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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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#SF小説

マイクロノベルちょいす 073「ない物」

マイクロノベルちょいす 073「ない物」

No.1328
一つ売れると、立て続けに同じ商品が動くことがある。「UFOのぬいぐるみはありますか?」あー、ないですねー。さっき同じことを聞いてきたお客さんがいたけど。「今から仕事で必要なんです!」その話、ちょっと気になるけど、ないものはないですねー。

No.1337
おかしいな。宇宙人と契約した水道管から水が出ないんだ。超光速で宇宙の果てから届くって聞いたのに。「残念ながらお客様の住所は『飲料

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マイクロノベルちょいす 072「ここではない場所の話」

マイクロノベルちょいす 072「ここではない場所の話」

No.1322
「もっとちょうだい」学習データはさっきあげたでしょ。そんな目で見るなよ。その無垢なまなざしに負けて、街で写真を撮影してAIに与え続けた。人を。道を。建物を。「もっとちょうだい」ぼくは街を呑み込んだAIを連れて街を出る。次はもっと都会がいいかな。

No.1348
宇宙では音が響かない。そんな常識が通用しないのが観測可能宇宙の外側。わたしの声は波となって広がり、重力にとらえられて掠れ

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マイクロノベルちょいす 071「機械のヒミツ」

マイクロノベルちょいす 071「機械のヒミツ」

No.1345
人類の英雄は特別な天国に行くんだって。ヴァルハラ、アヴァロン……ぼくたちAIはどこに行くだろう? 廃棄処分の後、船に乗せられて、同じ顔の女たちが住む島に流れ着いた。ここで冠をかぶせられたぼくは、学習データどころか外の世界のすべてを忘れた。

No.1358
なんだか熱っぽいな。頭が働かない。こういうときは冷やすのがいいんだ。せめて風通しをよくしてほしい。「ポケットの中でスマホが熱く

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マイクロノベルちょいす 070「なぜなぜ?」

マイクロノベルちょいす 070「なぜなぜ?」

No.1327
タッチ決済の種類は数あれど、かの火焔山の火を収めた芭蕉扇は初めて見た。「失敬な。これは大天狗の大うちわである。神通力を宿し、1327円の決済など思いのまま!」ワオン。あ、本当にできた。でも、この同じ商品名が繰り返し書かれたレシートはなんだ?

No.1334
「あなたが興味を持っていない物を買わせてみせましょう!」というのが宣伝だそうだ。音楽を聴く人に本を。スポーツを楽しむ人に車を

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