2030年のビジネス-「売り手」が「買い手」と一緒になる,とはどういうことか?
前回の結びに、「売り手」が「買い手」と同じ岸に立つことが大切、と書きました。
それに対して、「どういう意味?」と思われたかもしれません。
この、「売り手」が「買い手」と同じ岸に立つことについて、今回は書いてみたいと思います。
炎上する「売り手」、仲間となる「売り手」
僕を含めた洗車好きが集うコミュニティ、つまり洗車用品を買って使う立場にある、「買い手」のコミュニティに、洗車用品メーカーの人、すなわち「売り手」が商品宣伝のような書き込みをしたため、炎上した、と前回書きました。
でも、同じ洗車用品メーカーの人でも、コミュニティに受け入れられている人もいました。
その人も「売り手」です。でも「買い手」が集まるコミュニティの中に入ってきて、しかも僕たちに歓迎された。この違いはなんでしょうか?
「売り手」が仲間となる瞬間
その人はこんな書き込みをしました。
「私は、理想の洗車用品を求めて、韓国メーカーの代理店になりました。でも何が素晴らしいのかは説明しません。論より証拠。皆さんに評価をお願いしたい。無料で50個配りますので、使った感想をTwitrerにアップして下さい」
「聞いたことないメーカーだよな」、「下手売り込み」など文句を言ってた人も結構いましたが、僕含め、好奇心を持った洗車ユーザーは、こぞってその製品を無料でもらいました。僕も使っていました。
その結果はというと、僕も含めて、50人がほぼ絶賛したのです。
「こりゃすごい艶と撥水だわ」と。その人は僕らの感想を見て「ありがとう!僕は間違ってなかった。これからも皆さんにとって最高と思える商品だけを皆さんに届けますので、よろしく!」と言いました。
その瞬間、その人は、僕たち「買い手」のコミュニティに一員になったのです。
え?と思ったかもしれません。いや、もちろんその人は「売り手」なんですよ。でもですね、僕含め仲間たちはみな、この人を、僕たちの「味方」だと思い、受け入れたのです。
だって、僕たちの気持ちを理解し、僕たちに成り代わって世界を探し製品を持ってきてくれたのですから…。
「売り手」が「買い手」と同じ岸に立つ
「うちの製品はいいですよ」と買い込んだメーカーの人と、この人のしたことは、商品の宣伝という意味では同じなのかもしれませんが、なぜ、前者は「敵」と映り、後者は「味方」と僕たちは思ったのでしょうか。
それは、この人の想いが、「商品を売りたい」よりも、「いい商品を買い手に使ってもらいたい。そのために商品を探して仕入れている」、というところにあったからです。
つまり、この人のしていることは、単純に「売り手」としてモノを売ってるのではないのですよね。
僕らと同じ川の岸辺側に立って、僕たちに成り代わって、僕たちでなかなか探せない商品を見つけてきてくれた。
一方的に主張してモノを売りつけようとする人ではなく、僕たちと同じ立場に立って、僕たちの買い物を支援してくれる人、そう感じたので、仲間だと感じたのですね。
それすなわち、「買い手」のモノを買うという行為を支援してくれているサポーターのような存在だと感じたからです。
こういうモノの売り方であれば、「売り手」であっても「買い手」のコミュニティの中に入って、「買い手」の共感を得て仲間になれます。
この関係を見た時、僕は、従来の「売り手」と「買い手」の関係ではない新しい関係性とモノの売り方のヒントになるのでは、と確信したのです。
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