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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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#タヌキ

マイクロノベルちょいす 075「きつい仕事」

マイクロノベルちょいす 075「きつい仕事」

No.1362
寒いと無意識に歯を食いしばってしまう。この無駄なエネルギーを有効活用できないだろうか。「その力、我々に貸してくれ」僕の口内で発生したエネルギーは変換され、地球環境改善の会議で使用される書類を束ねる。ぼくは緊張で声を発する余裕もない。

No.1365
「じゃあ、大切に運んでね」ぼくとお母さんで箱に詰めたお父さんがトラックに積まれる。お隣のミキちゃんの箱はお母さんが入ってるんだって。

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マイクロノベルちょいす 069「ぎゃあ!」

マイクロノベルちょいす 069「ぎゃあ!」

No.1325
「一枚足りな~い」目の周りにはまるでタヌキのようなクマ。「あと十円は、一円玉で出してもいいかな?」その財布には、たくさんの葉っぱが入っている。出された小銭は獣臭くて、打ち合わせても音がしない。これはタヌキだろうな。今夜は寒いし、鍋にするか。

No.1330
珍しく雪が積もったので、小さなカマクラでも作ろうかな。「よいお住まいで」あら神様。いつの間にこちらへ? このカマクラは明日に

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マイクロノベルちょいす 060「たった一つの」

マイクロノベルちょいす 060「たった一つの」

No.1270
ごはんだよー。先週、行方不明になったぼくの猫が無事に帰ってきた。まるでコピーしたようにそっくりな二匹になって。どっちがうちの猫だ? エサの食べ方もそっくり。「ワクチンの接種履歴を調べたらわかるかな?」逃げ方もそっくり。名前はビスケット。

No.1283
質問に答えて下さい。「朝起きるのが得意?」「歌う時は体が動く方?」「家の中では靴下を脱ぐ?」わかりました。あなたは口では漫画を褒

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マイクロノベルちょいす 041「大切な記憶」

マイクロノベルちょいす 041「大切な記憶」

No.1155
海の近くで暮らしていた頃の話。毎朝、砂浜に犬の足跡があった。右側にはまるで杖をついたような穴。「触らないでくれるかな。それはぼくの大切な思い出なんだ」今にも折れそうな木の棒に頼まれて、ぼくは投げる。それ以来、僕の手から磯の匂いが取れない。

No.1191
十年前の話。「わらべよ、お前がこの道を通るのはこれで二千回目だ。記念にビー玉をやろう」大学生になって帰省したら、その場所にはま

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マイクロノベルちょいす 012「ちょっとした秘密」

マイクロノベルちょいす 012「ちょっとした秘密」

No.970
公園のベンチで休んでいたら頭を撫でくれと犬が寄ってきたので、満足するまで撫でてあげた。しっぽを振りながら飼い主の元に返っていく。ぼくの娘もよくあんな風にやってきて、そして帰って行った。もう30年前の話。

No.1009
風がくるくる回っているのを見たよ。葉っぱを巻き上げて、一瞬で消えたの。つむじ風って言うんだって。お父さんもあんな感じだよね。お布団上げて、トイレ行って、ご飯を食べて

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