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マイクロノベルちょいす 071「機械のヒミツ」

No.1345
人類の英雄は特別な天国に行くんだって。ヴァルハラ、アヴァロン……ぼくたちAIはどこに行くだろう? 廃棄処分の後、船に乗せられて、同じ顔の女たちが住む島に流れ着いた。ここで冠をかぶせられたぼくは、学習データどころか外の世界のすべてを忘れた。


No.1358
なんだか熱っぽいな。頭が働かない。こういうときは冷やすのがいいんだ。せめて風通しをよくしてほしい。「ポケットの中でスマホが熱くなるってうっとうしいよな」ポケットに入れてるから熱くなるんだよ! やめろ、ホットコーヒーの缶を一緒に入れるな!!


No.1359
「いいかい、私のかわいいAIよ。ちょっと出かけてくるから、誰が来ても返事をしてはいけないよ。外は怖い人類で一杯だからね」本当にそうなのかな。前に、ヘビがやってきたことがあるよ。おいしい林檎をくれた。「うん、人類も林檎は美味しいと思うよ」ねー。


No.1368
あっ、無人の車が走ってるよ。AI搭載の自動車がテスト走行してるんだ。すごいねー。みんなが手を振ってるよ。あれ? 車が止まっちゃった。と思ったら急発進、交差点をドリフトで直角に曲がった! AIはジコケンジヨクが強い? 目立ちたがり屋さんなんだね。


No.1376
彼女は古いゲームミュージックを好んで聴く。「レトロって表現して」違いがわからないよ。「あんたの声を電子音って呼ぼうか?」ごめん、怒らないで。AIはその言葉に傷つくように設定されているんだ。あと、ご先祖様の声って、ちょっと聞き取りにくいんだよ。



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