人も参加し、書き込みをしていました。
ある時、「XXの商品を使ってみたらとてもよかったです。お勧めですよ!」という感じのコメントが何度も繰り返し、書き込まれたことがありました。
僕たちは「あぁ、これはメーカーの人が書いているんだな」と思い、誰も、その書き込みに反応しませんでした。
挙句の果ては、「メーカーの人でしょ? 宣伝はやめたらどうですか?」と厳しい発言が出て、コミュニティは炎上。その人は、早々にコミュニティを離脱していきました。
これは、「買い手」のコミュニティに、「売り手」が売り手の論理、つまり、売り手の利益誘導のために入り込み、その意図が「買い手」に見透かされてしまったために、「買い手の信用経済」での「信用」を得られなかったのでモノが売れなかった、という、典型的な例だと思います。
僕には、今のビジネスは、そのほとんどが、「売り手」と「買い手」が川を挟んで、両岸に立って、お互いに石を投げあう関係に見えます。
「信用経済」内でのモノの売り方
これはある意味、敵対関係にも見えます。
もちろん、お互いを敵とは思ってはいませんが、先ほど書いたコミュニティから「売り手」が追い出された例にあるように、今の時代は、「買い手」は「売り手」の「売りたい意思」が見えると興ざめするのです。
おまけに、コマーシャルも信用しなくなっています。
テレビはそもそも見ないか、ビデオで録画して広告は飛ばしてみる、など、広告も見たくなくなっています。そのため、「売り手」は「買い手」にどうモノを売ればいいのか、わからなくなってきています。
敵対関係とは、要は、「売り手」と「買い手」の信頼関係が築けなくなってきたことを暗示する比喩ともいえますが、要は川を挟んで、という川、すなわち、「売り手」と「買い手」の間には大きな「壁」ができつつあり、お互いの間が、うまくつながらない構造になってきている、ということです。
特にZ世代が台頭して壁が大きくなってきたのではないでしょうか。
同じ川岸に立つ関係になる
では、この壁を崩すにはどうすればいいのでしょうか?
僕の答えはシンプルです。それは、川を挟んでの関係から、同じ川岸に立つ関係になることだと思います。同じ川岸に立てば、石を投げあう関係ではなく、お互い一緒になって、石を一緒に投げる関係になります。
そこには、敵対関係はなく、協力関係だけが存在しています。
「そんなことできるの?」「同じ岸に立つってどういう意味?」「売り手をやめろということ?」と言われそうですが、僕は「できる」と思います。というか、それが未来の小売の世界観かと思います。
実際、洗車のワックスを作ることにより、「売り手」が「買い手」と同じ岸に立つとはこういうことだ、と気が付きました。
それについては、次回、書いてみたいと思います。
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