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発声について

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#発声

横隔膜と多裂筋に尽きる

横隔膜と多裂筋に尽きる

最初から少し厳しい言い方をしてしまうのですが…まず横隔膜のアプローチ無しには何も始まらないと思います。横隔膜が下がっていないと、音程は一瞬もはまりません。"その音のあたり"を歌っているようにしか聞こえません…上ずるか、上がりきれないか、押さえつけているかにしか聞こえません。横隔膜を下げる必要性の程度の差はありますが、どのジャンルも一緒だと感じています。

また息の長さに決定的な役割を果たすのも横隔

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発音がこもる

発音がこもる

昨年は大晦日も、今年の元旦もレッスンをしていました。もちろん大勢は来なかったのでゆったりと。

そのうちのお一人が、以前から私も含め何人かの先生方に"発音がこもる"、"声がこもる"と言われがちな方で、その日も様々なアプローチをしている間に「ようやく気付いた」とおっしゃり「こもらないようにするために、あまり口の奥を開けずに浅く歌っていた」ことを話してくださいました。

口の奥や喉を開けるといっても千

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鼻呼吸のすすめ

鼻呼吸のすすめ

発声に関して、日常での鼻呼吸、鼻という口より高いポジションでの呼吸を強くおすすめします。特に、年齢が上がってきた歌手たちにとって、鼻呼吸と口呼吸でさらに顕著な差が出てくると思われます。また若いうちからその大切さと理由を理解しておけば、その先、その点では苦労が減るのではと思っています。

高音を歌わないのであれば、なかなか気付きにくいかもしれませんが、普段口呼吸中心の方は高音ですぐ詰まりやすい。ポジ

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本物のテクニック

本物のテクニック

歌手として本物のテクニックが備わっているか、私なりに見分ける(聴き分ける)コツがあります。それはppの声をどれだけ美しく出せているかです。「良い声ですね」「立派な声ですね」という方もppを出してもらうと、とたんに硬くなり(そういう方はmfもfも硬いことが多いのですが)声が引っ込んだだけになってしまう場合は、あるいは風に吹かれて飛んでってしまうようなか細い声になるなら、mfやfならよく声が出るとして

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身体と声のウォーミングアップ

身体と声のウォーミングアップ

ウォーミング・アップを効率よく行うために約30分のプログラムを考えてみました。数多くある効果的なものの一例です。文章で説明するだけでは、なかなか正しく理解するのは難しいかもしれませんので、以下は参考程度にお読みください。4以降は歌の演奏時同様に骨盤底筋と身体の軸を意識しながら行います。
1.ひねり運動(3分):腰をひねり、両腕を左右に振る。振る両腕も上や下など角度を変えたり、頭の動きを伴ったり、変

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舌のはなし その2

舌のはなし その2

舌の話題が多くなります。舌がどれくらい重要か頻繁に痛感しているからです。

舌は繊細で、あるべき方向でない方向で定着させてしまうと恐ろしい結果になるので、うかつに手を出せない部分で本当に難しいです。しかしあと一歩の歌手が決め手は舌だった、ということが大いにあり得ると思っています。

舌でどんなことが出来るのかというと

1.喉が開く(咽頭腔の適切な状態の確保)

2.発音が適切に明瞭になる

3.

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白黒はっきり言えないこと

白黒はっきり言えないこと

歌や発声、音楽のことがよく分かっている指導者ほど、当然のこと以外に関しては白黒つけたような言い方をしないのだと時々感じます。

私も長い間そうでしたが、何か「これさえ知れば楽に歌える」といったメソッドを追い求めていました。楽をしたいと思っていなくても無我夢中で上手くなりたいと思えば、そんな方法が少しでもあるなら知りたいと思うのは自然なことでしょう。日本語だけでなく外国語で書かれたものも含め、沢山の

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歌う前のウォーミングアップの大切さ

これを読んでいる皆さんは、どのくらいの世代でしょうか?20歳前後の声楽の学生かもしれませんし、40歳以降の趣味で合唱をされている方かもしれません。年配の方でしたら、若い頃の方が何も考えずに楽に声が出せたのに今は出しづらくなったと感じている方も多いのではないでしょうか?

10代から25歳くらいまでの若い歌手の中には「歌う前にストレッチや発声練習をしてもしなくてもあまり変わりない」と感じている方が多

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高い声を再び出せるようになりました

高い声を再び出せるようになりました

20代の頃はもちろん、35歳くらいまでは朝起きてすぐハイEsくらいまで楽に出せた私でしたが、年齢とともにレパートリーが変わり、そういった高音を出す曲をほとんど歌わなくなったある日、ハイEsが昔のように出せなくなっていることに気づきました。

今まで教わった先生方から「年齢とともに声の音域は変わってくる」つまり、だんだん低い音域に移ってくることは聞かされていたので、私にもついにその年齢になってきたの

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発声器官の多くが不随意筋であるということ

発声器官の多くが不随意筋であるということ

声楽を始められたばかりの生徒ですが、大変熱心な方がいます。オンラインレッスンで先日こんな質問をされました。

「首に力を入れずに高音域を出すということがよく分かりません。声帯を細く伸ばしていくには輪状甲状筋を収縮させ、甲状軟骨を傾斜させる必要があると書いてありました。首に力を入れずにどうやってこの筋肉を収縮させるのでしょう?何かしらの刺激なしには収縮しないと思うのですが。」

気持ちは分かります。

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舌のはなし

舌のはなし

舌はとにかく重要です。のどが絞まった声、つまり声道の一部である咽頭腔が狭くなって適切な空間が保てないときの主な原因のひとつに舌が挙げられます。舌の扱いがスマートに出来るようになると(あるべき場所にいられるようになると)ずいぶんと歌いやすくなります。

舌はどこにあればよいのでしょうか?普段の生活では、舌は「スポットポジション(前歯の付け根あたり、上あごの一部)」に吸着していることで、5kg近い頭を

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なぜ先生によって言うことが違うのでしょうか?

なぜ先生によって言うことが違うのでしょうか?

この記事を読んでくださる皆さんは、少なくとも発声や歌、ボイトレについて多少の興味がある方、レッスンなどを受けたことがある方だと思います。複数の先生に習った方は、先生によって言うことが違う(場合によっては逆のことを言われた)と思った経験はないでしょうか?

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声を前に飛ばして

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感覚的な言葉の大切さ

感覚的な言葉の大切さ

2つ前の「のど(喉)という曖昧な言葉」 という記事を読んだ方には矛盾を感じさせるタイトルですね。そんな方も最後まで読んでみてください。

レッスンでは良い声を出すために「フワッと」とか「まるで~のように」といった、非常に感覚的な言葉が使われたりします。他の楽器と違い、声は音を作る場所が身体の内部にあることから、指導者がその場所を生徒に見せてあげることができません。しかも発声に関係する器官のほとんど

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のど(喉)という曖昧な言葉

のど(喉)という曖昧な言葉

皆さんは「のど(喉)」という言葉をどんな時に使いますか?

レッスンで良く使われる表現・・・「喉が絞まる」「喉を開ける」

この場合の喉とはいったいどこを指すのでしょうか?

「のど(喉)」と一口に言っても、解剖学的には口腔、上咽頭、中咽頭、下咽頭、喉頭(声帯を含む)に分かれます。喉の天井部分、鼻の奥も喉であるし、食道と気管に分かれた後も喉と呼ばれてしまう、あまりに広範囲を指す言葉なのです。

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